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日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR(4WD)

トレンド全部のせ 2021.11.26 試乗記 今尾 直樹 AUTECHブランドが掲げる「プレミアムスポーティー」と、SUVの機能やスタイルを融合させたという日産のコンパクトモデル「ノートAUTECHクロスオーバー」。SUVテイストをまぶしたその新種の走りを、ロングドライブで確かめた。

少しぜいたくなモーニング?

「日産ノート」の派生モデルとして登場したAUTECHクロスオーバーは、“ブレッド&バターカー”として好ましい一台である。秋の某日、筆者は「ピュアホワイトパール」の試乗車で内房の木更津周辺を走り回り、そう思った。ハイブリッドとSUV、そしてメーカーによるカスタム化など、自動車界の近年のトレンドが詰まった、プチぜいたくな小型車だともいえる。

ブレッド&バターカーというのは生きていくうえで必要なベーシックカーという意味だけれど、ノートAUTECHクロスオーバーはただのパンとバターではない。たっぷりのジャムも付いている。日本食だと、ごはん&納豆だけではなくて、のりと生タマゴも付いている、という感じでしょうか。

いや、100%モーター駆動の「e-POWER」がもたらすドライビングフィールはネバネバではなくて、大変スッキリしている。どっちかというと洋風なのだ。納豆と書いたのは私ですけれど、新鮮とれたて有機野菜のミニサラダ&ヨーグルト付きのブレッド&バター。

なんてことを書いていると、比喩にこだわりすぎて、なんの話か、かえってわかりにくくなってしまった……。ここからは事実に即し、プレスリリース等とにらめっこしながら語ることにします。

まずはオーテックジャパンである。賢明なる読者諸兄はご存じでしょう。「スカイライン」の開発責任者をプリンスの時代から務めた伝説のエンジニア、櫻井眞一郎氏が1986年、湘南の地に設立した、特装車を開発・製作する、日産の関連会社である。

日産の「ノートAUTECHクロスオーバー」は、コンパクトカー「ノート」をベースに、SUVの機能やスタイルを融合させたというクロスオーバーモデル。2021年10月7日に発売された。
日産の「ノートAUTECHクロスオーバー」は、コンパクトカー「ノート」をベースに、SUVの機能やスタイルを融合させたというクロスオーバーモデル。2021年10月7日に発売された。拡大
今回の試乗車は、四輪駆動モデルの「ノートAUTECHクロスオーバーFOUR」。最高出力116PSの前輪用モーターに、同68PSの後輪用モーターを組み合わせる。
今回の試乗車は、四輪駆動モデルの「ノートAUTECHクロスオーバーFOUR」。最高出力116PSの前輪用モーターに、同68PSの後輪用モーターを組み合わせる。拡大
「ノートAUTECHクロスオーバーFOUR」のフロントマスク。ドットパターンのフロントグリルやブルーに発光するシグネチャーLEDなどで「ノート」の標準仕様車と差異化している。
「ノートAUTECHクロスオーバーFOUR」のフロントマスク。ドットパターンのフロントグリルやブルーに発光するシグネチャーLEDなどで「ノート」の標準仕様車と差異化している。拡大
今回試乗した車両は、特別塗装色の「ピュアホワイトパール」をまとっていた。これを含め外装色は全8種類から選択できる。
今回試乗した車両は、特別塗装色の「ピュアホワイトパール」をまとっていた。これを含め外装色は全8種類から選択できる。拡大
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内外装は特別仕立て

そのオーテックジャパンがAUTECHというブランドで日産車のカスタムカーをつくり始めたのは2017年のこと。「セレナAUTECH」を第1号に、最近では「キックス」、「リーフ」等のAUTECHバージョンを生み出している。2020年11月に発表された現行ノートのAUTECHバージョンは、内外装のドレスアップがトピックであったが、今回の試乗車はそのノートAUTECHの最低地上高を25mm上げてSUV仕立てにしたニューバリエーションなのである。

AUTECHクロスオーバーの駆動方式にはノーマルのノート同様、前輪駆動と四輪駆動の2タイプがあって、試乗したのは、必要なときに後輪をモーターで動かす後者の「FOUR」である。

外観で目立つのは、もちろん最低地上高が高くなっていることだ。SUVっぽくするために、ホイールアーチに黒いガーニッシュを貼り、ルーフには黒いルーフレールを設けている。「ルーフモール」とメーカーが呼ぶこのルーフレールが控えめなのは、立体駐車場に入れる全高155cm以下におさめるためもあるのだろう。

フロントグリルのドットパターン、ヘッドランプの下のブルーに輝くLEDランプはAUTECHブランド専用だ。タイヤはノーマルの「ノートX」が185/60R16なのに対して、1サイズ幅広い195/60R16を装着。ホイールも専用デザインで、足元を控えめに強調している。

内装では、レザレットという合成皮革のシート表皮にハッとする。シートの座面と背もたれ部分には半魚人のウロコみたいな模様が入っているからだ。もっとも、肉眼で見る限り、写真ほど不気味ではない。合皮は近年、エシカル消費につながるとされる。シートの背もたれには「AUTECH CROSSOVER」という刺しゅうが入っている。ブルーのステッチも職人仕事を思わせ、スペシャル感が漂う。

専用サスペンションや外径の大きなタイヤを採用することで、最低地上高は「ノートX FOUR」よりも25mm引き上げられた150mmになっている。
専用サスペンションや外径の大きなタイヤを採用することで、最低地上高は「ノートX FOUR」よりも25mm引き上げられた150mmになっている。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4045×1700×1545mm、ホイールベースは2580mm。「ノートX FOUR」よりも5mm幅広く、25mm車高が高い設定だ。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4045×1700×1545mm、ホイールベースは2580mm。「ノートX FOUR」よりも5mm幅広く、25mm車高が高い設定だ。拡大
今回の試乗車は、専用デザインの16インチアルミホイールに195/60R16サイズの「ブリヂストン・エコピアEP150」タイヤを組み合わせていた。ホイールサイズは「ノート」と同じだが、タイヤ幅は10mm広い設定になっている。
今回の試乗車は、専用デザインの16インチアルミホイールに195/60R16サイズの「ブリヂストン・エコピアEP150」タイヤを組み合わせていた。ホイールサイズは「ノート」と同じだが、タイヤ幅は10mm広い設定になっている。拡大
インテリアでは、レザレットのシート地や、高級材とされる紫檀(シタン)柄のインストゥルメントパネルが目を引く。
インテリアでは、レザレットのシート地や、高級材とされる紫檀(シタン)柄のインストゥルメントパネルが目を引く。拡大

存在を主張しないリアモーター

スプリング、ショックアブソーバー、パワーステアリングは専用チューニングで、乗り心地ははっきり硬い。先代の「トヨタ・クラウン ロイヤル」を愛車にしているような人(今回の撮影を担当したHカメラマン)が後席に乗ると、不満の声が出るのも当然だ。でも、ドライバー的には、しなやか、かつさわやかな、スポーツカー的な硬さに感じる。少なくとも、筆者はいいと思う。

なるほど荒れた路面ではややカドのある突き上げがあるけれど、都内から首都高速、高速道路を走っている限りにおいては快適さを維持する。コーナリングでは深々とロールするのも好ましい。スプリングがガチガチに固められているわけではないのだ。

パワートレインには手が入っていないけれど、先代比、トルクを10%、出力を6%アップしたモーターによって、動力性能にはなんの不満もない。それどころか、280N・mもの最大トルクを瞬時に紡ぎ出すモーターにより、初動、つまり最初の1歩の動き出しにおける速さと軽やかさは印象的で、アクセルペダルを踏めば、その瞬間、スッと前に出る。

ドライ路面では、カーブを走行中とか高速道路の追い越し等で、リアのモーターが活躍しているらしい。カーブでは安定した姿勢で狙ったラインを、追い越しでは滑らかな車線変更と力強い加速を実現しているという。伝聞形式なのは、筆者にはいつリアのモーターが稼働しているのやら、さっぱりわからなかったからだ。

フロントシートでは、「AUTECH CROSSOVER」の刺しゅうやブルーのステッチで特別感を演出。表皮は「ブラックレザレット」と呼ばれる人工皮革で、本革に近いタッチが特徴だ。
フロントシートでは、「AUTECH CROSSOVER」の刺しゅうやブルーのステッチで特別感を演出。表皮は「ブラックレザレット」と呼ばれる人工皮革で、本革に近いタッチが特徴だ。拡大
4WD車には、FF車ではオプション扱いとなる「ホットプラスパッケージ」が標準装備される。同パッケージにはリアヒーターダクトや前席のヒーター機能などが含まれている。
4WD車には、FF車ではオプション扱いとなる「ホットプラスパッケージ」が標準装備される。同パッケージにはリアヒーターダクトや前席のヒーター機能などが含まれている。拡大
「AUTECH」のロゴがブルーに輝く「専用キッキングプレート」は、3万8060円のディーラーオプションアイテム。ドアの開閉に合わせてイルミネーションが点灯/消灯する。
「AUTECH」のロゴがブルーに輝く「専用キッキングプレート」は、3万8060円のディーラーオプションアイテム。ドアの開閉に合わせてイルミネーションが点灯/消灯する。拡大
車高アップスプリングの採用やダンパーの減衰力を変更するなどし、サスペンションを専用チューン。最低地上高の引き上げだけでなく、乗り心地の向上も足まわりの開発目標とされた。
車高アップスプリングの採用やダンパーの減衰力を変更するなどし、サスペンションを専用チューン。最低地上高の引き上げだけでなく、乗り心地の向上も足まわりの開発目標とされた。拡大

ピュアEV並みのキビキビ感

スペック的にはフロントのモーターは最高出力116PSと最大トルク280N・m、リアは同68PSと同100N・mを発生する。後輪専用として“軽自動車のエンジンが搭載されている”と思うと、心強いものがある。

ノートのe-POWERは、1.2リッターの3気筒エンジンは発電、モーターは駆動に徹する、完全分業制のハイブリッドである。バッテリーのエネルギーをどんどん消費する高速巡航時において、82PSと103N・mのエンジンではモーターに十分な電気エネルギーを送れない。

だが、そんな弱点はあるものの、モーター駆動によるスッキリ感、キビキビ感はピュアEVと同じで、固体電池なり空気電池なりバッテリーの技術革新が実現するまでのつなぎの技術として、eパワーにはそれなりの意味がある、と筆者は思う。

それにしても……ちょっと不思議なのは、クロスオーバーといういまや主流になりつつあるボディー形式のクルマが日産本体ではなく、オーテックジャパンという関連会社からカスタムというカタチで出てきたことだ。日産本体では手が回らなかったとか、オーテックジャパンには高い技術力があるとか、しかるべき理由があるのだろうけれど、AUTECHではない日産のノート クロスオーバーも別にあれば、価格ももうちょっと低くおさえられて、みんなのブレッド&バターカーになりうると思う。もしかして、あとから出てくるのかしら。

(文=今尾直樹/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

パワーユニットは、ベースとなる「ノート」の4WD車と共通。フロントのモーターが最高出力116PSと最大トルク280N・mを、リアのモーターが同68PSと同100N・mを発生する。
パワーユニットは、ベースとなる「ノート」の4WD車と共通。フロントのモーターが最高出力116PSと最大トルク280N・mを、リアのモーターが同68PSと同100N・mを発生する。拡大
車両後方をカメラで映し出す「インテリジェントルームミラー」は、セットオプションに含まれるアイテム。後席の乗員や荷室の積載物に影響されることなく、後方視界が確保できる。
車両後方をカメラで映し出す「インテリジェントルームミラー」は、セットオプションに含まれるアイテム。後席の乗員や荷室の積載物に影響されることなく、後方視界が確保できる。拡大
荷室容量や後席背もたれを倒して行えるシートアレンジなどは、ベースモデルの「ノート」と変わらない。試乗車にはディーラーオプションの「AUTECH専用ラゲッジカーペット」が備わっていた。
荷室容量や後席背もたれを倒して行えるシートアレンジなどは、ベースモデルの「ノート」と変わらない。試乗車にはディーラーオプションの「AUTECH専用ラゲッジカーペット」が備わっていた。拡大
ホイールアーチガーニッシュやサイドシルプロテクター、ルーフモールなどのアイテムで、エクステリアを「ノート」と差異化。タイヤサイズの違いなどにより、最小回転半径が4.9mから5.2mへと拡大している。
ホイールアーチガーニッシュやサイドシルプロテクター、ルーフモールなどのアイテムで、エクステリアを「ノート」と差異化。タイヤサイズの違いなどにより、最小回転半径が4.9mから5.2mへと拡大している。拡大

テスト車のデータ

日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1700×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1360kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)/2900-1万0341rpm
フロントモーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/4775-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775pm
タイヤ:(前)195/60R16 89H/(後)195/60R16 89H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:279万6200円/テスト車=345万2981円
オプション装備:特別塗装色<ピュアホワイトパール>(3万8500円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き>+インテリジェント ルームミラー+USB電源ソケット<タイプA:1個、タイプC:1個>+ワイヤレス充電器+NissanConnectナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+NissanConnect専用車載通信ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+SOSコール+インテリジェントBSI<後側方衝突防止支援システム>+BSW<後側方車両検知警報>+RCTA<後退時車両検知警報>+ETC2.0ユニット(44万2200円)/クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー、リアフォグランプ>(2万2000円)/ ※以下、販売店オプション 日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万2571円)/AUTECH専用ラゲッジカーペット(1万5400円)/AUTECH専用フロアカーペット(2万8050円)/AUTECH専用キッキングプレート(3万8060円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2404km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:287.3km
使用燃料:18.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/16.5km/リッター(車載燃費計計測値)

日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR
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今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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