ADASと「チャオ、フェラーリ!」

フェラーリ・ローマはエンジンをフロントミドに積むクーペである。すでに2019年11月、ローマで発表会が行われている。商品コンセプトおよびスペックの大半は、すでに本サイトの別記事で、日本デビューの際に紹介されているので、そちらに譲る。

エクステリアデザインは、1962年「250GTルッソ」といった1950~60年代のGTモデルをイメージしたという。フロントセクションと短くまとめられたテールには、確かに昔のディレッタント(好事家)趣味的優雅さが漂う。

ディテールに目を移すと、今日風のミニマリズムが徹底されている。例えばフロントマスクを見てみると、ラジエーターの冷却用の導風口に従来のグリルではなく、パーフォレート(穴開け)加工を採用している。

エアベントや不必要な装飾は限りなく排除されている。フェラーリであることを小手先で強調しないのは、デザイナーにとって簡単なように見えて極めて困難なアプローチであったであろう。

2009年にマラネッロにやってきたフラヴィオ・マンツォーニ氏と社内デザインチームが、10年後に到達したマスターピースといえる。

「2+クーペ」と称する理由は、その限定的なリアシートを見れば分かる。グローバルマーケティングダイレクターを務めるエマヌエレ・カランド氏によると、リアは子供を乗せたり(ISO FIX対応である)、バッグを置いたりするスペースとのコンセプトであると教えてくれた。この潔さにかえって好感がもてる。

コックピットは完全なオリジナルである。運転者ファーストの伝統的なフェラーリとは一線を画し、助手席もほぼシンメトリックな“デュアル・コックピット・コンセプト”が与えられている。

トランク容量は272リッターで、オプションの可倒式リアシートを選択しても345リッターにとどまる。本気で欧州のコンチネンタルツアラーとして使うには、パズル的頭脳が必要だろう。デザインが掲げるのと同じミニマリストを志し、旅具をシェイプアップするいい機会かもしれない。

エンジンは「ポルトフィーノ」と同じ3.9リッターV型8気筒ツインターボだが、最高出力は20PS高い620PSだ。デュアルクラッチ式AT(DCT)はポルトフィーノの7段に対し、8段がおごられている。ドライブモードセレクター「マネッティーノ」もまたしかり。ポルトフィーノの3ポジションに対して、5ポジション(ウエット/コンフォート/スポーツ/レース/横滑り防止装置オフ)に進化している。

それはともかくローマでは、レベル1相当のアダプティブクルーズコントロールが選べる。これを含むオプションパッケージには自動緊急ブレーキと車線逸脱警告、ブラインドスポット検知、後方衝突被害軽減サポート、サラウンドビューカメラも含まれる。

また、今回実装されていたものの、最終調整中であったので評価は避けるが、「チャオ、フェラーリ!」の声で起動できるボイスコマンド機能もある。気がつけばフェラーリは、きちんと21世紀に追いついていた。

ドライバーの眼前に備わる16インチHDスクリーン。そのグラフィックには、最新のアイトラッキング技術による研究結果をフィードバック。ドライバーの視線を常に前方に向けられるよう工夫が施されている。
ドライバーの眼前に備わる16インチHDスクリーン。そのグラフィックには、最新のアイトラッキング技術による研究結果をフィードバック。ドライバーの視線を常に前方に向けられるよう工夫が施されている。拡大
中央にはオプションの8.4インチディスプレイが。インフォテインメントと空調操作が可能。
中央にはオプションの8.4インチディスプレイが。インフォテインメントと空調操作が可能。拡大
イタリアのストラーダ・プロヴィンチャーレ(県道)にありがちな荒れた路面でも、サスペンションから伝わる突き上げは、極めて抑制されている。
イタリアのストラーダ・プロヴィンチャーレ(県道)にありがちな荒れた路面でも、サスペンションから伝わる突き上げは、極めて抑制されている。拡大
今回の試乗コースの大半は山岳路。アウトストラーダ区間は極めて限られていたが、ロングディスタンスツアラーとしての一基準である高い直進性もうかがい知ることができた。メーカー発表値の0-100km/h加速のタイムは3.4秒、最高速は320km/h。
今回の試乗コースの大半は山岳路。アウトストラーダ区間は極めて限られていたが、ロングディスタンスツアラーとしての一基準である高い直進性もうかがい知ることができた。メーカー発表値の0-100km/h加速のタイムは3.4秒、最高速は320km/h。拡大
エンジン/サスペンション等を統合制御するドライブモードセレクター「マネッティーノ」は、フェラーリGT初の5ポジションに。
エンジン/サスペンション等を統合制御するドライブモードセレクター「マネッティーノ」は、フェラーリGT初の5ポジションに。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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