イタリア最大級のモールに

ところが、2020年7月末に再度アレーゼを訪れた筆者は、その光景に思わず目を疑った。

雑草に覆われていた旧技術センター棟の左隣に、巨大なショッピングモールが誕生していたのである。

施設の名前は「イル・チェントロ」。調べてみると2016年4月にオープンしたという。

総床面積は9万3000平方メートル。200以上の店舗と30の食堂に加えて健診センターまで入る建物は、ショッピングモールとしてはイタリア最大、欧州全体でも第3位の規模という。

設計にはイタリアを代表する建築家のミケーレ・デ・ルッキも参画している。建物は横にひたすら長い。冬に北部名物の濃霧に襲われたら、その全容が把握できないであろう。収容台数1万台の駐車場も併設する。

経営は、AIGリンカーンから敷地を買収した銀行系企業による。

かつて自動車工場があったことを示すのは、旧テストコースを改装してACI(イタリア自動車クラブ)が運営する全周1.5kmのサーキットくらいだ。

話は前後するが、2014年1月31日付『イル・モンド』誌によると、アレーゼ工場の跡地利用法が最終決定したのは、2012年だったという。

周辺自治体にミラノ県やロンバルディア州も加わって議論が行われたため、調整に困難を極めたのが原因だ。

イタリアではこうした再開発計画が遅々として進まないことは珍しくないので、さほど驚くことではない。しかし、フィアットによる敷地売却からショッピングモールの開店までに、なんと16年を要したことになる。

生まれたばかりの子供が思春期に達してしまう期間だ。

旧技術開発センター左横にできたイタリア最大級のショッピングモールのイル・チェントロ。
旧技術開発センター左横にできたイタリア最大級のショッピングモールのイル・チェントロ。拡大
イル・チェントロは200以上の店舗と30の食堂を擁する。
イル・チェントロは200以上の店舗と30の食堂を擁する。拡大
駐車場はなんと1万台の収容能力を持つ。にもかかわらず、筆者が訪れた日は空きスペース探しに苦労するほどのにぎわいであった。
駐車場はなんと1万台の収容能力を持つ。にもかかわらず、筆者が訪れた日は空きスペース探しに苦労するほどのにぎわいであった。拡大
別の角度から。右奥にある旧研究開発センターは、完全に過去のものだ。
別の角度から。右奥にある旧研究開発センターは、完全に過去のものだ。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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