やめられない止まらない

本書によれば、ギャンブル依存症の人は、ほとんどと言っていいほど、大勝ちした経験をもっているという。ギャンブルを始めたころに、ビギナーズラックといわれる勝ちを経験し、それが忘れられなくなる。日常生活に不満があればあるほど、あの達成感、勝利感がまた味わいたくなり、深みにはまっていく。

私が初めてフェラーリに乗ったのは、偶然にも日本にスーパーカーブームを巻き起こした漫画『サーキットの狼』の作者・池沢早人師先生の担当者になり、先生から「ちょっと乗ってみる?」と誘ってもらったからだった。この状況は、本書に登場するA君が、友人から「ちょっと行ってみる?」とパチンコに誘われた状況に酷似している。

あの時私は、こんな地をはうホバークラフトみたいな物体を運転するなんて怖すぎる! と思ったが、意を決して運転してみたら、その瞬間に電気が走った。

「こんなモノが世の中にあったのかあぁぁぁぁぁぁぁ!」

これがビギナーズラックでなくてなんだろう。

大勝ちの快感はいまでも続いている。フェラーリでアクセル全開をかまし、あの「クアァァァァァァァァァ~~~~~~ン」という天使のソプラノを聞くと、いまだに全身に電気が走る。そして、ものすごい勝利感に酔いしれる。

なにしろフェラーリだ。クルマの世界にこれ以上の存在はない。地上の頂点である。クルマ好きなら、名前を聞いただけでみんなひれ伏す。頂点を味わって絶頂に達するのだ。こんな大勝ちはほかにない。やめられるはずがない!

自身初めての黄色いフェラーリだったので「バナナっ子」と命名した「フェラーリF355ベルリネッタ」は2009年に購入。1997年モデルで、なぜかアフターファイアが激しくさく裂する個体でした。写真左は中古フェラーリ専門店コーナーストーンズ代表のエノテンこと榎本 修氏。
自身初めての黄色いフェラーリだったので「バナナっ子」と命名した「フェラーリF355ベルリネッタ」は2009年に購入。1997年モデルで、なぜかアフターファイアが激しくさく裂する個体でした。写真左は中古フェラーリ専門店コーナーストーンズ代表のエノテンこと榎本 修氏。拡大
2011年に愛車となった「フェラーリ 512TR」は、「コーンズ・スペチアーレ」なるステキなワインレッドのボディーカラーをまとった車両だった。新規開発のキダスペシャル(マフラー)を装着し、この世のものとも思えぬ快音を響かせた。写真右はおなじみエノテン。
2011年に愛車となった「フェラーリ 512TR」は、「コーンズ・スペチアーレ」なるステキなワインレッドのボディーカラーをまとった車両だった。新規開発のキダスペシャル(マフラー)を装着し、この世のものとも思えぬ快音を響かせた。写真右はおなじみエノテン。拡大
2012年に購入した「フェラーリ458イタリア」。フェラーリ的古典美を受け継ぐモダンアートであり、UFOのごとき操縦性を持つ異次元の宇宙戦艦である。乗り出し2580万円で、この世の極楽浄土を見せてもらった。
2012年に購入した「フェラーリ458イタリア」。フェラーリ的古典美を受け継ぐモダンアートであり、UFOのごとき操縦性を持つ異次元の宇宙戦艦である。乗り出し2580万円で、この世の極楽浄土を見せてもらった。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

フェラーリ 488GTB の中古車
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