さらなるプレミアム化をユーザーは受け入れるか

こうした“力ずく”の印象は、自動運転においても同様だ。ボルボは2022年に発売する「XC90」の後継モデル(もちろんEV)に、米Luminar(ルミナー)のLiDAR(ライダー)と、米NVIDIA(エヌビディア)の高速半導体「DRIVE Orin」を搭載した自律走行用のスーパーコンピューターを、標準装備するとしている。

いずれもパフォーマンスの高さが特徴で、通常のLiDARがレーザーの発光素子や受光素子にシリコン系の材料を使用しているのに対し、ルミナーのLiDARは高性能化のため、そこに高コストな化合物半導体を使う。Drive Orinも1秒間に254兆回もの計算をこなす最新の半導体であり、レベル3~4の自動運転を実現できる能力を備えているという。ただ高性能なだけに、高コストで消費電力も多いと見られている。

ここまで高性能なセンサーや半導体を積むと表明している完成車メーカーは、現在のところボルボだけだ。つまり、彼らの次世代戦略は自動運転技術の分野でも“力ずく”な印象が強いのである。こうした物量作戦に依存した問題解決は、コスト増となって商品に反映されるはずだ。

現在のXC90の価格は、日本向けのプラグインハイブリッド仕様で1139万円とすでに十分高価だが、純EVとなり、しかも高性能なセンサーや半導体を積んだ後継車種では、さらに大幅な高額化が避けられない。ダイムラーが今夏に発売するという最高級EV「EQS」の価格は、欧州では1500万円程度になると予想されている。ここまでのボルボの発表に従えば、XC90の後継車種もこれに近い水準になることだろう。つまりボルボは、EV化によってメルセデス・ベンツ並みのプレミアムブランドになるということだ。それをユーザーが受け入れるかどうか。同社にとっても大きな賭けであるのは間違いない。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=ボルボ・カーズ、ルノー、フォルクスワーゲン、マツダ、ダイムラー/編集=堀田剛資)

ボルボの次世代EVには、NVIDIAの高性能半導体と、Luminarの高性能LiDARが搭載される。
ボルボの次世代EVには、NVIDIAの高性能半導体と、Luminarの高性能LiDARが搭載される。拡大
ボルボの最上級SUV「XC90」。同社の次世代EV製品群は、まずはXC90の後継モデルから登場するとされている。
ボルボの最上級SUV「XC90」。同社の次世代EV製品群は、まずはXC90の後継モデルから登場するとされている。拡大
メルセデス・ベンツが発売を予定している最高級EV「EQS」。バッテリー容量は107.8kWhで、WLTP計測による走行可能距離は770kmとされている。
メルセデス・ベンツが発売を予定している最高級EV「EQS」。バッテリー容量は107.8kWhで、WLTP計測による走行可能距離は770kmとされている。拡大
EV技術と自動運転技術の双方において高い志を示すボルボだが、それを実現するとなると、製品の高価格化は避けられない。同社の次世代戦略の成否は、ブランドのプレミアム化をユーザーが受け入れるかどうかにもかかっているのだ。
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鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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