テスラが先行する統合ECUの導入

こうした統合ECUをどのような構成にするか、実はまだ業界全体での方向性は定まっていない。究極の姿としては、1台のクルマを1台の巨大なコンピューターで制御するというものがある。例えばスマートフォンは、搭載しているコンピューター(スマホではSoC<System on Chip>と呼ぶことが多い)は1台だけで、それで多くのアプリを処理する。これと同じように、エンジン制御やブレーキ制御、モーター制御、果てはコックピットの表示まで、すべての機能をソフトウエアとして1台のコンピューターに搭載しようというものだ。

実際にこの“究極の姿”を実現した完成車メーカーはないが、近い考え方のECUを実用化しているのが米テスラだ。テスラはECUを大きく3つに集約し、それぞれを「フロントボディーコントローラー」「レフトボディーコントローラー」「ライトボディーコントローラー」と呼んでいる。例えば「フロントボディーコントローラー」にはABSや冷却ポンプ、コックピット、ワイパー、パワーステアリングなどを制御する機能が集約されている。

驚くのは、パワーウィンドウのECUやパワーシートのECUなど、「こんなものまで?」と思うような細かい機能を担当するECUも、統合ECUに集約していることだ。通常なら個別のECUが、パワーウィンドウを駆動するモーター、パワーシートを駆動するモーターの近くに、それぞれ搭載されていることが多い。

ただし、テスラの統合ECUの場合は、先に説明したように巨大なひとつのコンピューターがあらゆる機能を制御しているわけではなく、多数のECUをひとつのプリント基板上に集約しているにすぎない。物理的には統合されているが、機能的には独立している。それでも、多くのECUの機能を少数の基板に集約しているという点で、テスラは業界の先頭を走っている。

「テスラ・モデル3」に搭載されている「フロントボディーコントローラー」。(写真:筆者撮影)
「テスラ・モデル3」に搭載されている「フロントボディーコントローラー」。(写真:筆者撮影)拡大
鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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