まだ戦況は変わり得る

ベース車両を頻繁に変えるのは一見不利なように感じられるが、そうとは言い切れない。トヨタは2017年にそれまでの「レクサスRC F」からLC500にスイッチしたが、車両の設計に関してそれまで抱えていた課題を一気に解決し、メンテナンス性も含めて扱いやすいマシンになった。空力も同様だ。シーズンを経験するごとに攻めるべき領域に関する知見は蓄積されていく。ベース車両を受け継いでアジャストするより、新規に設計するほうが狙いどおりのコンセプトにまとめやすい(いったんリセットされるので、そのぶん労力も必要だが)。

MRからFRへの大変更を実行したことを考えると、開幕戦のNSXは十分に健闘したといえるだろう。GT-Rはエンジン開発の遅れが足を引っ張っていると推察することもできる。ベース車の変更はもろ刃の剣だが、手慣れたトヨタはメリットを存分に生かした状態で開幕戦を迎えることができた。エンジンの実力も申し分なしの状態と見ることができそうだ。

もうひとつ、開幕戦の結果で注目しておきたいことがある。タイヤだ。トップ5を独占したスープラはすべてブリヂストンユーザーである。6位のNSXもそうだ。レースのコンディションがミシュランに合った状態、あるいは、パフォーマンスがブリヂストンと釣り合う状態だったとすれば、スープラ勢にGT-Rが割って入る結果になっていたかもしれない。

スープラ優位な状況は変わらないだろうが、第2戦以降もスープラの独壇場が続くと考えるのは早計だ。FRレイアウトでの熟成が進んだNSXがパフォーマンスを高めてくるのは間違いないからだ。GT-Rのエンジンも急速に実力を高めてくるに違いなく、ミシュランの出方次第ではスープラと互角の勝負に持ち込んでくるだろう。

勢力図の変化を確認する意味でも、第2戦(8月9日決勝)が楽しみである。開幕戦と同じ富士スピードウェイでの開催なので、各社の進化がわかりやすい。

(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業/編集=関 顕也)

No.36 au GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)。開幕戦では予選3位から2位表彰台を手にした。
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今季、駆動方式がMRからFRに変わった「NSX」。大規模な仕様変更が、この先の結果に結びつくかどうか。
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初戦での結果を踏まえ、上位の「スープラ」にはウェイトハンディが課される。その影響はどう出るか? 同じく富士で開催される第2戦(2020年8月9日決勝)が注目される。
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