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メルセデスAMG GLA35 4MATIC(4WD/8AT)

動力性能はプレミアム 2021.02.12 試乗記 河村 康彦 「メルセデス・ベンツGLA」のラインナップに加わったハイパフォーマンスバージョン「AMG GLA35 4MATIC」に試乗。レースと共に歩んできたAMGの名を冠するコンパクトSUVは、果たしてどのように仕上がったのか。ワインディングロードでその実力を確かめた。

どこから見ても立派なSUV

メルセデス・ベンツにおいて「4MATIC」と呼ばれる4WDモデルであっても、最低地上高は150mm程度と“通常の乗用車”と同等の水準。全高が低いことで機械式の立体駐車場も利用できる……と、特有ともいえるメリットもあったが、裏を返せばそうしたさまざまな特徴も含め、「ハッチバックボディーにSUV風の衣装をまとったもの」と、そのキャラクターを紹介できそうなのが、2013年に発表された初代GLAだった。

それから7年を経て2020年に初のフルモデルチェンジを行い登場した2代目では、初代モデルからパッケージングの考え方そのものを大きく変更したことが、まずは一番のトピックだ。

全長と全幅は従来型と大差ない一方で、全高は一気に100mm以上をプラスし1.6m超に。さらに、最低地上高も標準仕様では202mm、ローダウンサスペンション採用のAMGラインでも179mmと初代とは比較にならない大きさになり、要は“SUV度数”を大幅に高めたといえるのが、2代目GLAのパッケージングである。

実際、そのキャラクターの変貌ぶりは、一見しただけで誰の目にも明らかだろう。「GL」という車名の後ろに車格を表すアルファベットひと文字が加えられるメルセデスのSUVラインナップの中にあっても、正直なところちょっとばかり傍系的イメージがついて回った初代モデルに比べれば明らかに“「GLC」の弟分”的印象が強まり、“立派なSUV”に成長したと思えるのだ。

2020年10月22日に日本導入が発表された「メルセデスAMG GLA35 4MATIC」。「GLA」シリーズ初のガソリンエンジン搭載モデルとしてラインナップに加わった。
2020年10月22日に日本導入が発表された「メルセデスAMG GLA35 4MATIC」。「GLA」シリーズ初のガソリンエンジン搭載モデルとしてラインナップに加わった。拡大
「AMG GLA35 4MATIC」は、「A35 4MATIC」や「CLA35 4MATIC」などに続く「メルセデスAMG 35」シリーズの第5弾となるモデルだ。
「AMG GLA35 4MATIC」は、「A35 4MATIC」や「CLA35 4MATIC」などに続く「メルセデスAMG 35」シリーズの第5弾となるモデルだ。拡大
今回試乗した「AMG GLA35 4MATIC」のボディーカラーは「ポーラーホワイト」。これを含め外装色は全7種類から選択できる。
今回試乗した「AMG GLA35 4MATIC」のボディーカラーは「ポーラーホワイト」。これを含め外装色は全7種類から選択できる。拡大
リアコンビネーションランプには、他のメルセデスSUVに共通するブロックデザインと呼ばれる新しい意匠が採用されている。
リアコンビネーションランプには、他のメルセデスSUVに共通するブロックデザインと呼ばれる新しい意匠が採用されている。拡大
メルセデス・ベンツ GLA の中古車

待望のガソリンエンジン車

そんな新しいGLAが、ランニングコンポーネンツを共有しつつより長い全長/ホイールベースと3列シートレイアウトの採用をセリングポイントとするブランニューモデルの「GLB」と共に、日本に上陸したのは2020年の夏。ただし、ローンチ時に設定された搭載パワーユニットは、GLAが2リッターのターボ付き4気筒ディーゼルで、GLBはFWD仕様がGLAと同様のユニット、4WD仕様のほうは同じく2リッターのターボ付き4気筒ながらこちらはガソリンユニットのみというものだった。

そこで「導入モデルのパワーユニットがかくも変則的な設定となった理由は?」とインポーターであるメルセデス・ベンツ日本へと問うてみると、返ってきたのは「この3タイプが、発表時点から最速で輸入可能な仕様であったため」という、なんとも“お説ごもっとも”でシンプルな回答であった。

かくして今回取り上げるのは、待ち望んでいた人も多かったに違いない、日本仕様としては初めてとなるガソリンエンジンを搭載したGLA。実はGLBとは異なり、GLAのガソリンバージョンでは「際立ったパフォーマンスの持ち主」という性格づけが強調されるのがひとつの特徴。新たに設定されたガソリンエンジン搭載車は2タイプで、いずれもサブブランドのメルセデスAMGに属するハイパフォーマンス版なのである。

そのひとつは最高出力306PSを発する強心臓を搭載するAMG 35 4MATICで、もうひとつは実にリッター当たりの出力が200PSの大台を超える、最高412PSという“超強心臓”を搭載する「AMG 45 S 4MATIC+」というモデルだ。今回紹介するのは前者で、価格はピタリ900万円というAMG 45 S 4MATIC+を200万円近くも下回る、707万円という設定。

もっとも、ワインディングロードに連れ出した試乗車は、ヘッドアップディスプレイや10スピーカーオーディオなどからなる「AMGアドバンスドパッケージ」に、前席ベンチレーター付きAMGパフォーマンスシートや同パフォーマンスステアリングなどからなる「AMGパフォーマンスパッケージ」、ナビゲーションシステムにアクティブステアリングアシストなどがセットとなる「ナビゲーションパッケージ」にパノラミックスライディングルーフと、装着可能なオプションアイテムがフル装備状態。結果、その車両価格はおよそ830万円と結構な高額モデルとなっていた。

「AMG GLA35 4MATIC」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4440×1850×1585mm、ホイールベースは2730mm。車重は1720kgと発表されている。
「AMG GLA35 4MATIC」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4440×1850×1585mm、ホイールベースは2730mm。車重は1720kgと発表されている。拡大
最高出力306PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ターボエンジンを搭載。フルタイム4WDの「4MATIC」と組み合わされる。
最高出力306PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ターボエンジンを搭載。フルタイム4WDの「4MATIC」と組み合わされる。拡大
フラットボトムデザインの「AMGドライブコントロールスイッチ付きAMGパフォーマンスステアリング」は、「AMGアドバンスドパッケージ」に含まれるオプションアイテム。
フラットボトムデザインの「AMGドライブコントロールスイッチ付きAMGパフォーマンスステアリング」は、「AMGアドバンスドパッケージ」に含まれるオプションアイテム。拡大
今回の試乗車は、サイドサポート部分が大きく張り出したオプションの「AMGパフォーマンスシート」を装備。写真のシート色は「チタニウムグレー/ブラック」で、ほかに「クラシックレッド/ブラック」が選択できる。
今回の試乗車は、サイドサポート部分が大きく張り出したオプションの「AMGパフォーマンスシート」を装備。写真のシート色は「チタニウムグレー/ブラック」で、ほかに「クラシックレッド/ブラック」が選択できる。拡大
本革のシート表皮は、オプションの「AMGアドバンスドパッケージ」に含まれるもの。フロントシートに合わせたカラーコンビネーションと表皮デザインが特徴。
本革のシート表皮は、オプションの「AMGアドバンスドパッケージ」に含まれるもの。フロントシートに合わせたカラーコンビネーションと表皮デザインが特徴。拡大

見た目の差異化は大成功

「普通のGLA」に対してこのモデルが「特別なハイパフォーマンスバージョンであること」を最もわかりやすく象徴するのは、最新のAMGモデルにおいて共通の意匠としておなじみとなってきたフロントグリルだろう。15本の垂直クロームルーバーを用いたそのデザインは、1952年にメキシコで開催されたパナメリカーナレースで優勝した「300SL」レーシングマシンに由来するものとされる。

率直なところ、好みが分かれそうなデザインだとは思えるが、遠目にも認識しやすい差異化という観点からは、「大成功」のアイテムといえそうだ。

それを含め、従来型に比べると「メルセデス発のSUV」という雰囲気がすこぶるわかりやすく表現されたこのモデルのドライバーズシートへと乗り込むと、そこで待ち受けるのは4WDモデルとはいえ“泥くささ”とは無縁の、メルセデスの最新ラインナップに共通する、なんともモダンで洗練されたデザインのインテリア。

とくに初めての人は、“一枚ガラス”に収められたインパネに目を奪われること請け合い。凝ったデザインの空調レジスターやSUVならではの高いコンソール部分にまで入念に“光の演出”が行われ、夜間になると得もいわれぬあでやかさまで感じられるのも、このモデルの特徴である。

一方、前述したオプションの、立体感が強くいかにもスポーティーなデザインのフロントシートは、後席住人にとっては目の前の圧迫感がかなり強く、後席使用の頻度が高いユーザーには必ずしもおすすめには値しないと思える。もっとも、実は走り始めてみれば後席のほうが突き上げ感が強めでノイズもこもりがちであるなど、そもそも空間的には余裕があっても、明らかに前席優先の印象が強いモデルであることは認識しておくべき事柄であろう。

AMGモデルでは、専用となる15本の縦ルーバーを用いた「パナメリカーナグリル」を採用。1952年に公道レースのカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝したレースカー「メルセデス・ベンツ300SL」をモチーフとしている。
AMGモデルでは、専用となる15本の縦ルーバーを用いた「パナメリカーナグリル」を採用。1952年に公道レースのカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝したレースカー「メルセデス・ベンツ300SL」をモチーフとしている。拡大
インテリアデザインは、NGCC(ニュージェネレーションコンパクトカーズ)と呼ばれる現行「Aクラス」や「Bクラス」に準じたもの。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」や64色から選べるアンビエントライトなどが標準装備されている。
インテリアデザインは、NGCC(ニュージェネレーションコンパクトカーズ)と呼ばれる現行「Aクラス」や「Bクラス」に準じたもの。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」や64色から選べるアンビエントライトなどが標準装備されている。拡大
10.25インチディスプレイを2枚並べた特徴的なインストゥルメントパネル。AMGモデル専用の表示デザインも採用されている。
10.25インチディスプレイを2枚並べた特徴的なインストゥルメントパネル。AMGモデル専用の表示デザインも採用されている。拡大
後部座席を使用する通常時の荷室容量は435リッター。リアバンパー下に足をかざす動作でテールゲートを開けることができる「フットトランクオープナー」を標準装備している。
後部座席を使用する通常時の荷室容量は435リッター。リアバンパー下に足をかざす動作でテールゲートを開けることができる「フットトランクオープナー」を標準装備している。拡大

パフォーマンスに不満はないけれど

エンジンに火を入れると耳に届くのは、4気筒ユニットらしからぬ迫力のエキゾーストサウンド。選択するドライビングモードによってはアクセルオフ時のバブリング音が盛大に耳に届くなど、 “演出過多”の印象を受ける場面もあった。

1.7t超と決して軽いとはいえない重量に、2リッターという排気量の組み合わせではあるものの、動力性能に不満を抱かされることはテストドライブ中、皆無だった。それどころか“ブーン”と乾いたサウンドとともにエンジン回転数と車速がよどむことなく伸びていくさまには、あらためて昨今のエンジンテクノロジーの高さを知らされる思いだった。

AMGの名に恥じることのない絶対的な加速能力の高さとともに、白眉だったのは、緩加速や緩減速がメインとなる日常シーンでの、わずかなアクセル操作に対する自然な追従性や変速の滑らかさ。「発進や微低速シーンを苦手とする」という“定説”を一切実感させないその挙動に、「あれ? トランスミッションはDCTだったよね」と、あらためて資料を確認してしまったのも真実。この仕上がりならば、「やはりプレミアムブランドの作品は、ステップATでなければ」と言いたくなることはなさそうだ。

ところで、後席での乗り味が前席に見劣りするというのは前述の通り。ならば反対に前席では絶品のテイストが味わえるのか? となると、絶賛までには至らないというのが正直な印象でもあった。差し当たり、良路での乗り味が「文句なし」の水準にあることは事実だが、ザラ目路へと差しかかるとロードノイズが急増して静粛性の評価は大きく下がってしまうし、荒れた路面へと差しかかると目立ってしまう揺すられ感の処理などは、あと一歩の洗練度が足りないように受け取れる。

国内でも「なんとかなりそう」と思えるサイズ感や、メルセデス発のSUVとして納得のルックスなど、新しいGLAは、なるほど今という時代にふさわしい魅力を備えている。そして、そこに“プレミアムな動力性能”が上乗せされたとなれば、これもまた人気を博しそうな予感がある。しかしながら、そこは天下のメルセデスの作品のこと、パフォーマンス以外でも“ライバルを一蹴!”という全方位にわたる隙のないアドバンテージを実感させてほしいのである。

(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

専用の4輪駆動システム「AMG 4MATIC」を搭載する「AMG GLA35 4MATIC」。トルクは前後100:0から50:50の範囲で連続可変配分される。
専用の4輪駆動システム「AMG 4MATIC」を搭載する「AMG GLA35 4MATIC」。トルクは前後100:0から50:50の範囲で連続可変配分される。拡大
クローム仕上げのデュアルエキゾーストパイプを装備する「AMG GLA35 4MATIC」。選択されたドライビングモードによっては、4気筒ユニットらしからぬ迫力のエキゾーストサウンドを奏でる。
クローム仕上げのデュアルエキゾーストパイプを装備する「AMG GLA35 4MATIC」。選択されたドライビングモードによっては、4気筒ユニットらしからぬ迫力のエキゾーストサウンドを奏でる。拡大
後席の背もたれには40:20:40分割可倒機能に加え、前後スライド機構が備わる。背もたれを前方に倒せばほぼフラットな積載スペースが出現し、荷室容量を最大1430リッターに拡大できる。
後席の背もたれには40:20:40分割可倒機能に加え、前後スライド機構が備わる。背もたれを前方に倒せばほぼフラットな積載スペースが出現し、荷室容量を最大1430リッターに拡大できる。拡大
今回の試乗車は「AMG 5ツインスポーク」ホイールに、235/50R19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが組み合わされていた。
今回の試乗車は「AMG 5ツインスポーク」ホイールに、235/50R19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが組み合わされていた。拡大
「AMG GLA35 4MATIC」の車両本体価格は707万円。WLTCモード燃費値は11.7km/リッターと発表されている。
「AMG GLA35 4MATIC」の車両本体価格は707万円。WLTCモード燃費値は11.7km/リッターと発表されている。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG GLA35 4MATIC

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1850×1585mm
ホイールベース:2730mm
車重:1720kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:306PS(225kW)/5800rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000-4000rpm
タイヤ:(前)235/50R19 99Y/(後)235/50R19 99Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.7km/リッター(WLTCモード)
価格:707万円/テスト車=829万4000円
オプション装備:ナビゲーションパッケージ(19万1000円)/AMGアドバンスドパッケージ(30万7000円)/AMGパフォーマンスパッケージ(55万6000円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(17万円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2405km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:394.6km
使用燃料:35.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデスAMG GLA35 4MATIC
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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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