アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2ターボ ディーゼルQ4ヴェローチェ
今まさに熟成の域 2021.08.31 進化する情熱 アルファ・ロメオ・ステルヴィオ<AD> パワフルなディーゼルエンジンを搭載した「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」の新グレード「ヴェローチェ」。その伝統のモデル名が示すパフォーマンスと進化を、ロングドライブで確かめた。よりスポーティーに進化
名は体を表すというが、このクルマの名はドライバーが走らせて最も魅力を感じるステージを表している。イタリアとスイス国境のアルプスにあるステルヴィオ峠は典型的なつづら折れのワインディングロードだ。標高2757m。北東と南西のどちらの麓から頂上を目指しても、短い直線とヘアピンカーブが20km以上連続する。おまけに道幅が狭く、すれ違いには緊張する。ハンドリングがよいクルマでないと楽しめないのはもちろん、平均斜度が7%を超えているため、パワーがないと話にならない。
過去にいくつもの素晴らしいスポーティーモデルを生み出してきたアルファ・ロメオが、初めて開発したSUVにその名をつけると聞いたとき、その大切な名前をスポーツカーにとっておかなくて大丈夫か? と心配したが、発売後に自らステルヴィオのステアリングを握り、実際にステルヴィオ峠を走ってみて、即座に納得したことを覚えている。
2021年7月、ステルヴィオに新グレードのヴェローチェが設定された。ボディーパネルなどに変更があったわけではないのにこれまでと印象が異なるのは、従来ブラックだったホイールアーチ、サイドスカート、リアバンパーがボディー同色となったからだろう。ダークエキゾーストパイプフィニッシャーがリアスタイルをぐっと引き締めている。
ヴェローチェには2リッター直4ガソリンターボモデルもあるが、今回試乗したのは2.2リッター直4ディーゼルターボモデルのほう。アルファ・ロメオのディーゼルは国内外さまざまなメーカーがラインナップする4気筒ディーゼルのなかで最もスポーティーな部類に入る。
ディーゼルのオーソリティー
とかく重くなりがちなディーゼルエンジンだが、アルファ・ロメオは可能な限りガソリンエンジンとパーツを共用し、アルミブロックや中空カムシャフトを採用するなどしてエンジンの単体重量を155kgに抑えた。険しいステルヴィオ峠をものともしない走りに、軽量化は必須の要素である。
1250rpmで300N・m以上、1750rpmで最大トルクの470N・mを発生する特性は、常用域で生き生きとした挙動を見せる。発進加速でも中間加速でも、アクセル操作に対しエンジンが即座に反応するのが心地よい。
しかも、そうした低回転域で力強いだけではなく、3500rpmで4気筒ディーゼルとしてトップクラスの最高出力210PSに達する。このエンジンは低回転域から高回転域まで捨てるところがない。スタイリングやパフォーマンスにおいて情緒的、官能的として知られるアルファ・ロメオだが、特にパフォーマンス面での人々のそうした印象は、彼らの高い技術力によって維持されている。
例えば現代のディーゼルエンジンに不可欠のコモンレール式燃料噴射はアルファ・ロメオが最初に実用化した技術だ。今ではほぼすべてのディーゼル乗用車が採用する。彼らの高い技術力がブランド創設期から取り組むモータースポーツ由来であることは、数々の輝かしい実績を見ればわかる。現在のF1参戦で得たノウハウも、いつの日かロードカーにフィードバックされるのではないか。
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充実した運転支援システム
ステルヴィオの軽やかなハンドリングは、わざわざ峠まで行かずとも、街なかの交差点や高速道路のランプなどでも十分に体感することができる。
前述したエンジンの軽量化だけでそれを実現しているわけではなく、50:50と理想的な前後重量配分や12:1というクイックなステアリングギア比、通常は後車軸に100%のトルクを配分し、状況に応じて前車軸に最大50%までを配分する電子制御式4輪駆動システム「Q4」などによる効果も小さくない。
わずかな操作で狙ったラインをトレースすることができ、右へ左へと連続的にステアリングを切ってもボディーのロール量は少ない。SUVにありがちな重心の高さを感じさせないのはさすがだ。
今回、やや久しぶりにステルヴィオを試してみて、ADAS(先進運転支援システム)の充実ぶりに驚かされた。ACC(アダプティブクルーズコントロール)に、ドライバーが車両を車線中央に維持するのを積極的にアシストしてくれるHAS(ハイウェイアシストシステム)が追加されていた。もとより備わっていたLKA(レーンキーピングアシスト)との組み合わせにより、高速走行時の安心感と安楽性が格段に向上した。
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快適性の向上も注目のポイント
さらに、渋滞時に車間調整の自動化と車線維持の支援を行うTJA(トラフィックジャムアシスト)や道路脇の速度標識を読み取ってメーター内に表示するTSR(トラフィックサインレコグニション)、TSRが検知した制限速度に応じてACCの速度設定を素早く切り替えられるISC(インテリジェントスピードコントロール)などの支援機能が一気に備わっていた。
そのほとんどを適度に混雑した首都高で体験してみたが、直感的操作が可能で使いやすく、動作精度も高く安心感があった。イタリア車がこうした分野の充実にやや消極的というのが、完全に古い考えだということを思い知らされた。
インフォテインメント性についても同様。8.8インチタッチディスプレイが採用されたのに加え、以前から備わるApple CarPlayやAndroid Autoによるスマートフォンのナビアプリ利用に加え、ナビゲーションシステムも採用されるなど、機能が大幅に充実した。ワイヤレスチャージングパッドも備わる。
実用的なSUVに、官能的なスタイリングや力強いエンジン、それに軽やかなハンドリングなど、アルファ・ロメオが伝統的に得意とする魅力を盛り込んだステルヴィオは、最先端のADASや使いやすいインフォテインメントシステムを得て、今まさに熟成の域に達したといえる。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎)
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車両データ
アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2ターボ ディーゼルQ4ヴェローチェ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
ホイールベース:2820mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:210PS(154kW)/3500rpm
最大トルク:470N・m(47.9kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105V/(後)255/45R20 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:16.0km/リッター(WLTCモード)
価格:687万円