「車間距離注意」な広告も

路線バスのラッピングやステッカーも楽しい。(写真K)はわが街シエナの小型バスである。幅員の狭い旧市街を走りやすいよう、小型トラックのシャシーにバスボディーを架装したものが使われている。

そのうちの一台に地元スズキ販売代理店の広告がラッピングされている。後輪のホイールアーチと、カッティングシートに印刷された「ビターラ」の前輪ホイールとが重ねられている。

日本でも家電量販店であるヨドバシカメラの広告で、路線バスのホイールアーチ部分を一眼レフカメラのレンズに見立てたものがあるが、それに近い発想といえる。

最後はシエナのスクオラブス(スクールバス)に登場願おう。

後部窓に貼られているのは、赤い下着姿の女性をともなったランジェリーショップの広告である(写真L)。

実は路線バス用の車両なのだが、スクールバスの台数が足りないため、登校前および放課後になると駆り出されるのである。

日本だと、スクールバスにふさわしくないなど諸般の事情で議論の種となりそうだが、少なくともそうした声は聞かない。

それよりも筆者にとって問題なのは、後方を走行中、思わず車間距離を縮めてしまって危険であることだ。さらにこのバスとの間に割り込みをされると、日ごろステアリングを握るときは聖者のごとく穏やかな筆者にもかかわらず、つい暴言を吐いてしまう。

宗教と世俗が巧みに併存する商用車のラッピング&ペインティングは、イタリアという国の縮図なのである。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=大矢麻里<Mari OYA>、Akio Lorenzo OYA/編集=藤沢 勝)

本文には登場しないが、秀逸な例をひとつ。テント製造販売業者のかわいい営業車。
本文には登場しないが、秀逸な例をひとつ。テント製造販売業者のかわいい営業車。拡大
(写真K)。スズキの販売代理店によるラッピング広告で彩られた小型路線バス。
(写真K)。スズキの販売代理店によるラッピング広告で彩られた小型路線バス。拡大
同じバス車両の車体右側だが、こちらは併売している三菱車の広告に充てられていた。
同じバス車両の車体右側だが、こちらは併売している三菱車の広告に充てられていた。拡大
(写真L)。ランジェリーショップの広告が貼られた“スクールバス”。
(写真L)。ランジェリーショップの広告が貼られた“スクールバス”。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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