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マツダCX-5 20Sフィールドジャーニー(4WD/6AT)

いざ快適な旅へ 2022.03.12 試乗記 渡辺 敏史 いまやマツダの屋台骨を支える存在にまで成長した「CX-5」。ますます多様化するユーザーのニーズに応えるべく追加設定された特別仕様車「フィールドジャーニー」とは、どんなモデルなのだろうか? 試乗を通して素顔に迫った。

“よくある流れ”で誕生

マツダの販売全数における米国の比率は約27%。これはコロナ禍前の通常運転だった2019年の数字だが、米国販売が過去最高の伸びとなったという2021年でもその比率は約26%とほとんど変わらないため、このあたりが現状の実力ということになるのだと思う。

そもそもマツダは仕向け地別の販売比率のバランスがかなり良い自動車メーカーだ。が、言い換えればそれは“各所低空”であって、地域によっては伸ばせる余地があるということにもなる。特に規模的にもそう遠くはないスバルが全数の7割近くを北米で売っていると聞けば、そこに成長の糧を求める気持ちはわからなくもない。今年から展開を開始する縦置きプラットフォームのラージ商品群も、最重要市場として見据えているのは米国だ。

そんなかの地で果たしてスバルがウケる理由は何なのか。いの一番に挙げられるのが本気の悪路性能だろう。市場にヤワなSUVがあふれるなか、手ごろなサイズと手軽なプライスながら、きちんと泥道や雪道を走れる性能があるからそのデザインにも納得できる。そういうことではないだろうか。

どうせSUV的なものを買うんだったら、ちゃんと四駆で土の匂いがする感じのやつが欲しい。そういうニーズはこの米国の例に限らず、日本でもじわじわと増えつつあるのではないかと思う。百花繚乱(りょうらん)のその先は本質に立ち戻る、バック・トゥー・ザ・ベーシックという流れに向かうのは、流行のオチとして往々にあり得る話でもある。

「CX-5」の「フィールドジャーニー」は、オフロードテイストが強調された特別仕様車。2021年11月にデビューした。
「CX-5」の「フィールドジャーニー」は、オフロードテイストが強調された特別仕様車。2021年11月にデビューした。拡大
「フィールドジャーニー」のインテリア。ライムグリーンで飾られたエアコン吹き出し口が目を引く。
「フィールドジャーニー」のインテリア。ライムグリーンで飾られたエアコン吹き出し口が目を引く。拡大
グランリュクスと合成皮革のコンビシート。ライムグリーンのパイピングでドレスアップされている。
グランリュクスと合成皮革のコンビシート。ライムグリーンのパイピングでドレスアップされている。拡大
今回試乗したのは2リッターガソリンエンジンを搭載するモデル。「CX-5フィールドジャーニー」にはこのほか、2.2リッターのディーゼル車もラインナップされる。
今回試乗したのは2リッターガソリンエンジンを搭載するモデル。「CX-5フィールドジャーニー」にはこのほか、2.2リッターのディーゼル車もラインナップされる。拡大
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確かな技術があればこそ

幸いにして、マツダは先のスカイアクティブ戦略に、コモンアーキテクチャーの強みを生かして垂直展開できる、しっかりした骨格のオンデマンド4WDを組み込んでいた。また、GVC(G-ベクタリングコントロール)やKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)の実例もあるように、駆動制御においては知見を積み重ねてきたエンジニアもいる。なんちゃってかと思いきや、意外と頑張れるじゃんという程度の粘り腰はイニシャルで持ち合わせているわけだ。

先にマイナーチェンジしたCX-5に設定されたフィールドジャーニーは、この優れた4WDシステムを土台にオフロードイメージを高めたマツダの新たな商品企画となる。先に米国で仕向け専売車種として発表された「CX-50」のマツダ離れしたラギッドなイメージを重ねながら、まとった土臭さによってユーザーの嗜好(しこう)に応えようという算段だろう。

「ジルコンサンドメタリック」と名づけられた新色もまた、今までのCX-5に足りなかったオーガニックなイメージを印象づけるべく設定されたものだと察せられる。さらにフィールドジャーニーは前後ロアガーニッシュを金属調に仕上げてスキッドプレート風に見せたり、フロントグリルやシートパイピング、空調ベゼルなどにライムグリーンの差し色を配してスポーツギア的な雰囲気を醸したりと、アウトドアツール的な演出が要所に施される。

「フィールドジャーニー」の設定と同時に「CX-5」全体の仕様変更も実施された。より人馬一体感を得られるよう、足まわりは設定が変更されている。
「フィールドジャーニー」の設定と同時に「CX-5」全体の仕様変更も実施された。より人馬一体感を得られるよう、足まわりは設定が変更されている。拡大
フロントグリルにもライムグリーンの装飾が施される。なお、ヘッドランプやグリルはマイナーチェンジで新デザインとなった。
フロントグリルにもライムグリーンの装飾が施される。なお、ヘッドランプやグリルはマイナーチェンジで新デザインとなった。拡大
「フィールドジャーニー」には「ジルコンサンドメタリック」と呼ばれる新たなボディーカラー(写真)が用意される。ボディーカラーは全8色。バンパー下方に見えるアンダーガード風のガーニッシュはフィールドジャーニー専用の装備。
「フィールドジャーニー」には「ジルコンサンドメタリック」と呼ばれる新たなボディーカラー(写真)が用意される。ボディーカラーは全8色。バンパー下方に見えるアンダーガード風のガーニッシュはフィールドジャーニー専用の装備。拡大
「CX-5 20Sフィールドジャーニー」では、スポーツモードのほか、悪路走行に最適化したオフロードモードが選択できる。
「CX-5 20Sフィールドジャーニー」では、スポーツモードのほか、悪路走行に最適化したオフロードモードが選択できる。拡大

細かなアップデートが効く

今回のCX-5のマイナーチェンジでは、フレーム骨格をはじめサスペンションやシート支持部など、細かなところに手が加えられた。「マツダ3」から始まる新世代モデルの開発で得られた知見を加えることで、乗り味をリフレッシュし上質感を高めるのが狙いだ。さらにフィールドジャーニーでは、ドライブモードに「オフロード」が加えられており、四駆の駆動制御や変速マネジメント、アイドリング回転数などが悪路走行向けに最適化される。

試乗したフィールドジャーニーは2リッターガソリンエンジン搭載モデルだ。乗り込んでみるとエクステリアではマツダらしく控えめな演出に見えたライムグリーンの差し色がややうるさく映る。このあたりは個人の好みによるだろうが、基本的にはオーセンティックなデザインゆえ、遊びを加えるその匙(さじ)加減が難しいであろうことは察せられる。

静的なところで最も変化を感じたのはシートの掛け心地だ。拘束感が強くなったわけではないが、節々の遊びが少ないおかげでカチッと座ることができる。ウレタンやスプリングのチューニングを変え、シートレールの固定面積を増やして揺れやビビリを抑える工夫を加えているという。こういう細かなアップデートをしっかり重ねてくるところはいかにもマツダらしく好感が抱ける。

「Mi-DRIVE(ミードライブ)」と呼ばれる走行モードのセレクター。シフトレバーの隣にレイアウトされている。
「Mi-DRIVE(ミードライブ)」と呼ばれる走行モードのセレクター。シフトレバーの隣にレイアウトされている。拡大
ステアリングホイールは本革巻き。ステアリングヒーターも標準装備される。
ステアリングホイールは本革巻き。ステアリングヒーターも標準装備される。拡大
前席と同様、後席の背もたれや座面には、SUVらしいタフさを表現すべく六角形のエンボス加工が施されている。左右席にはシートヒーターが備わる。
前席と同様、後席の背もたれや座面には、SUVらしいタフさを表現すべく六角形のエンボス加工が施されている。左右席にはシートヒーターが備わる。拡大
今回の試乗では610kmほどの距離を走行。燃費は満タン法で11.7km/リッター、車載の燃費計で11.4km/リッターを記録した。
今回の試乗では610kmほどの距離を走行。燃費は満タン法で11.7km/リッター、車載の燃費計で11.4km/リッターを記録した。拡大

安心・安定の走り

17インチのオールシーズンタイヤを標準で履くこともあって、フィールドジャーニーの乗り心地は至極快適だ。不快な突っ張りやバネ下の暴れも感じることなく、街なかから高速巡航までをスタスタと軽快にこなしてくれる。銘柄的に心配していた高周波系のロードノイズも目立たず、よほどむちゃな横力でもかけない限りはタイヤが腰砕けていくようなそぶりもない。そもそも米国仕様では標準で履いている銘柄ということもあり、性能は多方面から厳しくチェックされているのだろう。

姿勢をひたすらフラットに保ちながらもっちりと柔らかく巡航していくそのイメージからすれば、山岳路でのパフォーマンスはちょっと譲っているのかと思いきや、そのあたりの性能も前型に対してまったく見劣りしなかった。それどころか、ロール量の推移や姿勢の変化はより適切におさめられているようにもうかがえる。四駆ということもあって駆動バランスも安定側に振られているのだろうが、不安要素が極めて少ない穏やかな動きは同級のライバルのなかでも随一だろう。

今回は残念ながらオフロードを走る機会がなかったが、仮にその走破性能を「フォレスター」や「RAV4」より一歩劣るくらいのところに想定しても、フィールドジャーニーには十分魅力がある。それは、登場から5年がたつCX-5そのものが鮮度を失わないどころか、一家言ある走りが今も進化しているからだ。ラージ商品群を迎えてもなお、すべてのマツダ車のなかでCX-5は不動のセンターを守り続けるのではないか。そう思うほど熟成甚だしい。

(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=関 顕也)

グレーメタリック塗装が施された17インチホイール。ヨコハマのオールシーズンタイヤ「ジオランダーG91」が組み合わされていた。
グレーメタリック塗装が施された17インチホイール。ヨコハマのオールシーズンタイヤ「ジオランダーG91」が組み合わされていた。拡大
「CX-5 20Sフィールドジャーニー」の走りは、ワインディングロードでもなかなかのもの。ロールの仕方や姿勢変化が適切で、安心して運転できる。
「CX-5 20Sフィールドジャーニー」の走りは、ワインディングロードでもなかなかのもの。ロールの仕方や姿勢変化が適切で、安心して運転できる。拡大
最高出力156PSを発生する、2リッター直4エンジン。レギュラーガソリン対応で、WLTCモードの燃費は14.0km/リッターとなっている。
最高出力156PSを発生する、2リッター直4エンジン。レギュラーガソリン対応で、WLTCモードの燃費は14.0km/リッターとなっている。拡大
荷室のフロアは前後2分割式。荷物の形状に合わせてフロアレベルを調節できる。
荷室のフロアは前後2分割式。荷物の形状に合わせてフロアレベルを調節できる。拡大

テスト車のデータ

マツダCX-5 20Sフィールドジャーニー

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4575×1845×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1600kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:156PS(115kW)/6000rpm
最大トルク:199N・m(20.3kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)225/65R17 102H/(後)225/65R17 102H(ヨコハマ・ジオランダーG91)
燃費:14,0km/リッター(WLTCモード)
価格:323万4000円/テスト車=333万3000円
オプション装備:地上デジタルチューナー<フルセグ>(2万2000円)/10.25インチセンターディスプレイ(2万2000円)/クルージング&トラフィックサポート<CTS>+ワイヤレス充電<Qi>(3万3000円)/ハンズフリー機能付きパワーリフトゲート(2万2000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2336km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:610.0km
使用燃料:51.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.7km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

マツダCX-5 20Sフィールドジャーニー
マツダCX-5 20Sフィールドジャーニー拡大
トランスミッションは6段AT。ステアリングホイールには変速用のシフトパドルが備わる。
トランスミッションは6段AT。ステアリングホイールには変速用のシフトパドルが備わる。拡大
3連式のメーターパネルは、中央がインフォメーションディスプレイになっている。
3連式のメーターパネルは、中央がインフォメーションディスプレイになっている。拡大
センターメーターのカラーリングは走行モードにより変化する。写真はオフロードモード選択時のもので、スポーツモードでは赤色になる。
センターメーターのカラーリングは走行モードにより変化する。写真はオフロードモード選択時のもので、スポーツモードでは赤色になる。拡大
フロアボード下の予備収納スペースには、ぬれたものも気軽に収納できるよう防水加工が施されている。フロアボードはリバーシブルで、裏面は防水仕様。
フロアボード下の予備収納スペースには、ぬれたものも気軽に収納できるよう防水加工が施されている。フロアボードはリバーシブルで、裏面は防水仕様。拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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