バッテリー戦略には疑問あり

一方、今回のルノーの発表で筆者が疑問を抱いたのは、要素技術についてだった。

まずバッテリーは、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)を正極活物質として使うタイプのリチウムイオン電池を主力とするようだ。さらにこのバッテリーの形状を標準化し、それですべてのセグメントをカバーするという。2030年には、実に100万台に達するルノー・日産・三菱グループのEVに、このバッテリーが搭載される見込みだ。

確かに、この材料系はバッテリーのエネルギー密度を高めるのに有利で、ルノーも「走行距離当たりのコスト」で競争力が高いと主張している。ただし、ニッケルやコバルトは供給不足や資源枯渇が懸念される希少材料であり、米テスラのように、コバルトを使わないバッテリーを発表した企業もあるのだ。今後10年を見通す戦略においてNMCバッテリーを主力に据えるというルノーの姿勢には、いささか不安を感じる。もっとも、今回の発表ではバッテリーのリサイクルにも力を入れることが表明されたので、そこに期待しているのかもしれない。

続いてはモーター技術に関する戦略だが、今回の発表でルノーは、2つのタイプのモーターを使っていくことを明らかにした。ひとつは小型EVのゾエに採用している、「EESM(Electrically Excited Synchronous Motor)」と呼ばれる独自構造のモーターだ。EESMは今日のEVで主流となっている希土類永久磁石をローターに搭載するタイプとは異なり、希土類磁石を使用しない点に特徴がある。ただ最高効率の点で永久磁石モーターに劣るため、多くのメーカーは永久磁石式モーターを主力に据えているのだ。一方で、永久磁石モーターにも、高回転になるとモーター自身が発電機となって逆起電力(駆動電流とは逆の向きの電力)を発生し、効率が低下するという難点がある。この問題がEESMには発生しないため、特に欧州のような高速走行が多い地域では、EESMのほうが実用的な効率は高いとルノーは主張する。

今後、ルノーは2024年からEESMに新しい技術的改善を組み込み、効率を向上させる計画を立てている。このモーターが彼らのもくろみ通りに競争力を発揮できるかは、同社の電動化戦略における注目点のひとつと言っていいだろう。

EV用バッテリーについては、ルノー・日産・三菱グループ全体で標準化を推進。2030年には標準バッテリー搭載車種の販売台数が100万台に達するという。
EV用バッテリーについては、ルノー・日産・三菱グループ全体で標準化を推進。2030年には標準バッテリー搭載車種の販売台数が100万台に達するという。拡大
今日のEVで主流となっているリチウムイオンバッテリーには、ニッケルやコバルトなどが使用されており、将来的な資源の枯渇が懸念されている。そこで米テスラは、コバルトを使わないバッテリーの実用化を進めている。
今日のEVで主流となっているリチウムイオンバッテリーには、ニッケルやコバルトなどが使用されており、将来的な資源の枯渇が懸念されている。そこで米テスラは、コバルトを使わないバッテリーの実用化を進めている。拡大
EVコンパクトカー「ルノー・ゾエ」のパワートレイン。モーターには希土類磁石を使わない独自構造の「EESM」が採用されている。
EVコンパクトカー「ルノー・ゾエ」のパワートレイン。モーターには希土類磁石を使わない独自構造の「EESM」が採用されている。拡大
ルノーいわく、高速走行を多用する欧州などでは、通常のEV用モーターより「EESM」のほうが効率がいいとのこと。その進化に注目である。
ルノーいわく、高速走行を多用する欧州などでは、通常のEV用モーターより「EESM」のほうが効率がいいとのこと。その進化に注目である。拡大
鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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