新車を買いにくい空気

ひとくちに言えば、新車に買い替えにくい昨今の風潮のためである。2008年のリーマンショック以降の税収強化政策が、個人事業主の自動車購入マインドを低下させている。

参考までに欧州中央統計局によると、イタリアでは就労人口の21.7%を個人事業主が占める。つまり、5人に1人以上である。ギリシャに次いで高い割合だ。

具体的に見てみよう。第1は日本の消費税に該当する付加価値税(IVA)の控除率減少だ。

かつては個人事業主がクルマを購入する場合、どのような使途でもIVAは100%控除だった。イタリアのIVAは商品価格の22%だから、それが丸々なくなるわけで、これは大きかった。

対して今日では、仕事以外の移動にも使うと見られると、半分以下のたった40%までしか控除が認められない。

第2は、自動車を購入した際の税務関係の検査が厳しくなったことがある。収税当局は、納税者が高額商品を購入すると「レッディーメトロ」と呼ばれるデータバンクと照会する。申告所得に不釣り合いなクルマを購入すると、調査が入る仕組みだ。

筆者がある税理士に確認したところ、課税馬力で21CV(総排気量2080.2cc)以上の車両を購入したオーナーは、それが高級車か大衆車か、新車か中古車か、ガソリン車かディーゼル車かということを問わず、すべて調査対象となる。

価格を基準としないところが不可解だが、モーターボートなどと同様のぜいたく品とみなす、というわけだ。

そればかりではない。普段の路上でも高級車ドライバーを主な対象に、イタリア財務警察はデータベースとの照合のために検問を実施している。

たとえ正しく納税していても、あらぬ疑いをかけられたくないのがユーザーの心情だ。かくして、冒頭のような一時のブームこそあれど、多くの人が古く小さなクルマに乗り続けるのである。

今回記すにあたり、実際に古いクルマに乗っているユーザーの話を聞くことにした。

以下の写真は中部トスカーナ州各地で2020年に入ってから見かけた、頑張る中古車たち。「アルファ・ロメオ33」の後期型。
以下の写真は中部トスカーナ州各地で2020年に入ってから見かけた、頑張る中古車たち。「アルファ・ロメオ33」の後期型。拡大
「ランチアY(イプシロン)」。イタリアの強い太陽光によってレッドがほとんどピンクになっている。
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初代「フィアット・クロマ」の後期型。
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「アウトビアンキA112」はイタリアでも趣味車の領域に入るモデルだが、ヤレ具合とスーパーマーケットの前に止められている状況から、日々活用されていることがうかがえる。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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