ナビにバスタオルをかぶせる

父が「ソアラ」からプログレに買い替えると決めた時、私は純正ナビと「レーダークルーズコントロール」の装着を勧めた。それらは当時、極めて先進的な装備だった。

しかし、父がそれを使いこなすことはなかった。いや、父にとっては凶器ですらあった。

両親がプログレに乗り、ゴルフに向かった時のこと。ナビの設定がうまくいかないまま出発すると、ナビが発狂したという。

母:高速道路を走っている間もずーっと、左へ行け左へ行けって狂ったみたいに言い続けて、お父さんが「おかーちゃん、これなんとかしてくれー!!」って言うから、私、バスタオルかぶせたのよ~!

バスタオルをかぶせても、ナビが黙ることはなかったという。

以来両親は、一度たりともナビを開けなかった(当時はモニター格納式でした)。もちろんレーダークルーズコントロールなんか一度も使わなかった。それを聞いて私は、心から申し訳なく思った。

思えば自分も、あの時の両親の年齢にかなり近づいている。

私は新型Sクラスを走らせながら、20年と少し前のプログレ発狂事件を思い出し、しんみりと温かい気持ちになったのだった。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

かつて父が「ソアラ」から乗り換えた「プログレ」。購入時によかれと思って、当時最新であった純正ナビと「レーダークルーズコントロール」の装着を勧めたのだが……。
かつて父が「ソアラ」から乗り換えた「プログレ」。購入時によかれと思って、当時最新であった純正ナビと「レーダークルーズコントロール」の装着を勧めたのだが……。拡大
「プログレ」のインテリア。ダッシュボード中央上部に配置されたオプションのカーナビは、チルトスイッチによってモニターを格納することが可能であった。
「プログレ」のインテリア。ダッシュボード中央上部に配置されたオプションのカーナビは、チルトスイッチによってモニターを格納することが可能であった。拡大
最新のデジタル技術が惜しみなく採用された新型「Sクラス」に乗り、まさか20年と少し前のプログレ発狂事件を思い出すとは。私も当時の父の年齢に近づきつつある。
最新のデジタル技術が惜しみなく採用された新型「Sクラス」に乗り、まさか20年と少し前のプログレ発狂事件を思い出すとは。私も当時の父の年齢に近づきつつある。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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