トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”プロトタイプ(4WD/6MT)/GRヤリスRZプロトタイプ(4WD/6MT)/GRヤリスRSプロトタイプ(FF/CVT)
モータースポーツが匂い立つ 2020.08.10 試乗記 世界ラリー選手権(WRC)への投入を念頭に、トヨタが開発した「GRヤリス」。公道デビューを間近に控えたそのカタログモデル3グレードに、富士のクローズドコースで試乗。トヨタ久々のコンパクトスポーツは、モータースポーツ直系マシンならではの“本気度”と、操る楽しさを併せ持つ一台に仕上がっていた。エンジニアの苦労がしのばれる
2020年1月の東京オートサロンで発表されたGRヤリス。その企画の出発点は、トヨタがWRCへの再参戦を発表した2015年にさかのぼるという。
その最大のテーマはレースに勝つことであり、そのホモロゲーション内で最善の車両を用意することだ。ベースとなるBセグメントカー、すなわち「ヤリス」の遠くない先に迎えるフルモデルチェンジに歩を合わせて、GAZOO Racingの開発陣はWRC参戦を全面サポートするトミ・マキネンレーシングの協力のもと、レース車両化にあたっての要件をピックアップ。それをヤリスの開発とも協調させてきた。
一方で、GRヤリスはれっきとしたトヨタのプロダクションカーであり、ビジネスを度外視するような形態は許されないという側面もある。そこで品質や価格を一定水準に乗せるために、多品種少量生産を実現する「GRファクトリー」を愛知の元町工場内に敷設。コンベヤーレスのラインでは、複数の生産セルを無人搬送車や手押し車でつないで、生産性とつくり込みの精度や緻密度を両立させた。オリジナルシェイプのホワイトボディーも含め、GRヤリスはヤリスの工場を流れることなく全量このラインで生産される。
トヨタのあまたの工場にあって元町は、GRだけでなくレクサスも「LC」用の少量生産ラインを配しており、品質と効率の両立を多様なアプローチで追求する、そのマザー工場の役割を果たしつつある。それに並行して、つくり手の方々の特別な技能育成とその継承の場としても機能しているわけだ。逆に言えばそういう大義名分があったからこそGRヤリスは成立したわけで、生産関連のエンジニアの苦労も相当なものだっただろう。
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