清水草一が大胆予想! 新型「Z」に乗ってみたら……?
2021.09.06 デイリーコラムあるだけで泣けてくる
北米でデビューした新型「Z」。そのデザインはシンプルかつ95%回顧的で、従来のZファンの心に刺さる。もうこのデザインだけで新型Zの勝利は間違いない。何に勝利するのかは不明だが、個人的には「勝利!」と叫びたい。
で、走りのほうはどうかというと、エンジンは3リッターV6ツインターボの最高出力405PSと発表された。「スカイライン400R」のエンジンだ。もうこの時点で大勝利である。
スカイライン400Rのエンジンは実に素晴らしい。本当のホントに素晴らしい。絶対性能も十分だが、官能性能が素晴らしい。精緻かつ野蛮なその回転フィールは、太った豚であるスカイラインよりも、新型Zにこそ断然ふさわしい。イメージ的には、死を賭けて身をよじるように走る悪魔のZ(マンガ『湾岸ミッドナイト』の登場車両)が、中年になって多少落ち着いた、みたいなところだ。
しかもトランスミッションがすごい。まず、6段MTがある。あるだけで涙が出る。7段でもよかったのにとは思うが6段でいいです。とにかくMTがあるのだ。カーマニアはこれだけで目頭が熱くなる。
ATは9段だ。なぜ9段? スカイライン400Rは7段だったのに……。9段もあったらどのギアに入ってるかわかりません! 9段なんてほとんど無段変速じゃん! という気がしないでもないが、そのぶん高速巡行では燃費もいいんだろうし、多いぶんには坊主丸もうけでウレシイ。今何速かワケわかんないまま、オッサンがゆったり流すのにちょうどいいし、サーキットを攻めればMTより速いだろう。特にヘタッピの場合。
もはや弱点はない!
私は、スポーツカーはカッコとエンジンで9割決まると思っている。カッコとエンジンがよければ操縦性なんてメチャクチャだっていい。ブレーキなんてメロメロでいい。そのほうが面白いとすら考えている。私が最初に買ったフェラーリである初期型「348tb」がまさにそういうクルマだった。カッコとエンジン以外はメチャクチャのメロメロでした。
しかし新型Zは、操縦性もブレーキ性能もきっとステキだろう。どのくらいステキかはわからないが、かなりステキに決まってる。
今の6代目Zの走りもスポーティーでステキだ。ショートホイールベースを生かした本物のスポーツカーの身のこなしである。しかし6代目Zは、カッコとエンジンに魅力がないので全然ペケだった(私見です)。新型はカッコとエンジンが最高で、そこに6代目の身のこなしが加わるのだから鬼に金棒。弱点はない!
スポーツカーの魅力は、細かいことには左右されない。キモはカッコとエンジンで、あとは付け足し程度だ。新型にはローンチコントロールが装備されるらしいが、そんなもん使います? ほとんどの人が一度も使わないでしょうね。どーでもいいんだよそんなことは! まぁ、「付いてるぞ!」という心の武装には役立つが。
そういう意味では、「パフォーマンス」グレードに装備される機械式LSDも魅力的だ。「付いてるぞ!」という意味で。ただ、同じくパフォーマンスに付く、シフトダウン時に自動的に回転を合わせてくれる機能は、ヘタッピ用みたいで欲しくありません。
新型Zはカッコいい。恐らく見れば見るほどカッコよく感じられるだろう。もちろん、初代Zを強く思い起こさせるので、気分はマンガの主人公だ。エンジンは精緻かつ野蛮。スポーツカー最後の夢を見させてくれそうだ。軽くチューンしただけで550PS出るというから、発展性もデカい。ハイブリッドとか余計なもんが付いていなくてホントによかった。スポーツカーに未来なんかなくていい! 過去があれば十分だ。
新型Zは、国産ハイパワーICE(内燃機関)スポーツカーの最後のひと花である。日産さんありがとう。涙が出ます。
(文=清水草一/写真=日産自動車/編集=関 顕也)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。