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ランドローバー・ディフェンダー110 X D300(4WD/8AT)

エクストリーム系が似合う 2021.09.03 試乗記 佐野 弘宗 「ランドローバー・ディフェンダー110」の最上級ディーゼルモデル「X D300」に試乗。悪路をものともしないタフなパフォーマンスと、ラグジュアリーモデルもかくやという内外装の組み合わせは、果たしてドライバーをどんな世界にいざなってくれるのか。

パンチのきいた価格設定

日本でもバカ売れ中のディフェンダーは、2020年夏の上陸当初は2リッター4気筒ガソリンターボを積むロングホイールベースの「110」のみだったが、その後じわじわと増殖している。2021年夏には3ドアのショートホイールベース版となる「90」のデリバリーが開始されて、2021年モデルとして追加された3リッター直列6気筒ディーゼルも日本で走りだした。また、この2021年6月に受注開始となった2022年モデルからは、内外装備を盛った上級の「X」系グレードが90でも手に入るようになった。

今回の試乗車は110の最上級グレード「X」である。X系グレードには同色部品を増やした「X-DYNAMIC」や「XSエディション」といったバリエーションもあるが、そのなかでも装備がもっとも充実して高価なのがXである。日本の場合、このXは110のディーゼルにしか用意されない。

Xの最大の特徴はグリルからボンネットの中央が黒く塗られる独特の2トーンカラーだが、内装も明らかに豪華。電動レザーシートにはヒーターとベンチレーターも内蔵される。さらには、エアサスペンションや、走行中の車体直下映像も映し出す「クリアサイトグラウンドビュー」、「電子制御アクティブデフ」、「テレインレスポンス2」のカスタマイズ設定、悪路用超低速クルーズコントロールの「オールテレインプログレスコントロール」といった特徴的な走行関連機能もあらかた標準となる。

そんなディフェンダー最上級となるXの本体価格は1171万円。しかも、サードシートその他のオプションを追加した試乗車は1300万円以上に達していた。110でも600万円台のグレードからあるディフェンダーは本来、エンジン縦置きアルミモノコック系ランドローバーではもっとも手ごろのはずだが、このXはとくにパンチのきいた価格設定である(笑)。なにせ「ディスカバリー」の最上級グレードより高価なのだ。

「ランドローバー・ディフェンダー」の2021年モデルで登場した最上級グレード「X」は、ロングホイールベース車「110」のディーゼルエンジン搭載車にのみ設定される。車両本体価格は1171万円で、シリーズ中もっとも高価なプライスタグを下げる。
「ランドローバー・ディフェンダー」の2021年モデルで登場した最上級グレード「X」は、ロングホイールベース車「110」のディーゼルエンジン搭載車にのみ設定される。車両本体価格は1171万円で、シリーズ中もっとも高価なプライスタグを下げる。拡大
左右のフロントドアに貼られた「DEFENDER X」のエンブレム。スターライトサテンクロームやグロスブラックといった光沢のあるブラックパーツが採用されるのも同モデルの特徴だ。
左右のフロントドアに貼られた「DEFENDER X」のエンブレム。スターライトサテンクロームやグロスブラックといった光沢のあるブラックパーツが採用されるのも同モデルの特徴だ。拡大
天然皮革やリアルウッドが用いられた「ディフェンダー110 X D300」のインテリア。姉妹車の「レンジローバー」もかくやという触感や縫製にこだわった、上質な「ウインザーレザー」のトリムが採用されている。
天然皮革やリアルウッドが用いられた「ディフェンダー110 X D300」のインテリア。姉妹車の「レンジローバー」もかくやという触感や縫製にこだわった、上質な「ウインザーレザー」のトリムが採用されている。拡大
「3Dサラウンドカメラ」の技術を用いた、フロントボンネット直下の映像を映し出す「クリアサイトグラウンドビュー」が標準装備される。写真はオフロード走行時のものだが、狭い都市部での取り回しでも有効活用できる。
「3Dサラウンドカメラ」の技術を用いた、フロントボンネット直下の映像を映し出す「クリアサイトグラウンドビュー」が標準装備される。写真はオフロード走行時のものだが、狭い都市部での取り回しでも有効活用できる。拡大
ランドローバー ディフェンダー の中古車

ディーゼルらしからぬ滑らかさ

ディフェンダーの発売当初「ディーゼルは4気筒」といった発表もなされたようだが、実際のところは、こうして最新3リッター直列6気筒を積んで上陸した。そして、お約束のようにベルト駆動48Vスターター兼発電機が組み合わせられたマイルドハイブリッド(MHEV)となる。ちなみに、英本国でもディフェンダーの4気筒ディーゼルはごく短期間で姿を消して、ディフェンダーのディーゼルは現在、直列6気筒に統一されている。

さすがに3リッターのディーゼルともなれば、絶対的なトルクやパワーに不足があろうはずもない。しかも、最高出力300PSというハイチューンユニットゆえに、4気筒ガソリンよりあらゆる場面で力強い。

ただ、ディーゼルとしてはボトムエンドの柔軟性はさほどでもないようで、たとえば上り勾配などで1500rpmくらいからアクセルを踏み込むと、一気にダウンシフトしていかにもディーゼルらしくほえる。エンジンが強力なこともあってか、こうした場面ではMHEVの効果も相対的に感じ取りにくい。

そのかわり、エンジン回転が2000rpm前後に達すると一気にパンチが出る。もっともおいしい2000~4000rpmでの、蹴り出すようなトルク感や快活なレスポンスは快感そのものだ。その領域では、吸気音が混ざったような心地よいサウンドにも驚く。まるでスピーカー音を足したかのようなシルキーに調律された快音で、ガソリンのストレートシックスと錯覚しそうになる。しかも、事実上の回転リミットとなる4500rpmまでアタマ打ち感がほとんどなく回り切るディーゼルらしからぬ滑らかさも、さすがである。

もっとも、高回転はフン詰まりでも超低速でヒリヒリと粘りつくようなトルクを供出してくれるほうが、オフローダーのディーゼルとしては個人的には好ましいと思う。このインジニウムの直6ディーゼルはそうではないが、かわりに今どきの洗練されたSUVの心臓部としてはほぼ完璧なマナーをみせる。MHEVのおかげもあって、アイドリングストップからの再始動も滑らかそのものだ。

「ディフェンダー110 X D300」のサイドビュー。車名の110は先代モデルのホイールベースが110インチ(2794mm)であったことに由来するが、現行モデルのホイールベースは3020mmと、その数値を大きく超えている。
「ディフェンダー110 X D300」のサイドビュー。車名の110は先代モデルのホイールベースが110インチ(2794mm)であったことに由来するが、現行モデルのホイールベースは3020mmと、その数値を大きく超えている。拡大
3リッター直6ディーゼルターボエンジンは最高出力300PS、最大トルク650N・mを発生。これに同24.5PS、同55N・mの48Vベルト駆動スターター兼発電機を備えたマイルドハイブリッドシステムが組み込まれている。
3リッター直6ディーゼルターボエンジンは最高出力300PS、最大トルク650N・mを発生。これに同24.5PS、同55N・mの48Vベルト駆動スターター兼発電機を備えたマイルドハイブリッドシステムが組み込まれている。拡大
センターコンソールパネルには、エアコンのコントローラーのほか、エアサスペンションの車高調整や走行モードの切り替えスイッチなどが機能的に配置されている。
センターコンソールパネルには、エアコンのコントローラーのほか、エアサスペンションの車高調整や走行モードの切り替えスイッチなどが機能的に配置されている。拡大
20インチの「スタイル5098」と呼ばれる5スポークデザインのホイールから顔をのぞかせるオレンジのブレーキキャリパーは、「X」グレードの専用アイテム。タイヤは255/60R20サイズの「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」が装着されていた。
20インチの「スタイル5098」と呼ばれる5スポークデザインのホイールから顔をのぞかせるオレンジのブレーキキャリパーは、「X」グレードの専用アイテム。タイヤは255/60R20サイズの「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」が装着されていた。拡大
「ディフェンダー110 X D300」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm。車重は2420kgと発表されている。
「ディフェンダー110 X D300」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm。車重は2420kgと発表されている。拡大

素晴らしい乗り心地

積極的に回すと室内に快音を響かせた直6ディーゼルも、1500rpm前後の高速クルージングに入るとピタリと静かになるのは、いかにも今どきっぽい。足もとは電子制御エアサスペンションと連続可変ダンパーの「アダプティブダイナミクス」の組み合わせで、これは新しいディフェンダーではすっかりおなじみであろう。しかし、最新2022年モデルからは、エアサスを標準装備するのはXだけとなり、その他ではオプションになった。

今回は本格的なオフロードを試す機会はなかったが、乗り心地は率直にいって素晴らしい。エアサスながらも細かい凹凸で突っ張るクセもなく、吸いつくようなロードホールディングをみせる。100km/hくらいでまだフワフワした上下動が残るが、日本でも一部の特別区間で試せる120km/hになると、ウソのようにヒタッとフラットに落ち着く。

それにしても、高速だけでなく、あらゆる場面で滑らかさを失わないストローク感は、思わず笑ってしまうほど心地よい。ワインディングを攻めて留飲が下がるようなタイプではもちろんなく、そうした場面ではあくまで穏やかな身のこなしに終始する。しかし、運転操作に対する妙なズレや遅れがなく、速くはないがストレスも皆無なのは、さすがのモノコック車体と四輪独立サスペンションだ。タイトなカーブでも不安な姿勢にならないのはアダプティブダイナミクスに加えて、踏ん張りすぎないオールテレインタイヤのおかげもあるだろう。

ブレーキも、まるでスーパーカーのようなオレンジ色のキャリパーが備わって頼もしいかぎりだ。しかし、さすがにこの超ヘビー級となると、これでも絶対的な制動力は「まあ及第点」といった程度というほかない(笑)。

軽量アルミニウムによるモノコック構造の「D7x」ボディーに、四輪独立サスペンションが組み合わされた最新の「ディフェンダー」。カーブが連続する山道でも、運転操作に対するズレや遅れは感じられなかった。
軽量アルミニウムによるモノコック構造の「D7x」ボディーに、四輪独立サスペンションが組み合わされた最新の「ディフェンダー」。カーブが連続する山道でも、運転操作に対するズレや遅れは感じられなかった。拡大
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式、リアがマルチリンク式。最大で145mm車高を引き上げられる電子制御エアサスペンションに連続可変ダンパーの「アダプティブダイナミクス」が組み合わされている。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式、リアがマルチリンク式。最大で145mm車高を引き上げられる電子制御エアサスペンションに連続可変ダンパーの「アダプティブダイナミクス」が組み合わされている。拡大
「X」のシートは「ウインザーレザー&スチールカットプレミアムテキスタイル」と呼ばれるもの。内装色は写真の「ビンテージタン/エボニー」か「エボニー」の単色から選択できる。
「X」のシートは「ウインザーレザー&スチールカットプレミアムテキスタイル」と呼ばれるもの。内装色は写真の「ビンテージタン/エボニー」か「エボニー」の単色から選択できる。拡大
フロントシートと同じく「ビンテージタン/エボニー」の表皮となる「ディフェンダー110 X D300」の2列目シート。3列目シートを装備するモデルの場合、2列目シートは975mmというレッグスペースが確保されている。
フロントシートと同じく「ビンテージタン/エボニー」の表皮となる「ディフェンダー110 X D300」の2列目シート。3列目シートを装備するモデルの場合、2列目シートは975mmというレッグスペースが確保されている。拡大

まだまだ奥は深い

こうして全部乗せのディフェンダーに乗ると、あらためて、ディフェンダーが売れるのも当然だと納得させられる。とにかくデザインが分かりやすい。「ラングラー」や「ジムニー」のような古典(個人的にはこういう頑固オヤジ的態度は大好きだが)ではなく、先ごろの東京五輪の新競技のような、エクストリーム系スポーツに似合うデザインなのが、これまた今っぽい。

さらに最新乗用SUVに脱皮してしまった中身もマニアには賛否両論だが、今回のように普通のレジャーカーとして使うだけなら、ラングラーやジムニーのような我慢がまったく不要である。Xの価格はさすがにハードルが高いだろうが、この本質は90で500万円台からのすべてのディフェンダーに共通する。

日本でもショートホイールベースの90が上陸して、さらに主力の110ではガソリンとディーゼルが選べるようになったディフェンダーは、必要な顔ぶれがひとまず出そろった感はある。しかし、英本国のウェブサイトを見るに、日本未上陸(だが、どうにも気になる)のディフェンダーはまだある。パワートレインだけでも直列6気筒ガソリンターボに4気筒プラグインハイブリッド、そして5リッターのV8(!)スーパーチャージャーのディフェンダーも存在するし、2シーター化してキャビン後半をすべて荷室とした商用車仕様「ハードトップ」もたまらなく興味深い存在である。

しかし、ただでさえバカ売れなのに、半導体不足や新型コロナの影響もあって、これまでにも増して供給がままならなくなっているのが現状らしい。そこはなんとも歯がゆい。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「アルパインウィンドウ」と呼ばれるルーフの後端左右に設けられた窓は、オリジナルの「ディフェンダー」を思わせるモチーフだ。今回の試乗車に装備されていた「スライディングパノラミックルーフ」は、無償で選択できるオプション。
「アルパインウィンドウ」と呼ばれるルーフの後端左右に設けられた窓は、オリジナルの「ディフェンダー」を思わせるモチーフだ。今回の試乗車に装備されていた「スライディングパノラミックルーフ」は、無償で選択できるオプション。拡大
「ディフェンダー110」に無償オプションとして設定される折りたたみ式の3列目シート。スペースは狭く、子供向けという印象だ。3列目シート用にエアコンの吹き出し口やカップホルダーも用意されている。
「ディフェンダー110」に無償オプションとして設定される折りたたみ式の3列目シート。スペースは狭く、子供向けという印象だ。3列目シート用にエアコンの吹き出し口やカップホルダーも用意されている。拡大
2列目と3列目シートを折りたたんだ荷室の様子。容量は3列目シート使用時の231リッターから最大で2233リッターに拡大できる。リアゲートは右ヒンジの横開きになっている。
2列目と3列目シートを折りたたんだ荷室の様子。容量は3列目シート使用時の231リッターから最大で2233リッターに拡大できる。リアゲートは右ヒンジの横開きになっている。拡大
山岳路を行く「ディフェンダー110 X D300」。本格オフローダーらしく、最大でアプローチアングルが37.5°、ブレイクオーバーアングルが28.0°、デパーチャーアングルが40.0°確保されているのも同車の特徴だ。
山岳路を行く「ディフェンダー110 X D300」。本格オフローダーらしく、最大でアプローチアングルが37.5°、ブレイクオーバーアングルが28.0°、デパーチャーアングルが40.0°確保されているのも同車の特徴だ。拡大

テスト車のデータ

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2420kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:300PS(221kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/1500-2500rpm
モーター最高出力:24.5PS(18kW)/1万rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/1500rpm
タイヤ:(前)255/60R20 113H M+S/(後)255/60R20 113H M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:1171万円/テスト車=1304万1000円
オプション装備:ボディーカラー<カンパチアングレイ>(8万5000円)/ファミリーパックプラス(47万3000円)/Wi-Fi通信<データプラン付き>(3万6000円)/フロントアンダーシールド(7万9000円)/20インチ“スタイル5098”5スポークホイール<サテンダークグレイフィニッシュ>(13万6000円)/プライバシーガラス(8万5000円)/ルーフレール<ブラック>(4万9000円)/アクティビティーキー(6万1000円)/コールドクライメートパック(10万9000円)/60:40ラゲッジスルーマニュアルスライディング&リクライニングリアシート<ヒーター&クーラー、センターアームレスト付き>(15万7000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2935km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:521.6km
使用燃料:63.0リッター(軽油)
参考燃費:8.2km/リッター(満タン法)/8.3km/リッター(車載燃費計計測値)

ランドローバー・ディフェンダー110 X D300
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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