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メガーヌR.S.とGRヤリスを乗り比べる

ほとばしる情熱 2021.06.07 実力検証! “最旬”2台のホットハッチ<AD> クルマの電動化が進む一方で、われわれはまだ、純粋にドライビングプレジャーを味わえるモデルを選ぶことができる。今回は、その最右翼ともいえる日仏2台の高性能ハッチバックをワインディングロードに連れ出し、それぞれの魅力を探った。

今となっては貴重な存在

昨今、クローズアップされる環境問題や人口構成の変化、そこに各種規制の強化等も重なり、われわれが知るクルマのあり方は大きく変わろうとしている。

とりわけクルマ好きにとって象徴的なのは、アフォーダブルなスポーツカーを成立させることが非常に難しくなっていることだ。「トヨタ86/スバルBRZ」や「マツダ・ロードスター」のようなモデルがある日本はかなり恵まれているほうで、世界に目を向けるとスポーツカーは大半が四桁万円からの嗜好(しこう)品になりつつあると言っても大げさではない。

一方で、日常使いとドライビングプレジャーとを両立できることが魅力のホットハッチは、その穴を埋めるように能力を高め、なかには下手なスポーツカーではかなわないほどのパフォーマンスを内包するものも登場している。今回ピックアップした2台は、まさにそれを体現したものといえるだろう。

2004年から「ルノー・メガーヌ」に設定されている「ルノー・スポール(R.S.)」は、日本におけるルノーの付加価値を「カングー」とともにつくり上げてきたモデルだ。しかもそれはインポーターによって強引にしつらえられたイメージではない。カングーであれば乗り心地の良さ、メガーヌR.S.であればハンドリングと、走りの味わいを好き者が支持し、その輪がじわじわと広がってできたものだ。

→「ルノー・メガーヌR.S.トロフィー」の詳しい情報はこちら

「メガーヌR.S.トロフィー」(写真左)と「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」(同右)。今回は、クルマ好きの注目を集める2台のホットハッチに試乗し、それぞれの走りの特徴を浮き彫りにした。
「メガーヌR.S.トロフィー」(写真左)と「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」(同右)。今回は、クルマ好きの注目を集める2台のホットハッチに試乗し、それぞれの走りの特徴を浮き彫りにした。拡大
「メガーヌR.S.トロフィー」の前席。アルカンターラ仕立てのフルバケットタイプとなっている。
「メガーヌR.S.トロフィー」の前席。アルカンターラ仕立てのフルバケットタイプとなっている。拡大
「メガーヌR.S.トロフィー」の内外装には、開発を担うルノー・スポールのロゴが多数見られる。写真はフロントフェンダー部のもの。
「メガーヌR.S.トロフィー」の内外装には、開発を担うルノー・スポールのロゴが多数見られる。写真はフロントフェンダー部のもの。拡大
世界屈指のスプリンターとして知られるFF車、「メガーヌR.S.トロフィー」。2021年3月には、その改良型が国内で発売された。
世界屈指のスプリンターとして知られるFF車、「メガーヌR.S.トロフィー」。2021年3月には、その改良型が国内で発売された。拡大

完全武装の「メガーヌR.S.トロフィー」

現行メガーヌR.S.でもその力点はシャシーセットアップにあると思う。ニュルブルクリンクで最速を競った「ホンダ・シビック タイプR」にも採用された「ダブルアクスルストラットシステム(DASS)」は、ルノーが初代メガーヌR.S.から採用してきたアイデアで、別体アクスルをストラットの外側に配置することでキングピンオフセット量を減らし、タイヤをきれいに路面に当てて正確な操舵性を実現するとともにトルクステアを低減させるものだ。

現行型ではこれに加えて「ハイドロリックコンプレッションコントロール(HCC)」を各輪に採用。通常の油圧ダンパーの中にセカンダリーとして働くヘルパー的なダンパーを内包したような設計のこれは、バンプタッチに該当するような大入力時の特性を穏やかにしてバネ下の接地環境を整えるだけでなく、乗り心地の面でも効果を発揮するという。

さらにこちらも乗り心地に好影響をもたらしているであろうメカニズムが「4コントロール」、すなわち4WSだ。同相1度、逆相2.7度の後軸側操舵量は車速に連動しており、ドライブモードをレースにすれば100km/hを、それ以外では60km/hを境に切り替わる。ざっくり言えば、レースモードは曲がり重視の設定というわけだ。とどめに標準モデルでは電子制御を用いたブレーキングLSDが、今回試乗した「R.S.トロフィー」ではメカニカルなトルセンLSDが内蔵され、旋回性能を駆動側からも増強している。

→「ルノー・メガーヌR.S.トロフィー」の詳しい情報はこちら

「DASS」と呼ばれる改良型マクファーソンストラット式フロントサスペンションを採用した「メガーヌ R.S.」。これにより、ハイパワーなFF車に顕著なトルクステアも抑えられている。
「DASS」と呼ばれる改良型マクファーソンストラット式フロントサスペンションを採用した「メガーヌ R.S.」。これにより、ハイパワーなFF車に顕著なトルクステアも抑えられている。拡大
マイナーチェンジを機に、「メガーヌR.S.トロフィー」のMTモデルには、ATモデルと同様にローンチコントロール機能が搭載された。写真は、筆者がその効果を確かめているシーン。
マイナーチェンジを機に、「メガーヌR.S.トロフィー」のMTモデルには、ATモデルと同様にローンチコントロール機能が搭載された。写真は、筆者がその効果を確かめているシーン。拡大
「メガーヌR.S.」の4輪操舵システム「4コントロール」は、優れた旋回性と走行安定性を両立させる。写真はBピラー部に添えられたエンブレム。
「メガーヌR.S.」の4輪操舵システム「4コントロール」は、優れた旋回性と走行安定性を両立させる。写真はBピラー部に添えられたエンブレム。拡大
ルノーとトヨタの並々ならぬ情熱から生まれた2台の高性能ハッチバック。こうしたモデルを比べて選べるというのは、クルマ好きにとっては幸運なことだろう。
ルノーとトヨタの並々ならぬ情熱から生まれた2台の高性能ハッチバック。こうしたモデルを比べて選べるというのは、クルマ好きにとっては幸運なことだろう。拡大

「GRヤリス」はオーセンティック

持てる技術をこれでもかと積み増しながら進化を続けてきたメガーヌR.S.に対して、日本の最新のホットハッチでもある「トヨタGRヤリス」は、中身に驚くような飛び道具はない。サスはストラット&ダブルウイッシュボーンでダンパーは一般的な固定レートのモノチューブ、4WDも油圧多板クラッチを電子制御するものの、前後駆動配分は3パターンの固定式と、ハイテク的な要素は皆無だ。

そのぶん……というわけでもなかろうが、同じ実用的なハッチバックをベースとしながらGRヤリスはボディーへの手の加わりようは相当なものだ。剛性向上のために2ドア化、さらに空力特性向上のために容赦なくそのルーフをカットしてパネルには軽量なアルミ材やカーボン材を使用、ワイドトレッド化のためにたけだけしく拡幅されたそのたたずまいは、勝つためにはなりふり構わぬホモロゲーションモデルならではの風格だ。軽量化、低重心化、高剛性化を徹底的に突き詰める。ドライバーの意思を忠実に反映するために可変要因はことごとくつぶす……と、基本を愚直に追いかけている。

このバンカラな姿勢は走りにも表れていて、試乗車「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のドライブフィールは、車格やブランドのイメージとは一線を画するガチッと手応えあるものに仕上がっていた。ドライブモードによる駆動配分の違いはしっかりと実感でき、30:70となるスポーツモードでのハンドリングは、後輪の駆動が旋回感にも確実に反映された楽しいものであるのに対して、50:50のトラックモードでのハンドリングは徹底的にニュートラル指向だ。腕っぷしでねじ伏せるほどの力は要さずとも、路面からのフィードバックは隠さず余さず、ずっしりとドライバーに伝わってくる。

アクセル操作に対してのツキの良さは、競技前提で設定されたであろう1.6リッターの排気量を感じさせないものだ。多用する低~中回転域のトルクの乗りを重視して採用したとおぼしき3気筒のメリットがしっかりと感じられる。高回転域はレッドゾーンの7200rpmまで無理なく素直に吹け上がり、パワーの急なドロップ感もない。エキゾーストサウンドは3気筒のそれだが、回すほどに高まるメカノイズは、いかにもきっちり組み上げられたムービングパーツが精緻に動いているという印象で、いいモノ感という点で言えば、「日産GT-R」や「ホンダNSX」のそれと近い質感がある。

操作に対する応答は、鏡を見ているように忠実だ。盤石の安定性のおかげで、自分のドライビングをいかようにも映し出せる。それを分析しながらさらなる速さを目指す、そういう頭脳的なドライビングの楽しみがGRヤリスにはある。

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WRC(世界ラリー選手権)への参戦まで視野に入れ、専用のボディー&シャシーが与えられた「GRヤリス」。「ヤリス」とはもはや別モノといっていい。
WRC(世界ラリー選手権)への参戦まで視野に入れ、専用のボディー&シャシーが与えられた「GRヤリス」。「ヤリス」とはもはや別モノといっていい。拡大
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のプレミアムスポーツシート。ホールド性だけでなく質感の高さも追求されている。
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のプレミアムスポーツシート。ホールド性だけでなく質感の高さも追求されている。拡大
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のトランスミッションは、6段MTのみ。シフトレバーの前方には、走行モードのセレクターがレイアウトされる。
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のトランスミッションは、6段MTのみ。シフトレバーの前方には、走行モードのセレクターがレイアウトされる。拡大
写真のBBS製鍛造ホイールは、「GRヤリス」のなかでも「RZ“ハイパフォーマンス”」だけの専用装備。日本刀をモチーフにデザインされている。
写真のBBS製鍛造ホイールは、「GRヤリス」のなかでも「RZ“ハイパフォーマンス”」だけの専用装備。日本刀をモチーフにデザインされている。拡大
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のパワフルな1.6リッター直3ターボエンジンは、ワインディングロードの上りでも不足を感じさせることはない。
「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”」のパワフルな1.6リッター直3ターボエンジンは、ワインディングロードの上りでも不足を感じさせることはない。拡大
ひと口にホットハッチといっても、両モデルの速さへのアプローチは極めて対照的だった。
ひと口にホットハッチといっても、両モデルの速さへのアプローチは極めて対照的だった。拡大

FFとは思えぬ旋回能力

「FFニュル最速」という触れ込みから覚悟するのは平時の粗い乗り味。が、メガーヌR.S.はその想像をあっさりと覆す。試乗したのは最もスポーティーなシャシーカップを採用するトロフィーだが、それでも路面へのアタリは丸く、目地段差などの凹凸の乗り越えもしっとりと柔らかい。さすがに目に見えるような大きなギャップでは鈍い突き上げとともに車体は揺すられるが、それさえも動きにおおらかさが感じられる。

ロール方向のトラベルを金物を締め上げて封じ込めずとも4コントロールによって十分な旋回力が得られること、加えて4HCCのおかげでストローク限界付近の応答が穏やかになっていること、その両面がうまく表れているのだろう。これより一段レートが緩いシャシースポールを採用する標準モデルのメガーヌR.S.なら、ファミリーカー用途も賄える快適性を備えているだろう。ちなみに直近のマイナーチェンジでは、標準モデルの最高出力はトロフィーと同じ300PSに高められている。

ハンドリングのシャープネスはホットハッチでも屈指だ。FFにして操舵ラグもなく、ノーズはグングンとインに入り込む。際限なく曲がり込んでいくかのような挙動はちょっと戸惑うほどだが、慣れるとその鋭さが楽しさに変わってくる。この応答性の高さ、そしてゲインの高さに負けず後輪側がしっかり追従して踏ん張っていくあたりも、まさに4コントロールの恩恵といえるだろう。旋回能力はすこぶる高く、限界点は公道の範疇(はんちゅう)には収まらないが、それでもワインディングロードを走ることが退屈にならないのは、サスの動きが伸びやかでクルマの挙動が冗舌に現れるからかもしれない。そのあたりがやはりルノーらしいというか、フランスの出自が感じられる。

メガーヌR.S.とGRヤリス、同じホットハッチでありながらセグメントも駆動方式も異なるものの、共通しているのはエンジニアたちが試行錯誤を繰り返し、自ら走り込み楽しみながらクルマを磨き上げていったという開発背景が、乗ってみるとしっかり伝わってくることだ。たとえ飛ばさずとも、インターフェイスの手応えやシートのフィット感ひとつからも、好き者が考え抜いてしつらえたのだなということが受け止められる。今やクルマはどれに誰が乗っても普通に走り曲がり止まってくれる、それほどそつのないものになったと思う一方で、こういった動的な充実感を与えてくれるクルマに乗れる機会は、やはりこの先そうあるものではないのかなとも思う。

(文=渡辺敏史/写真=田村 弥)

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「メガーヌR.S.トロフィー」に採用されている「4HCC」は、ダンパー底部に内蔵したセカンダリーダンパーの働きにより、路面との接地性を最大限に高める。
「メガーヌR.S.トロフィー」に採用されている「4HCC」は、ダンパー底部に内蔵したセカンダリーダンパーの働きにより、路面との接地性を最大限に高める。拡大
「メガーヌR.S.トロフィー」のメーターパネルは液晶タイプ。走行モードの切り替えに合わせてグラフィックが変化する。
「メガーヌR.S.トロフィー」のメーターパネルは液晶タイプ。走行モードの切り替えに合わせてグラフィックが変化する。拡大
「メガーヌR.S.トロフィー」の1.8リッター直4エンジン。小径タービンのターボを採用することで、優れたアクセルレスポンスを実現している。
「メガーヌR.S.トロフィー」の1.8リッター直4エンジン。小径タービンのターボを採用することで、優れたアクセルレスポンスを実現している。拡大
FF車としては極めて高い旋回能力を持つ「メガーヌR.S.トロフィー」。その鋭さはやがて楽しさに変わっていく。
FF車としては極めて高い旋回能力を持つ「メガーヌR.S.トロフィー」。その鋭さはやがて楽しさに変わっていく。拡大
「メガーヌR.S.トロフィー」には、レッドの差し色が鮮やかな19インチアロイホイールが装着される。
「メガーヌR.S.トロフィー」には、レッドの差し色が鮮やかな19インチアロイホイールが装着される。拡大
駆動方式やエンジン形式などメカニズムには違いのある2台だが、ともに、つくり手の情熱が伝わる熱い走りを存分に味わわせてくれる。
駆動方式やエンジン形式などメカニズムには違いのある2台だが、ともに、つくり手の情熱が伝わる熱い走りを存分に味わわせてくれる。拡大
ルノー・メガーヌ ルノー・スポール トロフィーMT
ルノー・メガーヌ ルノー・スポール トロフィーMT拡大
ブラック基調でまとめられたインテリア。マイナーチェンジを機に、運転支援システムの充実も図られている。
ブラック基調でまとめられたインテリア。マイナーチェンジを機に、運転支援システムの充実も図られている。拡大
 
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車両データ

ルノー・メガーヌ ルノー・スポール トロフィーMT

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1875×1465mm
ホイールベース:2670mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:300PS(221kW)/6000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3200rpm
タイヤ:(前)245/35R19 93Y/(後)245/35R19 93Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード)
価格:494万円

トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”
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1.6リッターの直列3気筒ターボエンジン。ピストンやカムシャフト、クランクシャフトなどを軽量化することで、レスポンスの良さが追求されている。
1.6リッターの直列3気筒ターボエンジン。ピストンやカムシャフト、クランクシャフトなどを軽量化することで、レスポンスの良さが追求されている。拡大
 
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トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:1290kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:272PS(200kW)/6500rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/3000-4600rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92Y XL/(後)225/40ZR18 92Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:13.6km/リッター(WLTCモード)
価格:456万円