「トヨタ・ミライ」のフルモデルチェンジでFCVの普及は進むか?
2020.11.06 デイリーコラム理由あってのセダン型
トヨタの量産燃料電池車「ミライ」の2代目となる新型が、2020年12月に発売されることになった。燃料電池とは“フューエルセル(FC)”の訳語であり、トヨタは燃料電池車をFCVと呼ぶ。FCVといえば2000年前後に各社が競うように開発競争を繰り広げたものだが、あのときの熱気もすっかり冷めてしまい、今ではトヨタがひとり気を吐くだけ……と見えなくもない。
新型ミライそのものについてはプロトタイプの試乗リポートを参照いただきたいが、同車の開発担当氏は「FCVが増えなければ水素インフラも増えない。とにかく量を出して、普及させたい」といった切実な思いを、初代デビュー当時よりも強い口調で語る。初代ミライが発売された6年前(2014年末)以上に、現在はバッテリー式電気自動車(BEV)市場が加熱しており、FCVへの注目度・期待度は相対的に下がっているようにも思える。
そんな危機的状況(?)にあるFCVなのに、新型でもまたセダンでいいのか……とお思いの向きもあるかもしれない。今の時代、セダン自体の市場が縮小傾向にあるからだ。
しかし、新型ミライが大型セダンになった理由はいくつかある。まず、日本の多くの自動車技術者は今なお「セダンこそがクルマの基本形」と思い込んでいるフシがあることだ。もっとも、これはただの感情論というわけでもなく、「背が低いうえに一定以上の居住性も求められるセダンで成立させられた技術は、ほかの車型にも応用しやすい」というのが自動車づくりのイロハでもあるそうだ。
加えて、もっと現実的かつ切実な理由もある。新型ミライは個人顧客を増やすことを強く意識したというが、こうした次世代環境車の市場は、まだまだ個人より官公庁や法人頼みなのが現実だからだ。大型セダンであれば、政治家や首長の公用車、あるいは環境コンシャスな姿勢をアピールしたい企業の社用車としても使いやすい。そうしたニーズにも、なるほど初代より新型のほうが似合う。
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