ホンダ・シビック タイプR リミテッドエディション(FF/6MT)
待ったか 小次郎! 2020.11.21 試乗記 ホームコースの鈴鹿サーキットで、ホンダがFF車最速の座を宿敵ルノーから奪還した。その立役者となったのが、「シビック タイプR」のマイナーチェンジと同時に登場した「リミテッドエディション」。聖地・鈴鹿に赴き、進化と速さの秘密を探った。舞台は鈴鹿サーキット
売られた喧嘩(けんか)は買わなきゃならぬ。とは誰も表立っては口にしないが、そんな雰囲気が漂っていたことは否めない。そう、「ルノー・メガーヌR.S.」とのFF車最速競争のことである。
ホンダは来季限りでのF1からの撤退を発表しているが、グランプリでも因縁の相手であるルノーは、ホンダの聖地ともいうべき鈴鹿サーキットに「メガーヌR.S.トロフィーR」を持ち込み、2019年末に2分25秒454を記録してFF車最速を宣言した。それ以前からニュルブルクリンク北コースを舞台にFF最速競争を繰り広げてきた両車だが、最新のレコードタイムはルノーが保持している(現行型「シビック タイプR」が2017年に記録した7分43秒80を2019年春に7分40秒100で再び更新したのがトロフィーR)。
ご存じのようにトロフィーRはメガーヌR.S.のダイハードモデルで、最大の特徴たる4輪操舵システムばかりか後席まで潔く取り払って軽量化。代わりに補強バーを追加するなど、いささか反則気味のモディファイを施した硬派モデルだが、余勢をかって鈴鹿も制されたことに違いはない。
2020年1月の東京オートサロンでお披露目された改良型シビック タイプRは、当然その雪辱を果たすためのものと思われたが、後の新型コロナウイルスの影響で夏の発売予定がこの10月はじめまで延期された。ただしその間の7月には、タイプRの特別仕様リミテッドエディションが2月に実施された性能評価走行テストにおいてルノーから鈴鹿サーキットFF車最速の座を奪還したと発表されている。2分23秒993のレコードタイムを記録した改良型タイプRの限定モデル、リミテッドエディションの最初の試乗会は、やはり鈴鹿サーキットがふさわしいというものだろう。
大っぴらには言わないけれど、リミテッドエディションはトロフィーRにぎゃふんと言わせるためにサーキット走行に特化したスペシャルモデルだろうと勝手に想像していたから、慎重に走りだす。サーキットでの先導車付き試乗会というものは、だいたいが前に詰まってしまうものだから、まずはドライブモードなどを切り替えて試してみよう、などといささかのんびり構えていたら、いつの間にか前走車と大きく差が開いているではないか。
そうだった。鈴鹿サーキットでの試乗会などしばらく縁がなかったので忘れていたが、ホンダの場合は話が違うのだった。しかも先導車のドライバーはホンダの“トップガン”が務めており、それに続く試乗車のドライバーも腕っこきばかり。慌てて「+Rモード」に切り替えて全開で前を追うものの、リードカーとそれにぴったり追走する前の2台との差はジリジリと開くばかり。
いやはやこれはまいった、と思う間もなくフライングラップ2周の短い試乗時間は終了。クールダウンラップでピットに向かう途中に気づいたのは、まったくスパルタンな感じがしないということ。意外と言ってはいささか失礼ながら、新しいタイプRはパリッパリのサーキットスペシャルというよりは、大人向けのスポーツモデルだった。
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