家庭内での“自動運転”始まる

その他の企業のプレゼンテーションにも、自動車に関連する興味深いものが数々見られた。

ソニーは2020年のCESで公開したEV「VISION-S」が、2020年12月からオーストリアで技術検証のための公道走行を開始したことを明らかにした。すでに報道されているとおり、同車はマグナ・シュタイヤーとの協力のもとで開発されたもので、オーストリアはその本拠地でもある。

ソニーはCESでフルサイズミラーレス一眼カメラを搭載可能なドローン「Airpeak」も発表しており、VISION-Sの走行シーンはこれを使って撮影したという。Airpeak用のプロモーションの中にもVISION-Sが登場していた。

ブリヂストンは現在の技術紹介と将来に向けたチャレンジを、今日の街と未来都市を訪問する形のサイトで紹介した。

特に興味深かったのは、コネクテッドタイヤの技術だ。センサーを内蔵したタイヤが走行状態をはじめとしたさまざまなデータをピックアップ。ユーザーのニーズにきめ細かく応えるためだけでなく、個々の車両性能や安全性の向上にも活用する。

筆者が考えるに、自動運転時代が到来すると、ユーザーの立ち位置が「クルマを動かす」から「クルマに乗る」という、より受動的なポジションに移行するはずだ。そうしたなかで自動車を陰で支える技術は、より重要度を増すだろう。

パナソニックは2020年にトロントで実施した、プロジェクション投影したゴッホの作品をクルマに乗ったままで鑑賞できるという、新たな絵画展のスタイル「ファン・ゴッホbyカー」の事例を紹介した。

ボッシュは2020年に発表した網膜に直接投影するスマートグラス用モジュールが、CESの主催者によって2021年の「イノベーション賞」のひとつに選ばれたことをリポートした。モジュール部分の重さはわずか10g以下だという。使用イメージの写真では、自動車の運転中にグラスにナビゲーションが投影されるシーンが描かれている。

実際の使用にはディストラクション、つまり目移り・注意散漫という問題を解決する必要が生じるだろう。いっぽうでスマートグラスを使えば、どんなクルマに乗っていてもスマートフォンと連携した最適・最新の地図やナビを駆使できるようになる。簡単に言えば、戦前の「グランプリ・ブガッティ」に突然乗っても、最新のナビ画面が見られるのである。

すでにスマートフォンのナビ機能は、高価なメーカー純正ナビや後付けの汎用(はんよう)ナビを駆逐しつつある。スマートグラスは、さらにそうした動きを推し進める可能性がある。そればかりか、前述したMBUXのような装置のライバルになるかもしれない。

そのボッシュは、導入が簡単なセキュリティーカメラシステムも提示した。これはアンドロイドを用いたオープンシステムだ。

有料駐車場での応用例では、既存の監視カメラでナンバープレートを自動で読み取り、出庫時は自動で決済していた。

これによってチケットもゲートも不要の有料パーキングが極めて簡単に実現するというわけだ。

イタリアで発券機の不具合や精算機の故障にたびたび遭遇してきた筆者としては、希望を抱けるシステムである。

自動運転車に加え「iPhone 12 Pro/Pro Max」でも脚光を浴びたLiDARスキャナーは、小型化と高性能化をアピールするメーカーが目立った。

その意外な使途を示してくれたのは、サムスンであった。

最新型のロボット掃除機に搭載し、部屋の空間情報を取得することでより効率的な稼働を実現。2021年内に発売予定という。“自動運転”は道路より先に、家の中で進化しそうだ。

「ソニーVISION-S」はオーストリアにおける公道走行実験の開始が報告された。
「ソニーVISION-S」はオーストリアにおける公道走行実験の開始が報告された。拡大
ブリヂストンはコネクテッドタイヤの可能性を提示した。
ブリヂストンはコネクテッドタイヤの可能性を提示した。拡大
ボッシュのモジュールを内蔵したスマートグラスのイメージ。
ボッシュのモジュールを内蔵したスマートグラスのイメージ。拡大
パナソニックの技術によってトロントで実現した、クルマに乗って楽しむ絵画展「ファン・ゴッホbyカー」。
パナソニックの技術によってトロントで実現した、クルマに乗って楽しむ絵画展「ファン・ゴッホbyカー」。拡大
サムスンのロボット掃除機「ジェットボット90AI+」は、LiDARを搭載。
サムスンのロボット掃除機「ジェットボット90AI+」は、LiDARを搭載。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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