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ランドローバー・ディフェンダー110 SE(4WD/8AT)/ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L(4WD/8AT)

“本物”が放つ輝き 2020.11.23 試乗記 昔ながらの味わいを守り続ける「ジープ・ラングラー」と、電子制御によって武装し、ぐっと現代的に変身した新型「ランドローバー・ディフェンダー」。この2台で林道に繰り出し、日常生活には過剰ともいえる本格オフローダーが人気を集める理由を考えてみた。

スタックしたことある?

振り返ればスタックの多い生涯を送ってきました。恥ずかしながら、国内はもとより世界各地で、それこそケニアでもタイでもスコットランドやフレンチアルプスでも、さらには酒匂川の河口でもハマったことがある。しかもそのほとんどが4WD車だ。4WDだからこそ、つい、ちょっと踏み込んでしまうのである。今でも忘れられないが、RACラリーの取材時に、スコットランドのキールダーの森の中でフォレストレンジャーのディフェンダーにレンタカーを引っ張り出してもらったこともある。ドロドロの林道にも入るだろうからとわざわざ「ボクスホール・カリブラ」の4WDを借りたのに、滑って道路脇のディッチにまんまとハマり、人力ではどうにもならず途方に暮れていた時にヒーローのようにレンジャーのオジサンがさっそうと現れ、瞬く間に引っ張り出してくれた。4WD車への過信と言われても仕方がないが(レンジャーにもしっかり説教された)、要するに、おしゃれな都会派SUVなどは一生縁がないような場所に踏み入れば簡単にスタックできるというわけだ。

そういう経験では人後に落ちない(?)私だが、神様に見えたレンジャーのディフェンダーの他にももうひとつ特別な思い出がある。ナミビアをディフェンダーで1週間走ったことだ。ランドローバーには昔からカスタマー向けに普通では行けないような場所を走るツアープログラムがあり、それこそナミビアやボツワナからインドネシアやベリーズまで、砂漠やジャングルを自分で走る冒険ドライブツアーを企画している。かつて私が参加したのもそれで、もちろん地元に詳しいランドローバーのエキスパートが随行してくれるから、英語でコミュニケーションが取れる本当のアウトドア好きならば一度は試してほしい。

その際にはナミブ砂漠の巨大な砂丘のてっぺんまでディフェンダーで登ったし、ワジ(干上がった川床)をほぼ一日中走ったこともある。宿に着いた時には細かな砂の抵抗に負けないようにスロットルペダルを踏み続けた右足がしびれて感覚がないほどだった。ディフェンダーで長い距離を走るには相応のタフネスが要求される。最後に訪れたオンガバ・ロッジ(山手線の内側ほどの広さのプライベートリザーブ)では珍しくクルマから降りて徒歩(普通の国立公園では車上から見るだけ)で野生動物に近づいて見学できるアトラクションがあったが、その際のクルマもやはりディフェンダーだった。ちなみにガイドは万一に備えて大口径ライフルを持っているが、引き金を引いたら(引くような状況に陥ったら)即クビだという。アフリカではディフェンダーか、そうでなければ「ランクル」がゲスト用の高級車なのである。しかもディフェンダーは「レンジローバー」などとは違って動力を取り出して使うアタッチメントが豊富に用意されており、「ウニモグ」のような特殊作業車あるいは農耕車として使うこともできる。というわけで、ランドローバーに対する私の信頼感は絶大だ。それゆえ大変身した新型を見た時の衝撃は他の人より大きかったはずである。

2019年のフランクフルトモーターショーでお披露目された新型「ランドローバー・ディフェンダー」。従来モデルの生産終了から5年余りを経ての復活だ。
2019年のフランクフルトモーターショーでお披露目された新型「ランドローバー・ディフェンダー」。従来モデルの生産終了から5年余りを経ての復活だ。拡大
試乗車は5ドアモデルの「ディフェンダー110 SE」。車両本体価格は732万円。
試乗車は5ドアモデルの「ディフェンダー110 SE」。車両本体価格は732万円。拡大
内装は従来モデルの面影が全くないほどに洗練されている。センターコンソールやドアパネルにはクロカンらしさを演出するためあえてボルトがむき出しのままになっている。
内装は従来モデルの面影が全くないほどに洗練されている。センターコンソールやドアパネルにはクロカンらしさを演出するためあえてボルトがむき出しのままになっている。拡大
試乗車には12ウェイの電動調整機構やヒーター&クーラーを備えたエボニーレザーシートが装着されていた。ウィンザーレザー表皮も用意されるなど、オプションによる自由度が高いのが特徴だ。
試乗車には12ウェイの電動調整機構やヒーター&クーラーを備えたエボニーレザーシートが装着されていた。ウィンザーレザー表皮も用意されるなど、オプションによる自由度が高いのが特徴だ。拡大
試乗車の40:20:40分割のほかに60:40分割が選べたり電動調整式が選べたりと後席も好みに応じて仕立てられる。さらに3列目シートもオプション設定されている。
試乗車の40:20:40分割のほかに60:40分割が選べたり電動調整式が選べたりと後席も好みに応じて仕立てられる。さらに3列目シートもオプション設定されている。拡大

普通のSUVではない

最初から脱線気味で申し訳ない。SUVと一口に言っても、中身は千差万別であることは言うまでもない。多くの人に乗ってもらうために、姿形はたくましい4WDのように見えても、その実は乗用車のようにフールプルーフであることや燃費がいいことを強調するものが多い中で、かたやディフェンダーは4WD専業ランドローバー(今ではFWDモデルもあるが)の創業以来の金看板、こなたラングラーはあらゆるRVやSUVのご先祖さまに当たるオリジナルジープの遺伝子を最も忠実に受け継ぐ末裔(まつえい)だ。今では少数派どころか、わずかに生き延びている本格的クロスカントリー4WDの双璧である。とはいえ、最初からFWDのみというSUVも少なくない昨今、そんなに鼻息を荒くしても仕方がないが、世の中に数多(あまた)ある普通のSUVとはまったく次元の異なるクルマであるという点は強調しておきたい。

もちろん、日本の都市部でこの種のクルマに乗るのは、泳げない人の腕のダイバーズウオッチのようなものである。いや、ウチはスノボに行くことが多いんで、なんて人にも正直言ってもったいない。除雪された雪道を走る程度なら、スタッドレスタイヤを履いた軽自動車でも十分なのである。にもかかわらず、都会でも従来型ディフェンダーやラングラーを見かけることが多いのはどういうことだろう。ディフェンダーはモデルチェンジのうわさが流れてから目に見えて増えたし、ラングラーはといえばここ数年右肩上がりで絶好調のジープブランドをけん引していると言っていい。2年前に11年ぶりのフルモデルチェンジを受けてだいぶ文化的になったとはいえ、しつこいようだがその辺のSUVとはレベルが違う。それにもかかわらず、昨2019年にはおよそ5000台のラングラーが売れたというから驚きである。

4代目にあたるJL型「ジープ・ラングラー」は2017年のロサンゼルスモーターショーでデビュー。試乗車は5ドアモデル「アンリミテッド」の上位グレード「サハラ」の2リッターターボ車で、車両本体価格は599万円。
4代目にあたるJL型「ジープ・ラングラー」は2017年のロサンゼルスモーターショーでデビュー。試乗車は5ドアモデル「アンリミテッド」の上位グレード「サハラ」の2リッターターボ車で、車両本体価格は599万円。拡大
「ラングラー」の奥行きがなく切り立ったダッシュボードは本格オフローダーならでは。内装色は質実剛健なブラックだ。
「ラングラー」の奥行きがなく切り立ったダッシュボードは本格オフローダーならでは。内装色は質実剛健なブラックだ。拡大
シート表皮は写真のブラックレザーのほかにファブリックも用意されている。背もたれには「Jeep」のステッチがあしらわれる。
シート表皮は写真のブラックレザーのほかにファブリックも用意されている。背もたれには「Jeep」のステッチがあしらわれる。拡大
リアシートの足元空間はそれなりだが、センタートンネルの存在感が大きく、中央席のヘッドレストが低いため、大人の場合は実質的に2人乗りとなる。
リアシートの足元空間はそれなりだが、センタートンネルの存在感が大きく、中央席のヘッドレストが低いため、大人の場合は実質的に2人乗りとなる。拡大

冒険の匂いが引きつける

思うに、ディフェンダーやラングラー、あるいは「メルセデス・ベンツGクラス」は、スポーツカーにおける「ポルシェ911」のように、いやしくもクルマに興味を持つ人ならば、いや男の子なら、いつか一度は乗ってみたいと思うクルマなのだろう。一般的な生活ではそこまで本格的な性能は必要ない、街なかや高速道路を走るだけならむしろ宝の持ち腐れということは分かっていても、本物ゆえの圧倒的なオーラに引かれてしまうのがクルマ好きの性(さが)というもの、古いラーダやUAZの軍用車両もどきに大枚をはたく若い人の気持ちまでは分からないが、同じクルマ好きならばクーペライクなおしゃれSUVではなく、本格派クロカンに冒険の匂いをかぎ取るその気持ちを否定できないはずである。クルマに限らず、プロ用ツールはカッコイイものだからだ。

本物のクロスカントリービークルというものは、分かっている人には言う必要はないが、そうでない人には言葉を尽くして説明してもなかなか理解してもらえないものだ。これまでのディフェンダーも同様に、世界中の過酷な現場で活躍するワークホースだったからこそ、オンロードや街なかでの実用性や扱いやすさに難があった。そのスパルタンさは先代Gクラスの比ではなく、街で見かけるディフェンダーのドライバーは大変なやせ我慢をして乗っているとみて間違いない。それでなければ不便や苦労が好きな人だろう。

「ディフェンダー」は「D7x」と呼ばれる新開発のアルミモノコックシャシーを採用。足まわりは4輪独立懸架に生まれ変わった。
「ディフェンダー」は「D7x」と呼ばれる新開発のアルミモノコックシャシーを採用。足まわりは4輪独立懸架に生まれ変わった。拡大
試乗車は20インチの「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」タイヤを履いていた。18インチから20インチの間で選べるほか、ホイールデザインも全9種類と豊富。
試乗車は20インチの「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」タイヤを履いていた。18インチから20インチの間で選べるほか、ホイールデザインも全9種類と豊富。拡大
従来モデルから引き継いだラゲッジスペースの明かり取り用のアルパインウィンドウ。
従来モデルから引き継いだラゲッジスペースの明かり取り用のアルパインウィンドウ。拡大

過酷な現場で輝く実力

そういえば、実際にちょっと前にGクラスを買った知り合いがいる。ロングドライブの機会が多いことを知っていたのでやめたほうがいいと言ったのだが、結局彼は新型の選択肢が少なかったこともあって、先代のディーゼルモデルを手に入れた。ところが、案の定というべきか、1年もたたないうちに持て余しているという。故障(アドブルーの液漏れ)で修理に出したある時、代車に借りた「Eクラス」の高速道路の走りっぷりに、これがクルマなら俺のは何だろう? とショックを受けたのが決定的だったという。まあ、さもありなんである。

フロントサスペンションが独立式に一新され、オンロードでのスタビリティーが格段に向上した新型Gクラスでさえ、Eクラスに比べれば真っすぐ走るというレベルではない。後席に乗ることの多い息子も買い替えには大賛成しているらしいが、何と最初は敬遠していた奥さまだけが見晴らしがいい上にスクエアなボディーが扱いやすくて街なかで運転しやすい、と大変気に入っているので踏み切れないでいるという。これは都会で使われている“本格派SUVあるある”ではないだろうか。個別に作動可能な3基のデフロックが泣くというものだが、これがGクラスの実情だろう。では、新型のディフェンダーならGクラスのように持て余すことはないのだろうか?

後半へ続く

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

ジープのアイコンである「7スロットグリル」。上部をわずかに後傾させることで空力性能の改善を図っているのが現行モデルの特徴だ。
ジープのアイコンである「7スロットグリル」。上部をわずかに後傾させることで空力性能の改善を図っているのが現行モデルの特徴だ。拡大
試乗したラングラーのタイヤサイズはLT255/70R18。BFグッドリッチの「オールテレインT/A KO2」タイヤは23万0400円のオプションだ。
試乗したラングラーのタイヤサイズはLT255/70R18。BFグッドリッチの「オールテレインT/A KO2」タイヤは23万0400円のオプションだ。拡大
左のフロントフェンダーに貼られた「TRAIL RATED」のバッジ。
左のフロントフェンダーに貼られた「TRAIL RATED」のバッジ。拡大
ランドローバー・ディフェンダー110 SE
ランドローバー・ディフェンダー110 SE拡大
 
ランドローバー・ディフェンダー110/ジープ・ラングラー アンリミテッド(前編)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・ディフェンダー110 SE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2320kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)255/60R20 113H M+S/(後)255/60R20 113H M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
価格:732万円/テスト車=956万1920円
オプション装備:ボディーカラー<タスマンブルー>(9万5000円)/コントラストルーフ<ホワイト>(12万9000円)/ドライバーアシストパック(6万3000円)/3ゾーンクライメートコントロール<リアクーリングアシスト付き>(21万円)/エアクオリティーセンサー(8000円)/空気イオン化テクノロジー(1万9000円)/プライバシーガラス(7万3000円)/コールドクライメートパック(10万9000円)/アドバンスドオフロードケイパビリティーパック(20万1000円)/オフロードパック(21万3000円)/ルーフレール<ブラック>(4万6000円)/カーペットマット(1万8000円)/ラゲッジスペースストレージレール(2万3000円)/12ウェイ電動フロントシート<ヒーター&クーラー+メモリー機能+2ウェイマニュアルヘッドレスト付き>(21万円)/40:20:40分割可倒式リアシート<ヒーター+センターアームレスト付き>(5万8000円) ※以下、販売店オプション エクスプローラーパック(55万4840円)/フィックスドサイドステップ(17万2810円)/プレミアムカーペットマット(3万9270円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:6690km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:261.1km
使用燃料:42.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.2km/リッター(満タン法)/7.0km/リッター(車載燃費計計測値)

ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L
ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L拡大
 
ランドローバー・ディフェンダー110/ジープ・ラングラー アンリミテッド(前編)【試乗記】の画像拡大

ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1895×1845mm
ホイールベース:3010mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:272PS(200kW)/5250rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/4100rpm
タイヤ:(前)LT255/70R18 117/114S M+S/(後)LT255/75R17 111/108Q M+S(BFグッドリッチ・オールテレインT/A KO2)
燃費:11.5km/リッター(JC08モード)
価格:599万円/テスト車=618万9584円
オプション装備:BFグッドリッチ・オールテレインT/A KO2タイヤ(23万0400円)/フロアマット<プレミアム>(4万8600円)/ショートアンテナ<カーボン>(1万0584円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1万5951km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:302.1km
使用燃料:34.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)/8.7km/リッター(車載燃費計計測値)

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