ポルシェ・カイエンSハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
解けない矛盾 2011.04.19 試乗記 ポルシェ・カイエンSハイブリッド(4WD/8AT)……1202万5000円
新型「カイエン」シリーズに加わったハイブリッドモデルをテスト。HVにもポルシェらしさはあるのか? 東京−箱根を往復し、燃費とともに確かめた。
環境対策のイメージリーダー
久しぶりに箱根に来ている。試乗車は「ポルシェ・カイエンSハイブリッド」。全長4845mm×全幅1940mm×全高1710mmという立派な体躯(たいく)ながら、右へ、左へと連続するカーブがすこしも苦にならない。クルマとの一体感が高いからだ。路面とのダイレクトな対話を重視するポルシェのクルマにしてはずいぶんと軽いハンドルを、クルクル回しながら峠道を行く。下り坂の先が90度近くに曲がっている。
ブレーキを踏んだ直後、「うっ、わー!」。ちょっと肝を冷やした。思いのほか、スピードが乗っていたからだ。
ポルシェ・カイエンSハイブリッドの車重は2350kg。初代と比較して軽量化されたニューカイエンのなかにあって、ターボモデルの2230kgをも上まわる、もっとも重いカイエンである。ポルシェのブレーキとはいえ、物理的な法則を超えて速度を殺せるわけではない。
東洋の島国から世界初の量産ハイブリッドカー「トヨタ・プリウス」が発表されたとき、欧州のメーカーは(表向き)冷淡だった記憶がある。燃費対策には効率に優れるディーゼルエンジンで対応しており、また、高速での長距離移動が重視されるヨーロッパでの使い方に「ハイブリッドはなじまない」とされてきた。長時間のハイスピードクルージングでは、重いモーターやバッテリーはただのお荷物だし、そもそも動力源を2つも搭載するのは、解決策としてスマートではない、と。
そうした主張には一理ある。しかしクルマを販売するうえで、特にメインマーケットたる北米市場で「ハイブリッド」という単語が強力なキーワードとなっているいま、なにはともあれ「ハイブリッド」、または「ハイブリッド」の名を冠したモデルを投入しないわけにはいかない。環境・燃費対策に積極的に取り組む、いわばイメージリーダーとして。
プリウスから遅れること約15年。ようやく販売が開始されたカイエンSハイブリッド。しかしポルシェは、ハイブリッド車に関して単なる後発メーカーではない。