アウディRS 4アバント
正統なる後継者 2021.02.01 アウディテクノロジーの極み RSモデルを知る<AD> 最高出力450PSのパワフルなV6ツインターボとAWD「クワトロ」が織りなす走り、そしてワゴンのパッケージ。「アウディスポーツ」の始祖たる「RS2」のDNAを受け継ぐ「RS 4アバント」は、さまざまな要望に応えてくれるオールラウンダーと呼ぶにふさわしい存在に仕上がっていた。都市生活にもマッチするサイズ
2019年に日本上陸を果たしたアウディRS 4アバントがフェイスリフトを受けた。前後バンパーやエアインレット、サイドシルなどのデザインが変更されたほか、マニアの目に留まるのがボンネット先端に設けられたスリットだ。
これは1983年に登場したWRCグループBのホモロゲーション取得モデル「アウディ・スポーツクワトロ」へのオマージュ。2.2リッター 直5ターボで300PSと、当時としてはとんでもないハイパフォーマンスだったため、冷却性能を高めるべくボンネット先端にもスリットが入れられていた。
現在のRS 4アバントのそれは実際にエアを取り入れているわけではないものの、アウディスポーツは、ポルシェから移籍してきたフェルディナント・ピエヒ博士がユニークな直列5気筒エンジンとセンターデフ内蔵式のフルタイム4WDを搭載した「アウディ・クワトロ」を世に送り出したことに始まるのだな、などと回想すると感慨深い。アウディ・クワトロが登場したのは1980年で、1983年にはモータースポーツ活動やスペシャルモデルの開発を行うクワトロGmbHを設立。これが現在のアウディスポーツGmbHの前身となっている。
ドイツ語でRennsport、すなわちレーシングスポーツを意味するRSモデルの元祖は、1994年に登場した「アバントRS2」だ。当時の「80アバント」をベースに315PSの2.2リッター直5ターボエンジンを搭載したハイパフォーマンスワゴンだった。現在はクーペにハッチバック、SUVまで10以上のRSモデルが存在しているが、DセグメントのアバントRS2が祖であることから、現在のRS 4アバントはその正統な継承者といえる。歴代RS 4では2代目のときにセダンも設定されたが、いまは再びアバントのみとなっている。
迫力あるフロントマスクや20インチタイヤを収めるために張り出したフェンダーなどで武装するRS 4だが、派手すぎるということもない。ベースとなったスタンダードの「A4アバント」とは明確な違いがあるけれど、スマートな日常使いにも適しているというちょうどいいスタイルだ。全幅はそのスタンダードに対してわずか20mm増の1865mmで、都市生活でも手に余るようなことはないだろう。
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強大なトルクがどこまでも続く
そんなことを思いながらエンジンを始動すると、この手のモデルにありがちな爆音ではなく、これまたスマートだった。低くうなるサウンドからもただ者ではない雰囲気は漂っているが、早朝や深夜の住宅街でも気兼ねなく出かけていける程度の音量に抑えられているのはありがたい。
現行モデルが先代の3代目と大きく違うのがこのエンジン。自然吸気の4.2リッターV8から2.9リッターV6ツインターボへと変更され、最高出力は450PS/8250rpmから450PS/5700-6700rpmへ、最大トルクは430N・m/4000-6000rpmから600N・m/1900-5000rpmとなった。以前のV8は驚異的なピストンスピードを誇る超高回転型ユニットとして注目の的だったが、現行のV6はダウンサイジングターボ化によって同じ450PSを5700rpmで実現。トルクは大幅に増強されて、しかも低回転から幅広い領域で最大トルク値を発生する。
だから一般的な走行では余裕たっぷりで、2000rpm以上回す必要などほとんどない。交通の流れをリードしようと強めにアクセルを踏んでも3000rpmも回せば十分だ。その回転域では、現代的なユニットでも完全にゼロにはできないわずかながらのターボラグが気になることもあるものだが、ことRS 4アバントに関しては皆無。Vバンクの内側にタービンとエキゾーストマニホールドを配置する、いわゆるホットVレイアウトは排気系の取り回しが短くなり、レスポンスを向上させるからだ。
アクセルペダルを踏み込んでいくと、低回転から感じていた強大なトルクがどこまでも続いていくかのような感覚で、回転上昇に伴う山や谷のようなものはない。いわゆるフラットトルク型で7000rpmのトップエンドまで迫力ある加速が途切れない。シフトアップすると5000rpm程度でつないでいくことになるが、少なくとも日本の公道で試せる120km/hまではその力強さに衰えはまったくない。
組み合わされるトランスミッションはトルクコンバーター式ATの8段ティプトロニック。「アウディドライブセレクト」には「Comfort/Auto/Dynamic」と3つのモードがあり、Comfortならばたとえ急加速をさせてもギアチェンジはスムーズさを失わない。ところが、Dynamicに切り替え、アクセルを踏みつけて発進させるとリアタイヤをわずかに軋(きし)ませながら力強く路面を蹴り、ガツンといったショックを伴いながら素早くシフトアップしていく。ショックといっても不快ではなく、ステップギアのスポーツモデルを走らせているかのような感覚と喜びがある。
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モードによって大きく変わるキャラクター
ルックスやサウンドが、いい意味で派手すぎず、これなら日常使いにも向いてそうだと感じていたが、乗り心地もまたしかりだった。サスペンションのストロークはスポーツモデルなりに短いものの、その限られたなかに最大限のしなやかさがある。
高速走行中に大きな凹凸を通過するような場合でも、路面からの入力による上下動は少なく、無用な硬さもない。それでいて収束は実に素早い。もしも同乗者に不快な思いをさせたくなければ硬さを感じさせないComfortを選びたいが、高速域では上下動の収束がやや遅くなる。Dynamicはそういったときのボディーコントロールは安定しているのでドライバーとしては安心感があるものの、硬さを感じる場面も出てくる。Autoは場面によって文字通り自動的に最適なセットになる賢いモードなので、通常はこれ一択でまったく問題ないだろう。
とはいえ、ワインディングロードでむちを入れるときなどはあらかじめDynamicを選択しておくのがいい。コーナー入り口に向けて強いブレーキングをしたときにノーズが沈み込むスピードが明らかに抑制されるなど、姿勢づくりの自由度が圧倒的に高くなるからだ。
モードによって走行キャラクターを変更できるのは楽しみのひとつだが、RS 4アバントにはさらに細かく好みのセットアップができる「RSモード」が設定されている。ドライブシステムやサスペンション、ステアリング、エンジン音、そしてスポーツデファレンシャルにそれぞれ何種類かの選択肢があり、組み合わせを決めたら「RS1」「RS2」として2パターンの保存が可能。ステアリング上のRSボタンを押すことで、それらを瞬時に呼び出せるようになっている。同時にRSモードになると、アウディバーチャルコックピットに前後左右のGやタイヤの空気圧および温度といった情報が表示される。今回の試乗は路面温度が低い冬のワインディングロードが舞台だったので、タイヤの状態が確認できるのは心強かった。
しばらく日陰に置いていたため、走りだしはフロント12℃、リア5℃とタイヤの内部温度は極端に低く、慎重にアクセルを踏む心構えができた。そうしたコンディションながらもグリップはしっかりとしており、低次元で滑り出してしまうということもなく「コンチネンタル・スポーツコンタクト6」タイヤが低温域から頼もしいということを知った。
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あらゆる欲望に応えてくれる
走り続けてタイヤの内部温度がフロント30℃、リア20℃ほどに達するとさらに路面を捉える感覚が強くなり、もっと攻めても大丈夫だという自信が湧いてくる。ちなみに空気圧は走り始めのフロント2.5bar/リア2.1barから同2.8bar/同2.3barへと上昇していて、これもスポーティーな走行で頼もしさが増した要因。自分のドライバーとしての感覚と、メーターで変化する数値が合致していることはうれしくもあり、また、低温時には安全への意識を高める効果もある。
「クワトロ」がもたらすスタビリティーの高さには圧倒的で絶大な安心感があるのは誰もが想像する通りだが、RS 4アバントはコーナーでの機敏な動きも天下一品だ。V8に比べれば軽量なV6ツインターボのおかげでノーズの重さを意識させられることはなく、ステアリングを切り込めばフロント周りのすさまじい剛性を感じさせながら力強くコーナーへ切り込んでいく。
立ち上がりに向けてアクセルを踏み込んでいったときの挙動も気持ちがいい。「クワトロスポーツデファレンシャル」の設定を「Dynamic」にしておくと、FRに近い軽快な旋回フィールとAWDならではの強大なトラクションが相まって気後れすることなくアクセルを踏み込んでいける。アバント=ステーションワゴンボディーではあるが、ワインディングロードではリアルスポーツと変わらないパフォーマンスと喜びが堪能できるのだ。
アウディはもともと操縦安定性の高さに定評があったが、近年では洗練性に磨きをかけている。「A4」や「A6」「e-tron」などに乗ると、あらゆる動きが驚くほどスムーズで、機械として緻密につくり込まれているのが実感できる。
そういった流れはRS 4アバントでも感じられ、圧倒的なパフォーマンスやスポーツモデルとしての興奮に加え、日常域での快適性が大いに高まっているのだ。カーライフを豊かにするアバントにそれはふさわしく、Dセグメントの手に余らないサイズは日本の都市部でも扱いやすい。RSモデルの祖のDNAを最も色濃く受け継ぐRS 4アバントは、クルマ好きのあらゆる欲望に応えてくれるオールマイティーなモデルなのだ。
(文=石井昌道/写真=郡大二郎)
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車両データ
アウディRS 4アバント
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1865×1435mm
ホイールベース:2825mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450PS(331kW)/5700-6700rpm
最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)275/30ZR20 97Y/(後)275/30ZR20 97Y(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:1250万円