クルマが自ら判断して制御するように

自動車の安全技術は、「パッシブセーフティー」と「アクティブセーフティー」の2種類に分けられる。受動的安全、衝突安全などと訳されるパッシブセーフティーは、事故が起きた際に被害を最小限にとどめる技術だ。シートベルトやチャイルドシート、エアバッグなどの普及に加え、ボディー構造そのもので衝突安全を確保する技術も向上した。車体にあえてつぶれやすい箇所を設け、衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンとすることで、乗員の生存空間を確保するという考え方である。

世界各国でNCAP(New Car Assessment Program)と呼ばれる安全性能評価が行われるようになった。日本では1995年にJNCAPがスタートしており、今日では衝突安全性能試験として、フルラップ正面、オフセット正面、側面、後面衝突頸部(けいぶ)保護の4つの衝突試験を行い、5段階で評価して結果を公表。歩行者の頭部や脚部の保護性能試験や、ブレーキ性能試験なども実施されている。

こうした官民の取り組みにより、受動安全の技術は確かに向上したが、これだけでは十分とはいえない。事故を未然に防ぐことができれば、さらに自動車は安全になる。これがアクティブセーフティーの考え方で、能動的安全、予防安全とも呼ばれる。冒頭で紹介したABSやESCもこのカテゴリーの技術だ。さらに進んで、ドライバーの操作がなくても、クルマが自ら判断して走行を制御する技術が開発されている。

スバルが2008年に「レガシィ」に装備したのが、運転支援システムの「アイサイト」である。誤発進時の急加速を抑える誤発進制御や、前走車と一定の車間距離を保って追従走行する前走車追従機能付きクルーズコントロール、歩行者や自転車への接近を知らせる警報などがセットになっていた。特に重要だったのがプリクラッシュブレーキである。他のクルマや歩行者などに衝突する危険性を察知して自動的にブレーキをかけ、被害を軽減するというものだ。

2010年に「ver.2」に進化したアイサイトは10万5000円という低価格で提供され、「ぶつからないクルマ」というキャッチコピーが話題となった。価格が下がることで普及が進み、軽自動車でも簡易なシステムが採用されるようになる。機能が向上して有用性が広く知られるようになると、消費者のクルマ選びで予防安全装備の有無が最優先事項となることも多くなった。

2019年には国土交通省が乗用車の衝突被害軽減ブレーキを義務化することを発表。2021年11月以降に発売される新型の国産車は、基準を満たした性能を持つ衝突被害軽減ブレーキを装着しなければならなくなった。

3点式シートベルトの開発者であるボルボのニルス・ボーリン。長年にわたり間断なく進化を続ける自動車のパッシブセーフティーだが、今以上に事故を減らし、事故被害を抑えるうえでは、アクティブセーフティーも重要となる。
3点式シートベルトの開発者であるボルボのニルス・ボーリン。長年にわたり間断なく進化を続ける自動車のパッシブセーフティーだが、今以上に事故を減らし、事故被害を抑えるうえでは、アクティブセーフティーも重要となる。拡大
初期の「アイサイト」に採用されたCCDステレオカメラ。アイサイトは既存の「ADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)」を進化・発展させた予防安全・運転支援システムである。スバルは1998年から、こうしたシステムの開発を続けていた。
初期の「アイサイト」に採用されたCCDステレオカメラ。アイサイトは既存の「ADA(アクティブ・ドライブ・アシスト)」を進化・発展させた予防安全・運転支援システムである。スバルは1998年から、こうしたシステムの開発を続けていた。拡大
「アイサイトver.2」に備わる進化型プリクラッシュブレーキの図説。従来のシステムは減速による被害の軽減を狙ったものだったが、進化型は完全停車まで対応。30km/h以下の車速であれば、事故の回避も可能であるとされた。
「アイサイトver.2」に備わる進化型プリクラッシュブレーキの図説。従来のシステムは減速による被害の軽減を狙ったものだったが、進化型は完全停車まで対応。30km/h以下の車速であれば、事故の回避も可能であるとされた。拡大
停車まで行うプリクラッシュブレーキ自体は、ボルボの「シティセーフティ」という前例があったが、事故回避が可能とされる車速が15km/h以下と低く、また高価であったことから注目を集めなかった。普及の契機となったのはスバルの「アイサイトver.2」の登場で、充実した機能と戦略的な価格が、成功の大きな要因となった。
停車まで行うプリクラッシュブレーキ自体は、ボルボの「シティセーフティ」という前例があったが、事故回避が可能とされる車速が15km/h以下と低く、また高価であったことから注目を集めなかった。普及の契機となったのはスバルの「アイサイトver.2」の登場で、充実した機能と戦略的な価格が、成功の大きな要因となった。拡大
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