トヨタGRヤリスRS(FF/CVT)
小さな横綱 2021.01.13 試乗記 ラリーのトップカテゴリーで勝つことを念頭に開発された、トヨタのコンパクトハッチバック「GRヤリス」。たとえFF・CVT仕様のエントリーグレードであっても、そのこだわりの走りは、出自を感じさせる非凡さにあふれていた。驚異のぜいたく仕立て
「トヨタGRヤリスRS」は、つまりGRヤリスの“ターボルック”である。後ろ足をググッと外側に張り出したアグレッシブな3ドアボディーはそのままに、ヤリスターボこと「RZ」が積む過給機付き1.6リッター直列3気筒(最高出力272PS、最大トルク370N・m)の代わりに、同じ3気筒ながら自然吸気の1.5リッターエンジンを搭載する。最高出力120PS/6600rpm、最大トルク145N・m/4800-5200rpmのスペックは、GRの名を冠さない“普通の”5ドア版「ヤリス」と変わらない。
また、RZは競技のために駆動方式が4WD化されたが、RSはFWD(前輪駆動)のままである。トランスミッションも3ペダル式の6段MTではなく、オートマ免許でも乗れるCVT。ただし、10段(!)のシーケンシャルシフトが可能で、そのためのパドルまで備わる。
ご存じのように、GRヤリスは、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)がWRC(世界ラリー選手権)に投入するWRカーのためのホモロゲーションモデルだ。……いや、だった。残念ながらGRヤリスの元ネタとなったWRカーは、新型コロナウイルスまん延の影響で、2021年度のファクトリーマシンとしての活躍はかなわなかった。だがスペシャルボディーのGRヤリスは、そのままトヨタのカタログモデルとしてラインナップされた。トラは死しても毛皮を残すのだ。
言うまでもなくGRヤリスの本気度は高い。ボディー用構造接着剤を多用し、スポット溶接の打点を増やして、ボディーの剛性アップを果たし、さらにボンネット、左右ドア、リアゲートはアルミ化され、ルーフはなんとカーボンファイバー製! 専用の生産施設まで用意される厚遇ぶりである。
それでいて、価格はRZが396万円(“ハイパフォーマンス”バージョンは456万円)。RSは265万円。よもや「ノーマルヤリスなら139万5000円から買えるのに」と、口をとがらす人はいまい。自動車産業に詳しい人ほど、口をあんぐりと開けるはずだ。
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