トヨタ86のCVT版がプランされていた?

では、CVTは進化の歩みを止めてしまっているのかといえば、もちろんそうではない。

CVTで世界トップシェアを誇るジヤトコと日産が共同開発したCVTは、副変速機を組み合わせることで変速比、いわゆるレシオカバレッジを広げ、低燃費を実現している。

トヨタとアイシン・エィ・ダブリュが共同開発したダイレクトシフトCVTは、従来のCVTにローギアを追加することで、最もラバーバンドフィールを感じやすい発進時をカバーしている。その後にCVTへと切り替わるころには、ある程度スピードが上昇しており、ありがちなベルトが滑っているようなフィーリングをなくすことができるというものだ。これは「レクサスUX」や「RAV4」「ヤリス」などに搭載されている。

またトヨタは近年、全日本ラリーに「ヴィッツ」のCVTモデルを投入してきた。CVTのメリットとして、自由な変速比を作り出せるということがある。先行開発の位置づけとして最適な変速で高回転域をキープし、最も効率的にパワーを発生する制御が行われる“スポーツCVT”を採用し、着実にノウハウを積み重ねているという。「86」や「スープラ」の開発責任者を務めた多田哲哉氏も、実は86の開発中にはスポーツカー用のCVTを搭載できないか、ぎりぎりまで検討していたことをのちに明かしている。

スポーツ用という観点で時代をさかのぼれば、1990年代のF1マシン「ウィリアムズFW15」ではCVTを搭載したマシンの開発が進められていたが、テストであまりにも速すぎたため、レギュレーションで禁止されてしまったという逸話がある。

現在は、軽自動車をはじめとする小型車の多くがCVT、高性能車・高級車では多段AT、スポーツモデルはDCTというすみ分けがひとつのトレンドだが、CVTがより高級車やスポーツモデルへと採用拡大していく可能性はまだある。ガラパゴス化は必ずしも悪ではないと思う。そしてそれも極めれば、さらなるブレークスルーだってきっと生まれるはずだ。

(文=藤野太一/写真=本田技研工業、アウディ、日産自動車、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

ジヤトコと日産が共同開発したCVTは軽ハイトワゴン「デイズ」に初搭載された。
ジヤトコと日産が共同開発したCVTは軽ハイトワゴン「デイズ」に初搭載された。拡大
トヨタとアイシン・エィ・ダブリュが共同開発した「ダイレクトシフトCVT」は発進時のトルク伝達でギアを使うのが特徴。新型「ハリアー」でも純ガソリン車に搭載されている。
トヨタとアイシン・エィ・ダブリュが共同開発した「ダイレクトシフトCVT」は発進時のトルク伝達でギアを使うのが特徴。新型「ハリアー」でも純ガソリン車に搭載されている。拡大
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