供給不足が促すサプライチェーンの見直し

また車載半導体上で動作するソフトウエアの規模も、2000年には200万行程度だったのが、2006年に登場したトヨタの4代目「レクサスLS」で1000万行に達したのが話題になった。それが現在では、高級車ではその10倍の1億行に達し、2025年には自動運転機能を備えた車種で7億行にも達するとみられている。つまり現在のクルマは、“半導体の塊”であるだけでなく“ソフトウエアの塊”になりつつあるのだ。実際、現代のエンジン開発では、ハードウエアの部分にかかる工数(エンジニアの数×時間)よりも、ソフトウエアにかかる工数のほうが多くなっているほどだ。

このように、現代の自動車は“半導体依存”が強まっているわけだが、昨今の事態を受けてサプライチェーンの見直しも始まっている。今回の半導体不足の深刻化は、ここまで説明してきたように米国南部を襲った大寒波や工場の火災といった偶発的な要因によって引き起こされたわけだが、その前から世界の半導体需給の逼迫は起こっていた。その根本的な原因は、最先端の半導体の製造が台湾と韓国に集中していることだ。半導体の世界では開発と製造の分離が進んでおり、スマートフォン用の半導体大手である米クアルコムや、iPhoneやMac向けの半導体を自社開発する米アップルも、製造については台湾のTSMCや韓国サムスン電子に外注している。日本のルネサスもかつては全量を自社生産していたが、現在では外注する製品が増えている。

TSMCは世界最大の半導体製造専門会社であり、こういう業態を「ファウンドリ」と呼ぶのだが、米国では半導体製造で台湾や韓国に依存していることに危機感が強まっている。売り上げで世界最大の半導体メーカーであるインテルは、米国内に新工場を建設し、独立した事業体を設立してファウンドリ事業に本格参入すると発表した。一方でTSMCも生産能力増強のため、2021年は約3兆円もの巨費を投じるという。ただ、これらの投資が実を結ぶのは数年先のことだ。当面は、半導体メーカー各社の生産回復を、完成車メーカーは辛抱強く待つしかない。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=ルネサスエレクトロニクス/編集=堀田剛資)

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