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トヨタ・カローラ クロスS(4WD/CVT)【試乗記】

T印良品かっ! 2021.11.29 試乗記 下野 康史 発売以来セールス好調と伝えられるトヨタのSUV「カローラ クロス」だが、どこがそんなにすごいのだろうか? ハイブリッドの4WD車に乗ってみると、なるほど、このメーカーでなければ成し得ない商品力の高さがみえてきた。

デカさ際立つカローラ

トヨタの広報車デポで初めて見た実物のカローラ クロスは、デッカかった。隣に新型「ランドクルーザー」が白い巨体を休めていたが、それと比べてもそんなに貫禄負けしていない。

カローラ クロスは内容的に「C-HR」と近似性が高いが、ボディーはひとまわり大きい。全長は10cm長く、全高は7cm高い。

同じホイールベースのSUVでも、アバンギャルドなクーペルックのC-HRとはまったく違うものにつくり分けている。実用的に見えて、奇をてらったところがない。「みんなのカローラ」ならぬ、「みんなのSUV」といった印象のデザインだ。

パワートレインは1.8リッターガソリンと1.8リッターハイブリッドのふたつ。これまでの受注ではハイブリッドが8割以上を占めるというが、品ぞろえもハイブリッドのほうが豊富である。純ガソリンモデルは2WDのみだが、ハイブリッドにはE-Fourも用意される。C-HRハイブリッドにはない4WDだ。

今回、試乗したのは、ハイブリッドの中間グレード「S」のE-Four(295万9000円)である。同じカローラファミリーでカローラ クロスが最も競合しそうなのは「ツーリング」だろう。東京オリンピックの自転車ロードレースで、全チームのサポートカーとして活躍したステーションワゴンだ。ちなみにツーリングのハイブリッドS(E-Four)との価格差は小さく、17万円ほどだ。

「カローラ」としては大柄な「カローラ クロス」。ホイールベースこそ他のカローラシリーズと同値(2640mm)だが、全幅は1825mmと、唯一1800mmを超えている。
「カローラ」としては大柄な「カローラ クロス」。ホイールベースこそ他のカローラシリーズと同値(2640mm)だが、全幅は1825mmと、唯一1800mmを超えている。拡大
インテリアカラーはブラックのみ。本革巻きのステアリングホイールやシルバーのアクセントなどで上質感が演出される。
インテリアカラーはブラックのみ。本革巻きのステアリングホイールやシルバーのアクセントなどで上質感が演出される。拡大
最廉価グレードを除き、「カローラ クロス」の前席はスリムな背面部と高いホールド性を特徴とするスポーティーシートとなっている。
最廉価グレードを除き、「カローラ クロス」の前席はスリムな背面部と高いホールド性を特徴とするスポーティーシートとなっている。拡大
「カローラ クロス」には、今回試乗したハイブリッド車のほか、純ガソリンエンジン車もラインナップされる。ただし、4WDはハイブリッド車のみの設定となる。
「カローラ クロス」には、今回試乗したハイブリッド車のほか、純ガソリンエンジン車もラインナップされる。ただし、4WDはハイブリッド車のみの設定となる。拡大
トヨタ カローラ クロス の中古車

スポーツ性もイイ感じ

見た目のファーストインプレッションが「デカッ!」なら、走りだした第一印象は「これがカローラかッ!?」であった。それくらい、カローラ クロスは脱カローラ的なクルマだった。

まず乗り心地が上質だ。リアサスペンションに新開発のトーションビーム式を採用した2WDに対して、E-Fourの後ろアシはこれまでどおりのダブルウイッシュボーン式だが、どんなカローラよりもストローク感があり、しかもフラットで落ち着いている。

後輪駆動用のモーターを追加したE-Fourは1490kg。ハイブリッドの2WDより110kg重いのも、乗り心地には効いているかもしれない。

重くなった車重にも1.8リッター4気筒ハイブリッドのパワーソースは不満なしである。身のこなしは1490kgと思えないほど落ち着き払っているのに、加速はむしろ軽快と言いたい。

「RAV4」や「ハリアー」の2.5リッター4気筒にしても、「ヤリス」や「アクア」の1.5リッター3気筒にしても、最近のトヨタ製ハイブリッドはスポーツ性能でもイイ線いっていると思う。

電気式CVTによる「プリウス」の加速感を、ビヨーンと伸びるゴムにたとえて“ラバーバンドエフェクト”と揶揄(やゆ)する海外メディアも多かったが、いまやそんな批判は当たらない。無段変速だからシフトアップ感はないものの、右足の踏み込みに応じてメリハリのある加速をみせる。速さや楽しさでもトヨタハイブリッドは進化し続けていると思う。

意外なほど乗り心地が上質な「カローラ クロス」。ハイブリッド車らしからぬメリハリのある加速感も印象的だった。
意外なほど乗り心地が上質な「カローラ クロス」。ハイブリッド車らしからぬメリハリのある加速感も印象的だった。拡大
シフトブーツは本革巻き。レバーの前方に走行モードのセレクトスイッチがレイアウトされている。
シフトブーツは本革巻き。レバーの前方に走行モードのセレクトスイッチがレイアウトされている。拡大
後席にはリクライニング機能が備わる。試乗車「S」グレードのシートはファブリック仕立てで、上級グレード「Z」のものは本革とファブリックのコンビとなる。
後席にはリクライニング機能が備わる。試乗車「S」グレードのシートはファブリック仕立てで、上級グレード「Z」のものは本革とファブリックのコンビとなる。拡大
「S」グレード専用の17インチアルミホイール。上級グレード「Z」には18インチのものが装着される。
「S」グレード専用の17インチアルミホイール。上級グレード「Z」には18インチのものが装着される。拡大

扱いやすくてチープじゃない

ボディー全高は1620mmあり、リフトパーキングは無理になった。運転席のヒップポイントは、他のカローラより55mm上がっている。SUVらしい居住まいになったが、かといって高すぎない。ボディー全幅は1.8mを超えたが、ドアミラーの鏡面が大きいためか、狭いところでのすり抜けもそれほど苦労しなかった。運転のしやすさというカローラの伝統は、SUVでも受け継がれている。

荷室の奥行きはツーリングほど大きくはない。しかも後席背もたれを倒すと、10cm以上の段差ができてしまう。外遊び好きが選ぶはずのSUVなのに、最大時の荷室をフラットにするにはオプションのパーツを求めないといけない。最近のヨーロッパ車の悪しきオプション商法を見習わないでもらいたい。

カローラ クロスは日本製だが、タイで先行発売したアジア戦略車でもある。タイ工場でつくられ、日本にお取り寄せされるe-POWERの「日産キックス」は、内装などに新興国向けの割り切りも散見されるが、カローラ クロスにそうしたチープさは見られない。

トヨタのハイブリッド車にはタコメーターが付いていないクルマも多いが、カローラ クロスの液晶計器盤には標準装備だ。平坦な高速道路の100km/h時に、アクセルを緩めると1100rpmまでエンジンを絞る。全閉にすればストンとゼロ回転になることが多い。エコラン好きの人には有用な情報ツールである。

ハイブリッドの4WD車の場合、5人乗車時の荷室容量は407リッターとなる。最も広いスペース(487リッター)が確保されるガソリンエンジンのFF車に比べ、80リッター小さい。
ハイブリッドの4WD車の場合、5人乗車時の荷室容量は407リッターとなる。最も広いスペース(487リッター)が確保されるガソリンエンジンのFF車に比べ、80リッター小さい。拡大
後席の背もたれを倒すと、写真のように後席部分と荷室のフロアには大きな段差が生じる。その差を埋めて床面をフラットにする「ラゲージアクティブボックス」がオプションとして用意されている。
後席の背もたれを倒すと、写真のように後席部分と荷室のフロアには大きな段差が生じる。その差を埋めて床面をフラットにする「ラゲージアクティブボックス」がオプションとして用意されている。拡大
7インチのカラーインフォメーションディスプレイが備わる「オプティトロンメーター」。走行モードの切り替えにより速度計の色が青から赤に変わる。
7インチのカラーインフォメーションディスプレイが備わる「オプティトロンメーター」。走行モードの切り替えにより速度計の色が青から赤に変わる。拡大
オーディオ機能とスマートフォン連携機能を持つ「ディスプレイオーディオ」も標準で備わる。画面サイズは写真の7インチが基本で、9インチのものもオプション設定される。
オーディオ機能とスマートフォン連携機能を持つ「ディスプレイオーディオ」も標準で備わる。画面サイズは写真の7インチが基本で、9インチのものもオプション設定される。拡大

商品力は超強力

約270kmを走り、燃費は満タン法で20km/リッター近く、車載燃費計でも18km/リッターを超えた。今回のように走行距離が短いと、満タン法は誤差が出やすいが、いずれにしても“乗った感じ”からすると、やはりトヨタハイブリッドならではの好燃費である。

“乗った感じ”というのは、試乗の最初から最後まで変わらない。「これがカローラかッ!?」という車格破壊感である。雑味のないドライブフィールや走行感覚はハリアークラスと変わらないと思った。間違いなく史上最も“いいもの感”の高いカローラである。

既存の現行カローラとは見た目も乗り味も大きく異なる。なぜカローラ クロスとして出したのか。まったく別のクルマとして売る選択もあったと思われるが、カローラの名が冠されているからこそ、じゃあ“SUV”という新ジャンルに行ってみるか、という層も多いのだろう。トヨタの境地、おそるべし。「クラウン クロス」も、つくったらぜったい売れると思う。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)

今回は270kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で19.5km/リッター、車載の燃費計で18.4km/リッターを記録した。
今回は270kmほどの距離を試乗。燃費は満タン法で19.5km/リッター、車載の燃費計で18.4km/リッターを記録した。拡大
「カローラ クロス」は、運転支援システム「Toyota Safety Sense」を標準装備。「アクア」や「ランドクルーザー」の新型とは異なり、交差点での対向直進車の検知等には対応していないものの、自転車(昼間)や歩行者(昼夜)も検知可能なプリクラッシュセーフティーや、オートマチックハイビーム、ロードサインアシストなどが含まれる。
「カローラ クロス」は、運転支援システム「Toyota Safety Sense」を標準装備。「アクア」や「ランドクルーザー」の新型とは異なり、交差点での対向直進車の検知等には対応していないものの、自転車(昼間)や歩行者(昼夜)も検知可能なプリクラッシュセーフティーや、オートマチックハイビーム、ロードサインアシストなどが含まれる。拡大
ボディーカラーは、試乗車の「アバンギャルドブロンズメタリック」を含む全8色が選べる。
ボディーカラーは、試乗車の「アバンギャルドブロンズメタリック」を含む全8色が選べる。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・カローラ クロスS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1825×1620mm
ホイールベース:2640mm
車重:1490kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:72PS(53kW)
フロントモーター最大トルク:163N・m(16.6kgf・m)
リアモーター最高出力:7.2PS(5.3kW)
リアモーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)
システム最高出力:122PS(90kW)
タイヤ:(前)215/60R17 96H/(後)215/60R17 96H(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:24.2km/リッター(WLTCモード)
価格:295万9000円/テスト車=326万3150円
オプション装備:アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、非常時給電システム付き>(4万4000円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(4万4000円)/パノラミックビューモニター(2万7500円)/寒冷地仕様<ウインドシールドデアイサー、ヒーターリアダクトなど>PTCヒーター付き+LEDリアフォグランプ<右側のみ>+ステアリングヒーター(3万8500円)/ ※以下、販売店オプション ETC2.0ユニット ナビキット連動タイプ(3万3000円)/カメラ別体型ドライブレコーダー<スマートフォン連携タイプ>(6万3250円)/トノカバー(2万5300円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(2万8600円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1845km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:267.6km
使用燃料:13.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.5km/リッター(満タン法)/18.4km/リッター(車載燃費計計測値)

トヨタ・カローラ クロスS
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「S」グレードに備わるBi-Beam LEDヘッドランプ。J型の加飾も特徴的だ。
「S」グレードに備わるBi-Beam LEDヘッドランプ。J型の加飾も特徴的だ。拡大
1.8リッターエンジンをベースとするハイブリッドユニットは、2WD車・4WD車ともに最高出力122PSを発生。WLTCモードの燃費値は2WD車が26.2km/リッター、4WD車は24.2km/リッターとなっている。
1.8リッターエンジンをベースとするハイブリッドユニットは、2WD車・4WD車ともに最高出力122PSを発生。WLTCモードの燃費値は2WD車が26.2km/リッター、4WD車は24.2km/リッターとなっている。拡大
車名ロゴが入ったクロームメッキのドアウィンドウフレームモールディング。エントリーグレード「G」には、ブラック仕上げの同パーツが装着される。
車名ロゴが入ったクロームメッキのドアウィンドウフレームモールディング。エントリーグレード「G」には、ブラック仕上げの同パーツが装着される。拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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