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第321回:究極は「青い血ドバー」

2022.05.02 カーマニア人間国宝への道

DSの最上級セダンで首都高に出撃

担当サクライ君よりメールが入った。

「今度『DS 9オペラ』と『BMW M240i』に乗れますが、どちらにいたしましょう」

私は間髪入れず「DS 9のほう!」と返信した。なぜならシトロエンが大好きで、「エグザンティア」や「C5」に乗ってきたから(ついでに「DS3」にも)! ハイドロ亡き後のシトロエン/DSの最高級セダンがどんな乗り味なのか、とっても気になるぅ。

せっかくなので、現「C5ツアラー」オーナーの担当K(カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当者)も呼ぶことにした。シトロエンにうるさいマニアが2人そろえば、より正確な評価が可能なはずである。

午後8時。サクライ君がDS 9でやってきた。ボディーが真っ黒で、スタイリングはよくわからないが、「なんかちょっと違うな」という印象だ。

K:なんかちょっと違いますね。
オレ:われわれ守旧派が期待する、シトロエン/DSらしいアバンギャルドさとはちょっと違うよねぇ。

とはいうものの、暗すぎてよくわからないので、辰巳PAでじっくり拝見することにして、まずは出撃だ。

オレ:ところで乗り味はどうなの? フワフワなの?
サクライ:いやぁ、それがしっかりしてるんですよ。いい意味で。
オレ:えっ、シトロエンがしっかりしてて、いい意味なんてあり得るの!?
サクライ:それがあるんです。

今回は夜の首都高に、DSブランドの新たな旗艦「DS 9」で出撃。いつもとひとつ違うのは、現「シトロエンC5ツアラー」オーナーの担当K(カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当者)を招集し、同行してもらったことである。
今回は夜の首都高に、DSブランドの新たな旗艦「DS 9」で出撃。いつもとひとつ違うのは、現「シトロエンC5ツアラー」オーナーの担当K(カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当者)を招集し、同行してもらったことである。拡大
DSとしては初となるフォーマルサルーンの「DS 9」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4940×1855×1490mmと、実に堂々としたもの。今回試乗した純ガソリンの上位グレード「オペラ」は車両本体価格が699万9000円と、こちらも堂々としたものである。
DSとしては初となるフォーマルサルーンの「DS 9」。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4940×1855×1490mmと、実に堂々としたもの。今回試乗した純ガソリンの上位グレード「オペラ」は車両本体価格が699万9000円と、こちらも堂々としたものである。拡大
かつて7年半を伴(とも)にした「シトロエン・エグザンティア ブレーク」。過去所有した50台以上のクルマのなかで、最も長く乗ったのがこれだ。
かつて7年半を伴(とも)にした「シトロエン・エグザンティア ブレーク」。過去所有した50台以上のクルマのなかで、最も長く乗ったのがこれだ。拡大
カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当Kの愛車「シトロエンC5ツアラー」。2013年の後期型で、フワフワな足が特徴だ。
カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当Kの愛車「シトロエンC5ツアラー」。2013年の後期型で、フワフワな足が特徴だ。拡大

足のハナシになったら止まらない

走りだして約50m。

オレ:あっ! 乗り心地がステキだ!
サクライ:「DSアクティブスキャンサスペンション」といいまして、カメラが路面をスキャンして凹凸を検知し、事前に電子制御サスペンションが調整するんです。
オレ:そうなの? ハイドローリックなんとかじゃないの?
サクライ:それとは違います。

ハイドローリックなんとかとは、「C5エアクロス」の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」のこと。あれはとってもフワフワで好きだった。あれがハイドロの後継技術だと思っているのだが、DS 9はソレとは違うらしい。

実は、「乗り心地がステキだ!」と思ったのは時速30kmまでで、速度が上がるにつれDS 9の乗り味は、サクライ君が言った「しっかりしてるんですよ」になった。

実は私が乗っていたC5も、ハイドロの割にはかなりしっかりしていた。あの頃のフランス車はドイツ車コンプレックスで、やたら足を固める傾向があったのだ。DS 9も、その延長線上にあるような気がしないでもないが、どうなのだろう。

K;でも、僕のC5は、清水さんのより明らかにソフトですよ。
オレ:そうだったよね。一回乗せてもらってビックリしたけど、あれはスタッドレス(タイヤを)履いてるからって言ってなかった?
K:それもありますけど、サマータイヤでもかなりフワフワです。
オレ:そうなんだ! シトロエンも反省して、後期型はフワフワにしたのかな?

「DS 9」で首都高に乗り入れると、スピードが上がるにしたがってしっかりした乗り心地に変わっていった。搭載される1.6リッター直4ガソリンターボエンジンは最高出力225PS、最大トルク300N・mという実力。
「DS 9」で首都高に乗り入れると、スピードが上がるにしたがってしっかりした乗り心地に変わっていった。搭載される1.6リッター直4ガソリンターボエンジンは最高出力225PS、最大トルク300N・mという実力。拡大
「DS 9」のステキなサイドビュー。プラットフォームは「プジョー508」などと同じ「EMP2」で、ホイールベースは「DS 7クロスバック」より165mmも長い2940mmとなる。
「DS 9」のステキなサイドビュー。プラットフォームは「プジョー508」などと同じ「EMP2」で、ホイールベースは「DS 7クロスバック」より165mmも長い2940mmとなる。拡大
いつもの辰巳PAで車両をチェックするカーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当K。シトロエン乗りならば、やっぱり足まわりが気になるのだ。
いつもの辰巳PAで車両をチェックするカーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当K。シトロエン乗りならば、やっぱり足まわりが気になるのだ。拡大
DSブランドのフラッグシップ「DS 9」に負けないよう、辰巳PAでダンディーにキメてみた。今回試乗した車両の真っ黒なボディーカラーは「ノアールペルラネラ」という名称。
DSブランドのフラッグシップ「DS 9」に負けないよう、辰巳PAでダンディーにキメてみた。今回試乗した車両の真っ黒なボディーカラーは「ノアールペルラネラ」という名称。拡大

シロトエンは故障してナンボ!?

K:僕のは2013年式ですから、そうだと思います。『MAMA』(横浜市都筑区のフランス車専門店)に「C6」のディーゼルがあったんで、欲しいな~って東條店長に言ったら、「シトロエンマニアの間では今、C5後期型が究極ってことになりつつあります」って言われました。
オレ:そ、そうなのぉ!?

C6よりもC5の後期型が究極とはビックリだ。C6のデザインは永遠の憧れ、シトロエンデザインの極北だと思ってるけど、乗り味ならC5後期型なのかっ!?

K:でも僕のなかでは、C5みたいな、故障しないシトロエンしか知らないのは本物じゃないっていう思いがあるんです! エグザンティアみたいにブッ壊れるシトロエンじゃないとダメだって!
オレ:いや、俺のエグザンティアもあんまり壊れなかったよ。マフラーが折れたくらいで、ハイドロはスフィアすら一回も交換せず、7年間ノートラブルだった。
K:そうなんですか!? それじゃダメじゃないですかっ!
オレ:本当の本物は元祖「DS」とか、「CX」のボビンメーター付きだよねぇ。永遠の夢だよねぇ。
K:いやー憧れますねぇ。でも無理だよなぁ。あんな古いのに乗ってて、青い血を吐いて息絶えでもしたら、その場で奥さんにこんなの捨ててこいって言われちゃいますよ。
オレ:オレも青い血、一度は吐かせてみたかったよ。ドバーって。
K:青い血、憧れますねぇ。

という具合に、シトロエンファンのオッサン2人は、DS 9のことなど忘れ、サスがフワッフワで青い血を吐いて息絶える、「本当の本物のシトロエン」への憧れを吐露し続けたのでした。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

ボンネット中央を縦断する「セイバー(サーベル)」と呼ばれるライン。その表面には、クル・ド・パリ装飾(ギョーシェ彫り=パリの石畳を図案化した伝統装飾様式)が施されている。
ボンネット中央を縦断する「セイバー(サーベル)」と呼ばれるライン。その表面には、クル・ド・パリ装飾(ギョーシェ彫り=パリの石畳を図案化した伝統装飾様式)が施されている。拡大
ボンネットのセイバーをイメージして縦スジのポージング。しかしこうしたデザイン的な遊びは、守旧派が期待するシトロエン/DSらしいアバンギャルドさとはちょっと違うような気がする。
ボンネットのセイバーをイメージして縦スジのポージング。しかしこうしたデザイン的な遊びは、守旧派が期待するシトロエン/DSらしいアバンギャルドさとはちょっと違うような気がする。拡大
キャビン全体をトーンを抑えた赤のレザーで仕立て上げた「オペラ」インテリア。ダッシュボードの中央には、エンジンのスタート/ストップスイッチを押すとくるりと顔を出すB.R.M製のアナログクロックが備わっている。
キャビン全体をトーンを抑えた赤のレザーで仕立て上げた「オペラ」インテリア。ダッシュボードの中央には、エンジンのスタート/ストップスイッチを押すとくるりと顔を出すB.R.M製のアナログクロックが備わっている。拡大
「DS 9」のリアシートで、カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当K(写真左)とフランス車のポーズ。シトロエンの足まわり談議が大いに盛り上がった首都高出撃の夜であった。
「DS 9」のリアシートで、カーマニア兼『週刊SPA!』のクルマコラム担当K(写真左)とフランス車のポーズ。シトロエンの足まわり談議が大いに盛り上がった首都高出撃の夜であった。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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