愛される秘密

なぜサンデロが1位になったのか?

まずダチアというブランドのイメージである。モデルチェンジごとにスタイリッシュさを向上させたことにより、もはやチープ感に目をつぶっての選択というムードは、ユーザーの間で薄くなった。立派さという点では、姉貴分にあたるルノーブランドとの差が極めて小さくなった。日本のアパレルに例えれば、ルノーがユニクロならダチアはGUくらいの違いしかない。

第2は絶対的なお得感だ。サンデロは9050ユーロ(約118万円。以下、いずれもイタリアにおける付加価値税込価格)からという低価格設定である。

VWゴルフが2万6600ユーロ(約347万円)からであるのと比較すると、サンデロは約3分の1である。欧州の分類ではゴルフがCセグメント、サンデロはBセグメントゆえに当然なのだが、もはや人々はCセグメントでさえぜいたくと考えるようになったと捉えることができる。

新型コロナウイルス感染収束の兆しが見えないヨーロッパで、誰もが節約志向に走るのは当然といえる。

サイズ的なお得感もある。サンデロの全長は4088mmでゴルフの4284mmより短い。だが、なんと全幅は1848mmでゴルフの1789mmより広い。それに伴う室内幅のゆとりは、サンドロさんの夫人であるマルチェッラさんが動画内で指摘するとおりだ。

第3はシンプルなグレード体系だ。イタリア版を例にとれば、内装/装備グレードはたった3つに絞られている。エンジンも最高出力によって3タイプ(LPGは1タイプ)あるが、いずれも同じ1リッター3気筒である。変速機も標準の65PS仕様のみ5段MT、それ以外は6段MTもしくはCVTと極めて明確だ。

車体色で追加料金が不要なのは、「ロッソ・フュージョン」というソリッドの赤のみである。サンドロさんも迷わずこれを選んだ。他の6色は円換算で4~8万円の追加料金が発生する。

選択肢が多すぎると選ぶことが困難になり消費者の購買意欲が下がってしまう、心理学で言うところの「ジャムの法則」を考えれば、この単純なラインナップが奏功していることは確かだ。

ただしLPG仕様といった、特に南欧地域のユーザーが好む仕様は的確にそろえ、その地域の広告ではかなりのスペースをそれに割いている。

エアコンはベース仕様には付いておらず、ひとつ上の仕様でも510ユーロ(約6万6000円)のオプションという徹底ぶりも目を見張る。これは「1万ユーロ未満で買えるクルマ」というキャッチのためと捉えることもできる。だが、地球温暖化が深刻化する昨今においてもなお、アジア地域と比べて相対的に湿度が低いヨーロッパでは、いまだエアコンが装着されていても使わないユーザーが少なくない。したがってこうした仕様は、一部のユーザーに訴求することだろう。

ドアの内張りは依然としてダチア流のシンプルなものだが、3代目に至ってずいぶんと見栄えが向上した。
ドアの内張りは依然としてダチア流のシンプルなものだが、3代目に至ってずいぶんと見栄えが向上した。拡大
メーター中央の多目的ディスプレイ。燃料残量モードでは、上にガソリンが、下にLPGが表示される。
メーター中央の多目的ディスプレイ。燃料残量モードでは、上にガソリンが、下にLPGが表示される。拡大
ステアリングポスト左側の下部にあるLPG/ガソリンの切り替えスイッチ。LPGモードを選択するとLEDが点灯する。
ステアリングポスト左側の下部にあるLPG/ガソリンの切り替えスイッチ。LPGモードを選択するとLEDが点灯する。拡大
ステアリングコラムの右から生えるラジオのコントローラー。表示はメーター内の多目的インジケーターに頼っている。想像どおり「助手席のマルチェッラが操作しにくいのが欠点」とサンドロさんは指摘する。
ステアリングコラムの右から生えるラジオのコントローラー。表示はメーター内の多目的インジケーターに頼っている。想像どおり「助手席のマルチェッラが操作しにくいのが欠点」とサンドロさんは指摘する。拡大
たとえシンプルなモデルでも説明書が分厚いのは、製造物の安全性にセンシティブな昨今を反映している。ラジオの説明書もそれと比肩するくらい厚い。
たとえシンプルなモデルでも説明書が分厚いのは、製造物の安全性にセンシティブな昨今を反映している。ラジオの説明書もそれと比肩するくらい厚い。拡大
ベースとなっている1リッター3気筒ターボエンジンは、「ルノー・クリオ」と同一。LPG仕様はラインナップ中最強の最高出力100PSである。
ベースとなっている1リッター3気筒ターボエンジンは、「ルノー・クリオ」と同一。LPG仕様はラインナップ中最強の最高出力100PSである。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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