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フィアット500eアイコン(FWD)

速い、楽しい、イタリアン 2022.04.05 試乗記 鈴木 真人 日本でも人気のイタリアンコンパクトの新型は、まさかの電気自動車! キュートなルックスに磨きをかけつつ、心臓部を電動パワートレインに刷新した「フィアット500e」は、デザインはもちろん走りも“イタリア車ならでは”の魅力にあふれる一台となっていた。

外身はレトロでも中身は最新

現行型「フィアット500」が発売されたのは2007年。ちょうど50年前に登場した「ヌオーヴァ500」を思わせるデザインで、日本でも人気になった。新型500も、その路線を踏襲している。レトロな雰囲気は残しているが、中身はとても新しい。電気自動車(EV)なのだ。だから、車名に「e」が付いている。リアにある500のバッジも、最後の「0」が「e」に見えるデザインになっている。

ボディーサイズは少しだけ大きくなったが、小さくてファニーなのは変わらない。ポップさは増したように感じられる。フロントにあったフィアットのエンブレムは、大きな500のロゴに替えられた。かわいらしさを演出する丸型のヘッドライトは上下に分かれていて、“眉毛”の部分だけがボンネットに位置する。ドアノブは可動部のないフラットな構造で、くぼんだ部分に手を入れるとボタンで開けることができる。

インテリアははっきりと未来志向になった。運転席の正面にあるメーターパネルはフルデジタルである。速度のほかに、パワーとチャージの状況、バッテリー残量、残存航続距離などが表示される。センターには横長の10.25インチディスプレイが配置され、ナビやオーディオなどをタッチ式で操作。すぐ下には物理スイッチも残されているから、直感的に使うことができる。

室内空間はミニマムなので、収納スペースはあまり多くない。カップホルダーがセンターコンソールに1つしかないのは不便だと思ったら、下にもう1つ隠されていた。ダッシュボードの素材はざっくりとした網目パターンになっていて、カフェっぽいオシャレ感。シートは「FIAT」のモノグラム模様だ。上質な革に見えるが、植物素材なのだという。ステアリングホイールも本革ではなく、レザーフリーのトレンドを取り入れている。

電動の「フィアット500」が世界初公開されたのは2020年3月。本国での車名は既存のモデルと同じ「500」だが、日本仕様は「500e」という名称となった。
電動の「フィアット500」が世界初公開されたのは2020年3月。本国での車名は既存のモデルと同じ「500」だが、日本仕様は「500e」という名称となった。拡大
従来モデルからイメージを刷新するとともに、インターフェイスも大幅にデジタル化されたインテリア。ドアの開閉も電気式となっているが、万が一に備えて機械式のオープナーも残されている。
従来モデルからイメージを刷新するとともに、インターフェイスも大幅にデジタル化されたインテリア。ドアの開閉も電気式となっているが、万が一に備えて機械式のオープナーも残されている。拡大
センタークラスターの下端に位置するボタン式のシフトセレクター。上段のオープントレーには、上位グレードでは携帯端末の非接触充電機構が備わる。
センタークラスターの下端に位置するボタン式のシフトセレクター。上段のオープントレーには、上位グレードでは携帯端末の非接触充電機構が備わる。拡大
車体については既存の「500」から大きな変化はないように見える「500e」だが、実はプラットフォームは刷新されており、外寸もひとまわり大きくなっている。
車体については既存の「500」から大きな変化はないように見える「500e」だが、実はプラットフォームは刷新されており、外寸もひとまわり大きくなっている。拡大
フィアット の中古車

強烈なワンペダルドライブ

グレードはクローズドボディーの「ポップ」と「アイコン」、カブリオレの「オープン」の3種類。試乗車は装備の充実したアイコンである。スタートボタンを長押しするとシステムが起動。シフトセレクターは「P」「R」「N」「D」のボタンを押す方式だ。ゆっくりとアクセルを踏んでいくと前方からはキーンと甲高い音が聞こえてきて、EVに乗っていることを強く意識させられる。なめらかに発進したが、アクセルを緩めたら急激にブレーキがかかった。ワンペダルドライブのモードだったのである。

ドライブモードには「ノーマル」「レンジ」「シェルパ」の3つがあり、レンジとシェルパはワンペダルドライブの機能がアクティブになる。この2つで減速力に差は感じなかったが、違いはシェルパが電気の消費を最小限に抑える設定になっていることだ。エアコンやシートヒーターは使えなくなり、最高速度は80km/hまでに制限される。80km/hに達してもアクセルを踏み続けたら、「オーバードライブされます」というアラートが出て加速したから、緊急回避ができるようにはなっているようだ。

電動化モデルでワンペダルドライブができるのは珍しくないが、500eはアクセルを離した時の減速力がかなり強い。先代の「日産ノートe-POWER」に比べても、はるかに強烈だ。信号で止まろうとしたら、何度も停止線より前でストップしてしまった。それもガックンと唐突に停止する。クリープはないので、微速でのコントロールには慣れが必要だ。

アクセルを強く踏み込むと、勢いよくダッシュする。モーターの特性を生かし、快活な走りを演出しているようだ。日産のノートや「リーフ」、「ヒョンデ・アイオニック5」などは、ずっとマイルドな制御になっていた。内燃機関車から乗り換えても違和感なく運転できることを優先しているのだろう。500eはまったく異なる方針を選んだらしい。モーター駆動の楽しさを最大限に引き出すことにプライオリティーを置いている。0-100km/hは9.0秒だ。

試乗車はクローズドボディーの上級グレード「アイコン」。充実した装備が特徴で、6スピーカーのオーディオやガラスルーフなどが標準で備わっている。
試乗車はクローズドボディーの上級グレード「アイコン」。充実した装備が特徴で、6スピーカーのオーディオやガラスルーフなどが標準で備わっている。拡大
駆動方式はフロントのモーターで前輪を駆動する“フロントモーター・フロントドライブ”。モーターの種類は交流同期電動機で、118PS(87kW)の最高出力を発生する。
駆動方式はフロントのモーターで前輪を駆動する“フロントモーター・フロントドライブ”。モーターの種類は交流同期電動機で、118PS(87kW)の最高出力を発生する。拡大
メーターに代えて備わる7インチのフルカラーTFTディスプレイ。車速や走行距離、バッテリー残量、航続可能距離などの情報に加え、ADAS(先進運転支援システム)のカメラが読み取った交通標識なども表示される。
メーターに代えて備わる7インチのフルカラーTFTディスプレイ。車速や走行距離、バッテリー残量、航続可能距離などの情報に加え、ADAS(先進運転支援システム)のカメラが読み取った交通標識なども表示される。拡大
車両重量は1330kgと、EVとしては非常に軽量。この軽さが、0-100km/hが9.0秒という加速性能や、WLTCモードで128Wh/kmという電力消費率に寄与している。
車両重量は1330kgと、EVとしては非常に軽量。この軽さが、0-100km/hが9.0秒という加速性能や、WLTCモードで128Wh/kmという電力消費率に寄与している。拡大

上級グレードならADAS機能も充実

ノーマルやレンジのモードでも最高速度は150km/hに制限されているが、ノーマルモードを選べば、ガソリン車と同じような運転感覚になる。メーター内の表示はアクセルを離した時にわずかにチャージ側に振れたが、ほぼ減速感はない。高速道路巡航では、このモードが最適だろう。これらはセンターコンソールの先端に設けられたスイッチを長押しすることで変更するのだが、横によく似たスイッチがあって、それはなぜかオーディオの音量調節だった。

ADAS(先進運転支援システム)の充実も500eのトピックだ。衝突軽減ブレーキはもちろん、上級グレードにはレーンキーピングやブラインドスポットモニターなども装備された。アダプティブクルーズコントロールも使えて、電動車らしいクイックなレスポンスが心地よい。バッテリーを床下に搭載していることで重心が低く、コーナーでは安定した姿勢を保つ。ワインディングロードを走るのは楽しそうだ。一方で、乗り心地は素晴らしく快適とは言えない。路面の悪いところでは揺さぶられる感覚がある。

エンジン音はないが、ロードノイズはそれなりの音量だった。圧倒的な静粛性は期待しないほうがいい。ちょっと困ったのは、運転席の足元スペースが狭いことだ。アクセルとブレーキの位置が近く、左側が空いていないので左足の置き場所がない。なるべく細身のドライビングシューズを履くことが求められる。

500eのバッテリー容量は42kWh。日産リーフは標準タイプが40kWh、「e+」が62kWh、「ホンダe」と「マツダMX-30」は35.5kWだ。数字を見る限りでは、500eはシティーコミューター的な使い方が想定されているのだろう。普通充電と急速充電に対応し、後者なら35分で80%まで充電できるとのこと。日本のCHAdeMO規格にも対応するというが、試乗時はアダプターが間に合っていなかった。今回は充電ができない状況での試乗になったことをお断りしておく。

ドライブモードセレクターのコントローラーは、センターコンソールの前端に装備。電動パーキングブレーキのスイッチやオーディオ音量のコントローラーと並んで配置される。
ドライブモードセレクターのコントローラーは、センターコンソールの前端に装備。電動パーキングブレーキのスイッチやオーディオ音量のコントローラーと並んで配置される。拡大
ADASの充実度はグレードによって異なり、「ポップ」を除く2グレードには、アダプティブクルーズコントロールやレーンキーピングアシスト、ブラインドスポットモニター、交通標識の読み取り機能、バックモニター、パーキングセンサーなども装備される。
ADASの充実度はグレードによって異なり、「ポップ」を除く2グレードには、アダプティブクルーズコントロールやレーンキーピングアシスト、ブラインドスポットモニター、交通標識の読み取り機能、バックモニター、パーキングセンサーなども装備される。拡大
上級グレードに備わる再生素材のレザー調シート。センターアームレストとセンターコンソールリッドは、「アイコン」と「オープン」のみの装備となる。
上級グレードに備わる再生素材のレザー調シート。センターアームレストとセンターコンソールリッドは、「アイコン」と「オープン」のみの装備となる。拡大
既存の「500」と同じく、後席は空間的にあくまで“緊急用”。「アイコン」と「オープン」では、背もたれに5:5の分割可倒機構が備わる。
既存の「500」と同じく、後席は空間的にあくまで“緊急用”。「アイコン」と「オープン」では、背もたれに5:5の分割可倒機構が備わる。拡大

モーターの魅力を解放

最大航続距離はWLTCモードで335kmだが、クルマを受け取った時はバッテリー残量が91%で、残存航続距離が256kmだった。カタログ値の6割というのが普通なので、歩留まりとしてはいいほうだろう。移動と撮影で電力を消費し、本格的に試乗を始めた時はバッテリー残量が65%で、残存航続距離が176kmだった。撮影場所の横浜からwebCG編集部までは約40kmの距離である。数字的には問題なさそうだが、安全を期すために航続距離を50kmは残しておくように厳命された。

エコ運転を心がけ、シェルパモードを選択。暑い日だったのでエアコンなしはちょっとつらい。高速道路ではノーマルモードに切り替えてエアコンを作動させる。15kmほど走り、停車してモニターで確認するとバッテリー残量が61%、残存航続距離が152kmになっていた。走行距離以上にバッテリーを消費してしまったが、ゴールまで走るには十分である。エコ運転はやめ、モーター走行の楽しさを存分に味わうことにした。

ワンペダルドライブの魅力は、ダイナミックな加速と減速だ。右足の力を増減させるだけで、意のままにスピードをコントロールできる。ノートは2代目になってマイルドになったし、アイオニック5もパワーの出方を抑えていた。ここまでモーターの魅力を解放した運転性能を持つEVはなかなかない。心置きなくワンペダルドライブを満喫したが、編集部に戻ってもバッテリーは47%残っていて、まだ110km走行可能だった。エコ走行での電力消費量は8.8km/kWhで、気にせず走っても6.3km/kWh。さほどの差はなかった。

アイオニック5はトータルで4.9km/kWhだったから、ボディーが軽いことが有利に働いているのは確かだ。1990kgのアイオニック5に対して500eは1330kgで、電気自動車としては軽量である。遠出は難しいけれど、街乗りメインならば十分な性能だ。手を出しにくい価格だが、サブスクリプションやリースの設定もあるという。電気自動車でも、瞬発的な速さを目いっぱいエンジョイするためにつくられたのが500eというクルマだ。思いっきりイタリアンである。

(文=鈴木真人/写真=峰 昌宏/編集=堀田剛資)

上質な外装の仕立ても「アイコン」と「オープン」の特徴。クローム仕上げのサイドウィンドウモールディングや、ダイヤモンドカット加工の17インチアルミホイールなどが採用される。
上質な外装の仕立ても「アイコン」と「オープン」の特徴。クローム仕上げのサイドウィンドウモールディングや、ダイヤモンドカット加工の17インチアルミホイールなどが採用される。拡大
インフォテインメントシステムには、ジープやフィアットなどではおなじみの純正ディスプレイオーディオ「Uconnect」を採用。インターフェイスには10.25インチのタッチスクリーンを搭載している。
インフォテインメントシステムには、ジープやフィアットなどではおなじみの純正ディスプレイオーディオ「Uconnect」を採用。インターフェイスには10.25インチのタッチスクリーンを搭載している。拡大
ボディーカラーは試乗車の「ミネラルグレー」を含む全5色。ただし「アイスホワイト」を除く4色は、有償のオプションカラーとなる。
ボディーカラーは試乗車の「ミネラルグレー」を含む全5色。ただし「アイスホワイト」を除く4色は、有償のオプションカラーとなる。拡大
シティーコミューターとして必要十分な一充電走行可能距離に加え、キビキビとした走りも備えていた「フィアット500e」。実用コンパクトでも積極的に走りを楽しんできた、イタリアならではのEVといえるだろう。
シティーコミューターとして必要十分な一充電走行可能距離に加え、キビキビとした走りも備えていた「フィアット500e」。実用コンパクトでも積極的に走りを楽しんできた、イタリアならではのEVといえるだろう。拡大

テスト車のデータ

フィアット500eアイコン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3630×1685×1530mm
ホイールベース:2320mm
車重:1330kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:118PS(87kW)/4000rpm
最大トルク:220N・m(22.4kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88V/(後)205/45R17 88V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
一充電走行距離:335km(WLTCモード)
交流電力量消費率:128Wh/km(約7.8kWh/km、WLTCモード)
価格:485万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:509km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:163.7km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:8.2km/kWh(車載電費計計測値)

フィアット500eアイコン
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フィアット500eアイコン(FWD)【試乗記】の画像拡大
 
フィアット500eアイコン(FWD)【試乗記】の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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