ホンダならではのプロモーション

「スーパーカブCA100」や「ハンターカブCT200」から「CB72/77」や「CL72」まで、1960年代半ばの北米向け二輪ラインナップが勢ぞろいした、アメリカで撮影したと思われる写真に『Litte HONDA』の文字。これは本田技研工業、すなわち日本の本家が販売促進用に制作したソノシート(極めて薄い録音レコード盤)のジャケットである。

収められているのは、ザ・ビーチ・ボーイズのオリジナルと、日本語によるカバーバージョン。編曲:宮川 泰、作詞:安井かずみ、演奏:寺内タケシとブルージーンズという、当時の一流スタッフをそろえた日本語版を歌っているのは、なんとジャニーズ。現在も俳優/歌手として活躍するあおい輝彦ら4人のメンバーからなる歌って踊れるグループで、あのジャニーズ事務所の所属タレント第1号。1964年にレコードデビュー、グループサウンズがブームとなる60年代後半まで高い人気を誇った元祖男性アイドルグループだ。

そして最大の注目ポイントが、当時20代の若さで、女性ながら(ここでは褒め言葉)さっそうと「ロータス・エラン」を走らせていたという安井かずみのペンによる日本語詩。単純な訳詩ではなく、主役をカブから「ホンダのスポーツ」、すなわち四輪の「S600」に差し替えているのだ。それにしたがって、前述したオリジナルでは3段だったギアチェンジの描写が、ちゃんと「トップギア」を加えた4段に改められている。歌詞の内容は、小さいけれど速くてイカしたホンダのスポーツを駆り、あの娘の家までゴー! といったところだ。

この販促用ソノシートのリリース時期はというと、ジャケット内側のブックレット部分に1965年3月発売の「S600クーペ」が新製品として紹介されていることから考えて、同年の春から秋ごろにかけてと推察される。

というわけで、アメリカでカブを歌った『リトル・ホンダ』が、日本では半世紀以上の時を超えて、S600とN-ONEという2台のリトルなホンダ四輪車のプロモーションを彩っているのである。それも遊びごころあふれる、とびきりシャレたセンスで。これもまた「ホンダのDNA」なのだろう。

(文=沼田 亨/写真=本田技研工業、沼田 亨/編集=藤沢 勝)

ホンダが国内向けに作った『リトル・ホンダ』の販促用ソノシートのジャケット。だが北米向け二輪ラインナップをそろえた写真にタイトルは欧文と、国内向けと思わせる要素は皆無。
ホンダが国内向けに作った『リトル・ホンダ』の販促用ソノシートのジャケット。だが北米向け二輪ラインナップをそろえた写真にタイトルは欧文と、国内向けと思わせる要素は皆無。拡大
ジャケットを開くと登場する「S600」をズラリと並べた国内撮影写真。S600はみな「わ」ナンバー付きのホンダ・レンタカーである。コピーは“You meet the nicest people in a HONDA”。二輪ではなく四輪だからか、先に紹介したアメリカン・ホンダのスローガンの“on”を“in”に変えるという芸の細かさ。
ジャケットを開くと登場する「S600」をズラリと並べた国内撮影写真。S600はみな「わ」ナンバー付きのホンダ・レンタカーである。コピーは“You meet the nicest people in a HONDA”。二輪ではなく四輪だからか、先に紹介したアメリカン・ホンダのスローガンの“on”を“in”に変えるという芸の細かさ。拡大
中央のレーベル部分が「S600」のホイールを模しているという、凝ったディテールのソノシート。ちなみに当時の日本では、ザ・ビーチ・ボーイズはあまり人気がなかった。そのためリアルタイムでの日本語カバー盤は非売品だったこのソノシートのみで、日本ポップス史上においても貴重なアイテムなのだそうだ。
中央のレーベル部分が「S600」のホイールを模しているという、凝ったディテールのソノシート。ちなみに当時の日本では、ザ・ビーチ・ボーイズはあまり人気がなかった。そのためリアルタイムでの日本語カバー盤は非売品だったこのソノシートのみで、日本ポップス史上においても貴重なアイテムなのだそうだ。拡大
ホンダ N-ONE の中古車
あなたにおすすめの記事
関連記事
  • 第157回:涅槃だぜN-WGN! 2020.1.7 カーマニア人間国宝への道 清水草一の話題の連載。第157回は「涅槃だぜN-WGN!」。2019年の注目モデルを前に、国民車構想が再燃。新型「ホンダN-WGN」は、カーマニアが求める国民車になれるか? ディーラーでのプチ試乗を通じて導き出した、その答えとは?
  • ホンダN-WGNカスタムL・ターボ Honda SENSING(FF/CVT)【試乗記】 2019.11.12 試乗記 新型「N-WGN」の仕上がりにはスキがない。さすが軽自動車市場を席巻するホンダの最新作といえる仕上がりだ。クルマの出来栄えをリポートするとともに、ヒット作ばかりの「N」シリーズを生み出す、ホンダのクルマづくり・人づくりの最前線を紹介する。
  • ホンダN-WGN/N-WGNカスタム 2019.7.18 画像・写真 ホンダから軽ハイトワゴンの新型「N-WGN」が登場。2代目となる新型は、より生活に寄り添うクルマとなるべくすべてを刷新。シンプルさを重視したエクステリアや、日々快適に使えることを重視したインテリアが特徴となっている。その詳細な姿を写真で紹介する。
  • 「ホンダe」と「ホンダN-ONE」がベース レーシーな新型コンセプトカー登場 2021.4.16 自動車ニュース ホンダアクセスは2021年4月16日、モータースポーツをイメージした2種類の新型コンセプトカー「e-DRAG」「K-CLIMB」を東京・青山の「Hondaウエルカムプラザ青山」に展示すると発表した。
  • 三菱が「ミラージュ」にブラックのアクセントで内外装を仕立てた特別仕様車を再設定 2021.4.15 自動車ニュース 三菱自動車は2021年4月15日、コンパクトカー「ミラージュ」に特別仕様車「BLACK Edition(ブラックエディション)」を設定し、同日、販売を開始した。内外装に加えられたブラックのアクセントが特徴となる。
ホームへ戻る