シトロエン・ベルランゴ フィール(FF/8AT)
新しいスタンダードナンバー 2021.01.16 試乗記 先行導入された特別仕様車「デビューエディション」があっという間に売り切れた「シトロエン・ベルランゴ」が、ついにカタログモデルとして正式に上陸。エントリーグレード「フィール」を連れ出し、フレンチMPVのニューフェイスが秘める“素”の魅力を探った。前から見たら真四角だ
でっかいボディーの運転席に乗り込んでエンジンをスタートさせる。広大な室内にディーゼルのサウンドがゴロンゴロンととどろく。意外や振動はそれほどでもない。たぶん、エンジンルームとキャビンとの隔壁の遮音に意を払っていない。だから遠慮なく聞こえてくる。それがこのベルランゴに、徹底的な実用車、働くクルマのおもむきを醸し出している。
ダッシュボードにある8段ATのダイヤル式シフターをクリッと動かしてDレンジに切り替え、慎重に発進する。大柄なボディーがゆっくりと動き始める。全長4405mmと、ボディーの長さは現行「カローラ セダン」より90mm短い。その意味ではコンパクトである。けれど、全幅と全高は1850mmある。全幅と全高の比率が1:1。正面から見ると、でっかい正方形の箱だ。
全高が1850mmもあることからもお分かりのように、ベルランゴの着座位置は小型トラック並みに高く、働くクルマに乗ってみたい、あるいは、いままさに乗っている、という気持ちを乗り込んだ瞬間、大いに満足させる。着座位置が高いわりに、天井はさほど高くない。
旧山手通りを抜け、首都高速に渋谷から上がったら、もうビックリ。ベルランゴは水を得た魚のように生き生きと走り始めるのだ。一般道では、信号待ちの停止から加速のたびに、ディーゼル音をどどどどどととどろかせていたのに、2000rpm以下で巡航し始めるや、1498ccの4気筒DOHCディーゼルターボは静かでスムーズな回転に変貌する。一般道が騒々しいゆえに、高速巡航に入ったときの静かさが、より際立つのかもしれない。