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メルセデスAMG GLB35 4MATIC(4WD/8AT)

環境がクルマをつくる 2021.11.17 試乗記 下野 康史 「メルセデス・ベンツGLB」の高性能モデル「AMG GLA35 4MATIC」に試乗。モータースポーツの世界で名をはせたAMGが手がけると、3列シート7人乗りのファミリーSUVは、いったいどんなキャラクターに変貌を遂げるのか。ロングドライブに連れ出し確かめた。

ファミリーフレンドリーなAMG

「GLA」と「GLC」の間に位置するメルセデスのSUV 、GLBにもAMG仕様が加わった。高速道路でバックミラーに映るとコワイ、黒い格子グリルのGLBだ。車名が示す通り、GLAや「Aクラス」の“35”と同じエンジンを搭載する2リッターガソリンの高性能モデルである。

“45”は世界最強(421PS)の2リッター4気筒と謳う手組み/サイン入りの“AMG謹製”だが、306PSの35はライン生産でつくられる。BMWでいえば、「M3」のようなひと桁数字の「Mモデル」が「AMG45」なら、「M340i」のようにフルネームにMが冠されるモデルが35に相当するということか。

メルセデスにはさらにAMGラインという内外装チューンモデルもある。「だから、35は松竹梅の竹のAMGですね」と、編集部Sさんが説明してくれた。いずれにしても、3列シート7人乗りというファミリーフレンドリーなGLBに与えられる初の本格AMG印である。

GLBは前輪駆動プラットフォームだが、35の駆動系は4WDの4 MATIC。AMGライドコントロールサスペンションを装備し、8段DCTやエキゾーストシステム、ブレーキなどにもAMGチューニングの手が及ぶ。

AMG GLB35 4MATICの価格は782万円。ガソリンの「180」(557万円)、ディーゼルの「200d 4MATIC」(581万円)からはやはり抜きんでて高価だ。

2021年1月に導入が開始された「メルセデスAMG GLB35 4MATIC」。3列シート7人乗りのコンパクトSUV「メルセデス・ベンツGLB」をベースとするハイパフォーマンスモデルであり、同車のトップグレードだ。
2021年1月に導入が開始された「メルセデスAMG GLB35 4MATIC」。3列シート7人乗りのコンパクトSUV「メルセデス・ベンツGLB」をベースとするハイパフォーマンスモデルであり、同車のトップグレードだ。拡大
「AMG GLB35 4MATIC」は、新世代FFプラットフォーム車にラインナップされる6番目の「AMG 35」シリーズとなる。車両本体価格は782万円。
「AMG GLB35 4MATIC」は、新世代FFプラットフォーム車にラインナップされる6番目の「AMG 35」シリーズとなる。車両本体価格は782万円。拡大
フロントマスクでは、15本のルーバーを縦に並べたAMG専用「パナメリカーナグリル」と「マルチビームLEDヘッドランプ」が目を引く。
フロントマスクでは、15本のルーバーを縦に並べたAMG専用「パナメリカーナグリル」と「マルチビームLEDヘッドランプ」が目を引く。拡大
今回試乗した「AMG GLB35 4MATIC」のボディーカラーは有償色の「イリジウムシルバーメタリック」。これを含め外装色は全8種類から選択できる。
今回試乗した「AMG GLB35 4MATIC」のボディーカラーは有償色の「イリジウムシルバーメタリック」。これを含め外装色は全8種類から選択できる。拡大
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そこが“竹”のいいところ

GLBの試乗経験は、1年ほど前、国内導入間もない頃に乗った2リッターディーゼルの200d 4MATICである。その印象を思い出すと、“AMGの竹”はまるで別物だった。

300PSオーバーの最高出力に400N・mの最大トルク。同じエンジンを積む「GLA35 4MATIC」より車重(1790kg)は100kg重いが、これだって目覚ましくパワフルだ。走りだした瞬間から全身にパワーがみなぎっている感じだ。

フルスロットルを踏むと、6200rpmまで引っ張るが、公道でそんな必要に迫られることはまずないはずだ。早め早めの自動変速に任せているだけでも、文句なしに速い。

ドライブモードを「コンフォート」から「スポーツ」「スポーツプラス」に上げると、排気ルートのフラップ制御で後方から聴こえる音は少し勇ましくなるが、かといってレーシングライクというほどでもない。そのあたりはむしろ“竹”のいいところだろう。

パワーの体感と、今回の走り方を考えると、約330kmを走って9km/リッター(満タン法)の燃費は上々だと思った。

「AMG GLB35 4MATIC」は最高出力306PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ターボエンジンを搭載。8段デュアルクラッチ式AT「AMGスピードシフトDCT」を組み合わせる。
「AMG GLB35 4MATIC」は最高出力306PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ターボエンジンを搭載。8段デュアルクラッチ式AT「AMGスピードシフトDCT」を組み合わせる。拡大
ドライブモードは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」「スリッパリー」「インディビジュアル」という全5種類の設定。タッチ式ディスプレイを用いて、簡単にモード切り替えを行える。
ドライブモードは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」「スリッパリー」「インディビジュアル」という全5種類の設定。タッチ式ディスプレイを用いて、簡単にモード切り替えを行える。拡大
左右に振り分けられたエキゾーストパイプを装備する「AMG GLB35 4MATIC」。選択されたドライブモードによって、エキゾーストサウンドの音質やボリュームが変わる。
左右に振り分けられたエキゾーストパイプを装備する「AMG GLB35 4MATIC」。選択されたドライブモードによって、エキゾーストサウンドの音質やボリュームが変わる。拡大

身長制限のある3列目シート

GLB35はフットワークもすばらしい。赤身の太い筋肉をイメージさせる足まわりは、実に頼もしい。といっても、ドテッとしたアンコ型ではなく、入力が増すにつれてしなやかさが“出てくる”。どこまでも突っ込めそうだ。「ピレリPゼロ」タイヤの減りを覚悟すれば、それを確認するためにサーキット詣でもアリのSUVだと思う。

以前乗った200d 4MATICでは、乗り心地のよさが印象的だったが、AMG化されてもそっち方面の快適性は犠牲になっていない。7人乗りという高いアメニティーを生かせる乗り心地だ。

ボディー全高はGLAより8cm高い。リアシートはヘッドルームも足もともたっぷりしている。四角い後席窓も広々感を演出する。

荷室床面からポップアップするサードシートは中央にカップホルダーを備える本格派(?)に見えるが、メインは子ども用だ。座面が低すぎて、体育座りをしいられるし、大きくスライドする2列目をいちばん前に出してもらっても、大人だと膝まわりに余裕は少ない。リアドア開口部には「169cmまで」という“身長制限”が記してあった。それ以上だと、ルーフや車内の部品と接触して怪我をするおそれがあるとトリセツにも明記されている。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4650×1845×1670mm、ホイールベースは2830mm。車重は1790kgと発表されている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4650×1845×1670mm、ホイールベースは2830mm。車重は1790kgと発表されている。拡大
「AMG GLB35 4MATIC」のフロントシート。座面と背もたれの中央部分がスエード調で、そのほかの部分が人工皮革となる「レザーDINAMICA」で仕立てられている。
「AMG GLB35 4MATIC」のフロントシート。座面と背もたれの中央部分がスエード調で、そのほかの部分が人工皮革となる「レザーDINAMICA」で仕立てられている。拡大
2列目シートには、調整幅が140mmのスライド機構と、背もたれの角度を8段階で調整できる40:20:40の3分割式リクライニング機構が備わる。
2列目シートには、調整幅が140mmのスライド機構と、背もたれの角度を8段階で調整できる40:20:40の3分割式リクライニング機構が備わる。拡大
「AMG GLB35 4MATIC」の3列目シート。使用にあたっては、乗員の身長が169cmまでという制限が設けられている。
「AMG GLB35 4MATIC」の3列目シート。使用にあたっては、乗員の身長が169cmまでという制限が設けられている。拡大

ニュルも家族で楽しめる

運転席に乗り込むと、ダッシュボードにはiPadを横に繋げたようなワイドスクリーンディスプレイとジェットエンジンのファンを思わせるエアアウトレットが並ぶ。現行Aクラス以来、おなじみの演出だが、いまなお“新築感”は色あせない。40年来のウォッチャーとしては、あの質実剛健なメルセデスがここまで変わったか! という驚きもある。

やはりAクラス以来の自然対話式音声認識システム、MBUXも標準装備だ。装着車に乗るたびに、いろいろ話しかけてみる。今回、朝のスタート直後に「ごきげんいかが?」と言ったら、「大丈夫です。わたしは疲れ知らずです」と返してくれた。「好きだよ」と言ったら、「わたしもあなたといると楽しいです」だって。

手や目を離すことなく、くだけた音声入力でエアコンやオーディオやナビを操作できるのもいいが、個人的には話し相手になってくれるともっといいと思う。しかし、メルセデスはまだそこまでは考えていないようだ。いろいろ話しかけたが、「今はお手伝いできません」という、これまで聞いたことがない決まり文句を何度も返された。冷たいゾ。

でも、このクルマはAMGのホットな心臓と足を秘めたファミリーSUVである。ロールケージを組んだ車両でない限り、ヘルメット着用すら自由。1ラップ数千円を払えば、普段着のままフツーのマイカーで一周21kmのニュルブルクリンクを家族連れで走ることができる。そんな環境と文化があったればこそのクルマである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「AMG GLB35 4MATIC」には、ナッパレザーとDINAMICAのコンビネーションとなる「AMGパフォーマンスステアリングホイール」が標準で装備される。
「AMG GLB35 4MATIC」には、ナッパレザーとDINAMICAのコンビネーションとなる「AMGパフォーマンスステアリングホイール」が標準で装備される。拡大
今回の試乗車は、標準装備となる「AMG 5ツインスポーク」ホイールに、235/50R19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが組み合わされていた。
今回の試乗車は、標準装備となる「AMG 5ツインスポーク」ホイールに、235/50R19サイズの「ピレリPゼロ」タイヤが組み合わされていた。拡大
3列目のシートを折りたたんだ状態(写真)の荷室容量は500リッター。2列目シートを折りたためば荷室容量を最大1680リッターに拡大できる。
3列目のシートを折りたたんだ状態(写真)の荷室容量は500リッター。2列目シートを折りたためば荷室容量を最大1680リッターに拡大できる。拡大
「AMG GLB35 4MATIC」は、前後100:0から50:50までの範囲でトルクを連続可変配分する、電気機械制御式多板クラッチを用いた「AMG 4MATIC」を搭載している。
「AMG GLB35 4MATIC」は、前後100:0から50:50までの範囲でトルクを連続可変配分する、電気機械制御式多板クラッチを用いた「AMG 4MATIC」を搭載している。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG GLB35 4MATIC

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1845×1670mm
ホイールベース:2830mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:306PS(225kW)/5800-6100rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3000-4000rpm
タイヤ:(前)235/50R19 99Y/(後)235/50R19 99Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.4km/リッター(WLTCモード)
価格:782万円/テスト車=789万6000円
オプション装備:ボディーカラー<イリジウムシルバーメタリック>(7万6000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:8136km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:329.6km
使用燃料:36.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/9.1km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデスAMG GLB35 4MATIC
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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