三菱エクリプス クロスP(4WD)
“四駆の三菱”の集大成 2021.03.25 試乗記 三菱のクロスオーバーSUV「エクリプス クロス」に、「アウトランダー」ゆずりの電動パワートレインを搭載したPHEVが登場。ハイテクの電動四駆と引き締まった高剛性ボディー、おうようなクルマの挙動が織り成すその走りは、三菱製4WD車の伝統を感じさせるものだった。悲運のディーゼルにかわって登場
デビューから3年という短いスパンで実施された、エクリプス クロスの大規模マイナーチェンジのポイントは、大きく2つある。ひとつが140mmの全長拡大も含めたエクステリアの大幅刷新だが、その最大の理由は「想定より安いクルマに見られてしまった」ことにある。
このクルマはミドルクラスのアウトランダーより全長が短く、主力のガソリンエンジンも新開発のダウンサイジングユニットだったし、三菱自身もハヤリに乗じて(?)、これをコンパクトSUVと称した。しかし、実際のところプラットフォームはホイールベースも含めてアウトランダーと共通で、上屋設計はさらに凝ったものだった。短い全長はあくまで“スポーツテイスト”の表現であり、1.5リッターターボも性能的には2~2.4リッター自然吸気エンジンの正統後継機種である。たしかにアウトランダーより全長は短かったが、安普請なわけではなかったのだ。
ところが、市場では「トヨタC-HR」や「ホンダ・ヴェゼル」といったコンパクトSUVと比較されて“割高”と思われてしまった。スパッと断ち切ったヒップライン(好事家風にいうとコーダトロンカ?)も「小さく見える」とか「荷室がせまい」と、これまた割高感を助長してしまった……と担当者は説明する。
もうひとつのポイントは、パワートレインラインナップの再構築である。ガソリンモデルは継続だが、発売間もないディーゼルモデルを引っ込めたかわりに、開発当初は予定がなかったプラグインハイブリッド(PHEV)が設定された。
日本ではわずか1年半という短命に終わったディーゼルユニットは、開発の真っ最中に欧米でディーゼル不正問題が発覚。ほとんど完成していたのに、急きょ排ガス処理システムの再開発(NOx吸蔵触媒→尿素SCR)を余儀なくされた。しかも、計画から1年以上遅れて発売にこぎ着けたはいいものの、そのメイン市場になると期待していた欧州では、すでにディーゼル離れが顕著。そうこうしているうちに、ルノー・日産とのアライアンス戦略でも電動化に大きくカジが切られて、あえなく……と、エクリプス クロスのディーゼルは悲劇のモデルといってもいい。