トヨタ・ミライZプロトタイプ(RWD)/ミライG“エグゼクティブパッケージ”プロトタイプ(RWD)
未来を担うスポーツセダン 2020.11.02 試乗記 世代交代で見た目もメカニズムも大きく変わる、トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」。同社が“クルマ本来の魅力”にこだわり、従来の環境車のイメージを変えると意気込む、新型の仕上がりは……?“つくり方”からやり直し
2014年の初代発売からまる6年。2代目となるミライが間もなく上市となる。その最大のミッションは「数」だという。
とはいえ、だ。国内水素ステーションの「数」は当初予定通りに進んでいる。その稼働時間が短いのはわれわれが「数」が出せていないことが大きい。初代に続き新型ミライの開発をまとめた田中義和主査はちゅうちょすることなくそう言い切る。生みの親の真正面からの自省にちょっと驚きつつも、その発言を周囲が止めないことに、かえって今のトヨタの強さが透けて見える。
台数が出回れば水素ステーションの営業時間等にまつわる不便も徐々に改善される。その前提のもとに新型ミライは初代が抱えていた最大の課題である生産性について、大胆に舵を切った。当初の年間生産能力は700台。それをコツコツと伸ばして約3000台までもっていったわけだが、いかんせん半ば手づくりのような生産工程では数的限界がある。
並行して、台数を増やすために必須の課題となったのが、個人ユーザーの支持をどうやって集めるかということだ。現在、世界で約1万1000台、うち日本ではその約3分の1強が走っているという初代ミライは、その多くの需要が社会親和性を重視し、計画的運行が可能な法人や団体、官庁などに限られてきた。これを個人ユーザーへと広めるために、直感的に欲しくなるクルマへと転換を図りたい。
これらを解決するために、新型ミライはトヨタの乗用車としては最大となるGA-Lプラットフォームを採用した後輪駆動のモデルとして開発された。生産拠点は変わらず元町工場だが、これによって「クラウン」のラインでの混流生産が可能となったわけだ。生産能力は一気に約10倍、月に3000台へと引き上げられた。この拡張は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が目標とする燃料電池の進化ロードマップともほぼ合致する。こういうところに律義なのもまたトヨタらしい。ちなみにこのアウトラインが決定したのは2016年の春ごろだというから、ネジ一本からまるで異なる開発の苦労は、推し量るに相当なものだっただろう。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |