クリニックにも威力

このVRツールには、どのようなメリットがあるのか? すでに記した内容と一部重複するが、そのいくつかを以下に記そう。

第1は、開発期間と投資の削減である。物理的モックアップの製作を最小限に抑えることにより、市場投入までの時間を大幅に短縮できる。

完全自動運転車時代の多彩なシートアレンジはもとより、クルマ以外のレイアウトにも対応可能とピッチョーニさんは胸を張る。

第2は、同じ設備を持つ遠隔地のスタジオとリアルタイムで検討したり、共同作業が可能であったりすることだ。筆者が付け加えれば、高速・低遅延の5G通信は当然のことながら大きな力となるだろう。

そして第3はベンチマーク、つまり目標とする他社モデルのデータをインプットすることにより、比較がより容易になることだ。その分析処理の高速化も図れる。

筆者の想像であるが、眼科における「こちらのレンズとこちらのレンズ、どちらがよく見えますか?」という検眼と同じような感覚で、2車を比較することが可能になるのだろう。

イタルデザインが研究を進めるこの仮想ツールが、自動車開発のクリニックに導入されるようになれば、より多くのユーザーが参加できるようになるに違いない。結果として、より消費者の意向に沿った製品が、より早く市場に出回るようになれば、自動車業界全体に貢献することになる。そして、いつか筆者も念願のクリニックに参加できるかもしれないと、淡い期待を寄せたのだった。

ところで、小学生のときに開発に参画したあの思い出のスナックは、その後どのような商品となって市場に送り出されたのだろうか。

【イタルデザインのインテリアシミュレーターを体感】

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Italdesign、Akio Lorenzo OYA/編集=藤沢 勝)

筆者もシミュレーターを体験。その日は「日産GT-R50 by Italdesign」のコックピットが再現されていた。
筆者もシミュレーターを体験。その日は「日産GT-R50 by Italdesign」のコックピットが再現されていた。拡大
画面上の手は、両手の指の動きを忠実に再現し、バーチャルのスイッチ類を操作するたびに音と触覚によるフィードバックがある。
画面上の手は、両手の指の動きを忠実に再現し、バーチャルのスイッチ類を操作するたびに音と触覚によるフィードバックがある。拡大
左上に見えるのが赤外線カメラ。このシミュレーターは、より正確かつ迅速な自動車開発のクリニックを実現することだろう。(写真=Italdesign)
左上に見えるのが赤外線カメラ。このシミュレーターは、より正確かつ迅速な自動車開発のクリニックを実現することだろう。(写真=Italdesign)拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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