レクサスLS500h“エグゼクティブ”(FR/CVT)
動より静 2021.03.17 試乗記 年次改良を積み重ね、トヨタグループのフラッグシップサルーンとして完成度を高め続けている「レクサスLS」。最新モデルでは「静粛性と乗り心地の大幅な向上を追求」したというが、果たしてその仕上がりはどんなものか。ハイブリッドの最上級グレードに試乗した。もはや工芸品
一体どうやってつくっているのだろう。以前から設定されている切子ガラス調のトリムパネルにも度肝を抜かされたが、新しいLSの最上級グレード“エグゼクティブ”に設定されたプラチナ箔(はく)と西陣織のドアオーナメントパネルとトリムは、もう見事な工芸品と言うしかない。「月の道」を表現しているのだというこれは66万円のオプションだが、切子ガラスの半額以下とお手ごろだ。とはいえ、自動車の内装に使う限りは(特に日本車では)、取り扱いが難しかったり、すぐに色あせてしまったりということは許されない。もちろん万一の場合の安全性も確保しなければならないから、なおのことどうやってトリム材に仕立てているのか、と感心するしかない。
「銀影ラスター」というボディーカラーもまた絶妙な光沢を放ち、しかもポルシェやフェラーリの場合を考えればたった33万円ともいえるオプションだ。ネーミングもちょっとバタくさい戦隊ヒーローの名前のようでなかなか面白い試みだ。大きなボディーと相まってその存在感は尋常ではない。
もっとも、独自のラグジュアリーを極めようとするレクサスの姿勢と相いれないというか、ちぐはぐだと感じるのがインストゥルメントパネルだ。大型のタッチディスプレイを採用し、センターコンソール周辺のスイッチ類は多少整理されたものの、メーターまわりは従来と変わっていないようで、相変わらず文字が小さく煩雑な印象だ。ハイブリッドの“エグゼクティブ”にまでエンジン回転計優先の単眼式メーターが必要なのか疑問だし、メーターナセルから突き出したドライブモード切り替えダイヤルも使いにくいうえに、あまり意味がないように思える。あの「LFA」のイメージを踏襲しようとしているのだろうが、しかしもうずいぶんと昔の限定車だし、そもそもLSはフラッグシップにふさわしい独自の造形を取り入れるべきではないだろうか。