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日産アリアB6(FWD)

迷える幸せ 2022.06.03 試乗記 高平 高輝 「日産アリア」は、さすが最新の電気自動車(EV)! とうならされる力作だ。2010年にデビューした「リーフ」で課題とされていたポイントを見事にクリアし、優れたドライバビリティーを手にしている。300km余りをドライブした印象を報告する。

忘れたかけたころに

いよいよ日本のEVかいわいもにぎわってまいりました。やはり現物が走りださないと、どんなに派手な前宣伝を流したとしても始まらないというものでしょう。それどころか、1年ほど前だが、知り合いから「あのキムタクが宣伝してたカッコいいクルマ、もう売ってないの?」と聞かれ、「いやいや、まだ売ってないんですよ」と答えたのは本当の話である。何しろアリアが発表されたのはほぼ2年前、先行受注限定車「リミテッド」の予約受け付けを開始したのが1年前、いかにコロナ禍での想定外の事情があったとはいえ、世間の印象が薄れても仕方のないことである。

ようやく実際のデリバリーが始まったアリアだが、ここまで引っ張った結果、トヨタ/スバルの新型EVとハンデなしでの“よーいどん”のタイミングとなった。ユーザーにとっては直接比較検討できる選択肢が増えたのは朗報である。リーフしか現実的な選択肢がなかった12年前とは打って変わって、今やEVのなかで比較できる時代になったのである。もっともデリバリーが始まったアリアはベーシックな「B6」(と「B6リミテッド」)だけである。他に91kWhの大容量電池を積む「B9」、およびモーターを2基搭載する4WD仕様が両車にラインナップされると発表済みだが、そちらについては確実なデリバリー時期などはまだ明らかにされていない。近ごろ納車遅れや受注の一時停止などはEVに限ったことではないが、なんとも歯がゆいことである。

ようやくデリバリーが始まった「日産アリア」。試乗車は最もベーシックな「B6」のFWDモデルで、車両本体価格539万円にオプションを含めた価格は665万7732円。
ようやくデリバリーが始まった「日産アリア」。試乗車は最もベーシックな「B6」のFWDモデルで、車両本体価格539万円にオプションを含めた価格は665万7732円。拡大
エンジン車であればグリルが備わるはずの部分には光沢のあるブラックのパネルが装着される。それを挟むデイタイムランニングライトだけでなく中央の日産エンブレムも点灯する。
エンジン車であればグリルが備わるはずの部分には光沢のあるブラックのパネルが装着される。それを挟むデイタイムランニングライトだけでなく中央の日産エンブレムも点灯する。拡大
タイヤ&ホイールは19インチ。タービンのような形状のホイールが目を引く。
タイヤ&ホイールは19インチ。タービンのような形状のホイールが目を引く。拡大
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反省が生かされている

日産のEV第2弾アリアは他の最新世代EV同様のSUVタイプである。全長は4595mm、ホイールベースは2775mmで、「トヨタbZ4X」(全長4690mm、ホイールベース2850mm)に比べてひと回り小さい(というか短い)。bZ4Xはそのぶん搭載電池容量も71.4kWhと大きく、WLTCモードでの走行距離は150kW(204PS)のモーターを積むFWDモデルで559kmと発表されている。

いっぽう同じく前輪を駆動するアリアB6のモーターの最高出力は「リーフe+」と同じ160kW(218PS)、最大トルクは300N・m、リチウムイオン電池容量は66kWhで一充電走行距離はWLTCモードで470kmという。左右フロントフェンダーには急速と普通充電ポートがそれぞれ設けられており、満充電までの時間は200V・6kWの普通充電でおよそ12時間、3kWでは同じく25.5時間、急速充電は130kWまで対応しているという。最近普及しつつある90kW充電器の場合は約45分で80%まで充電できるとされている。

最新のアリアには当然バッテリーの冷却システムが備わっており、この点がリーフとの大きな違いだ。62kWhの大型バッテリーを積むe+であってもリーフにはアリアや軽EV「サクラ」が備える電池冷却システムが採用されていない(正確には空冷式)。したがってリーフ(特に初代モデル)は夏の高速道路走行後など、バッテリー温度が高い場合は充電効率が落ちる、あるいは充電そのものを受け付けないなどの不具合が度々報告されていたのだ。

ボディーの全長は4595mmでホイールベースは2775mm。ライバルとなるトヨタ&スバルの最新EVよりもひと回りコンパクトだ。
ボディーの全長は4595mmでホイールベースは2775mm。ライバルとなるトヨタ&スバルの最新EVよりもひと回りコンパクトだ。拡大
スエード調素材とウッド調パネルが多用された室内は上質感にあふれている。センターコンソールは電動で前後にスライドする。
スエード調素材とウッド調パネルが多用された室内は上質感にあふれている。センターコンソールは電動で前後にスライドする。拡大
エアコンの操作部はウッド調パネルに埋め込まれたタッチスイッチ式。システムをオンにしたときだけ表示される。
エアコンの操作部はウッド調パネルに埋め込まれたタッチスイッチ式。システムをオンにしたときだけ表示される。拡大
シフトセレクターの後方にはドライブモードセレクターと駐車支援機能、ワンペダルドライブの「e-Pedal」のスイッチをレイアウト。エアコンパネルと似ているが、こちらは少し押し込めるようになっている。
シフトセレクターの後方にはドライブモードセレクターと駐車支援機能、ワンペダルドライブの「e-Pedal」のスイッチをレイアウト。エアコンパネルと似ているが、こちらは少し押し込めるようになっている。拡大

最新型は滑らかだ

アリアB6の一充電走行距離は前述のとおり470kmとされているが、都内から河口湖を往復した行程の平均電費は車載モニターによれば6km/kWhに届かないぐらいだった。ということは実質400km弱が不安なく使えるレンジと思われる。今回はほとんど山道を走るセクションがなかったからもう少し伸びるかと思ったが、やはりEVは高速道路で電費が向上するわけではないことを忘れてはいけない。ただし、表示される航続距離はかなり信頼できるから、以前のリーフのように神経質になる必要はない。

最新のEVの例にもれず、アリアもドライバビリティーを、すなわち現実の路上での扱いやすさを重視して洗練されている。以前のように走りだしからグイッと立ち上がるトルクや強力な回生ブレーキをことさらに強調するのではなく(いわゆるワンペダルドライブは別にスイッチが設けられている)、滑らかでスムーズな操作がしやすく、また踏み込めばなかなか強力な加速を見せる。EVは微妙な操作に滑らかに反応するよう制御するほうが難しいというが、さすがに最新のアリアは抜かりがない。

試乗車には一定条件下でのハンズオフ走行が可能な「プロパイロット2.0」が装備されていたが、これはヘッドアップディスプレイやダブルシャークフィンアンテナ、パノラミックガラスルーフなどとともにセットオプション、さらにナッパレザーシートなども同様で、539万円の本体価格に120万円以上のオプションが乗っかっている。補助金を見込んだとしてもかなりの高額車である。

フロントに搭載された駆動用モーターは最高出力218PSと最大トルク300N・mを発生。ダッシュの力強さをアピールするのではなく、スムーズに走れるセッティングだ。
フロントに搭載された駆動用モーターは最高出力218PSと最大トルク300N・mを発生。ダッシュの力強さをアピールするのではなく、スムーズに走れるセッティングだ。拡大
ステアリングホイールは2本スポークタイプ。試乗車にはオプションの「プロパイロット2.0」が装着されていたが、ハンズオフ走行を伴わない「プロパイロット」は標準装備となる。
ステアリングホイールは2本スポークタイプ。試乗車にはオプションの「プロパイロット2.0」が装着されていたが、ハンズオフ走行を伴わない「プロパイロット」は標準装備となる。拡大
液晶式メーターパネルは12.3インチの大画面。写真のようにマップなども映し出せる。
液晶式メーターパネルは12.3インチの大画面。写真のようにマップなども映し出せる。拡大
センタースクリーンも12.3インチ。写真は現在のバッテリー残量でどこまで走れるかを表示したところ(左)。マップに重ねられるので分かりやすい。
センタースクリーンも12.3インチ。写真は現在のバッテリー残量でどこまで走れるかを表示したところ(左)。マップに重ねられるので分かりやすい。拡大

乗り心地だけもう少し

bZ4Xよりボディーサイズはひと回り小さいアリアだが、室内はむしろ広々としている。前席の足元もリアシートのレッグルームも十分に広いが、ただしトヨタのbZ4Xと同じように後席フロアがやや高く、シートクッションとの高低差が十分ではないために座り心地はもうひとつ。太ももが持ち上がってお尻部分だけに体重がかかる格好となって、長時間だとちょっと心配だ。

発表されたばかりの軽EVサクラも同様だが、日本伝統のモチーフを取り入れたインテリアは簡潔で落ち着いた雰囲気だ。アリアの場合は「組子」で内外装に凝った造作がちりばめられているが、明るい光の下で見ると、いかにもプラスチック然と映ることもあるその見栄えをどう捉えるかは人によるだろう。モダンなスマート家電のように各種スイッチを内蔵した木目調パネルも同様、それと光の具合によってはシステムのオン/オフが見にくい点が惜しい。

最後にもうひとつだけ、スムーズで洗練されたパワートレインに比して乗り心地が落ち着かないことが残念だ。良路では滑らかなのだが、舗装がうねった郊外のバイパスや高速道路、あるいはジョイントが連続する都市高速のような場面では、常に細かい上下動が収まらない。実際アリアを背後に従えてトンネルを走っていると、LEDヘッドランプの光が細かく上下動し、色合いが変化することがルームミラーに映って気にかかる。これだと先行車の迷惑になっているんじゃないかと心配にもなる。どうも細かいことが気になる性格ですみません。ぜひ焦らずに実際に試乗してこれらの確認をお勧めする。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

ナッパレザーシートは電動調整機能やベンチレーターなどとのセットオプション。標準は合皮とスエード調のコンビ表皮で、ブラックとホワイトから選べる。
ナッパレザーシートは電動調整機能やベンチレーターなどとのセットオプション。標準は合皮とスエード調のコンビ表皮で、ブラックとホワイトから選べる。拡大
後席の足元まわりは広々としているが、床面と座面との高低差が小さいのが床下に大量のバッテリーを抱える最新EVならではの悩みどころ。
後席の足元まわりは広々としているが、床面と座面との高低差が小さいのが床下に大量のバッテリーを抱える最新EVならではの悩みどころ。拡大
後席用にもエアコン吹き出し口を完備。USBポートは前席ともどもタイプAとタイプCがそろってレイアウトされる。
後席用にもエアコン吹き出し口を完備。USBポートは前席ともどもタイプAとタイプCがそろってレイアウトされる。拡大
車体の左側には急速充電用ポートが、右側(写真)には普通充電用ポートが備わっている。
車体の左側には急速充電用ポートが、右側(写真)には普通充電用ポートが備わっている。拡大

テスト車のデータ

日産アリアB6

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1850×1665mm
ホイールベース:2775mm
車重:1960kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:218PS(160kW)/5950-1万3000rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-4392rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:470km(WLTCモード)
交流電力量消費率:166Wh/km(WLTCモード)
価格:539万円/テスト車=665万7732円
オプション装備:BOSEプレミアムサウンドシステム&10スピーカー(13万2000円)/シート地<ナッパレザー>+抗菌仕様シート+運転席パワーシート<スライド、リクライニング、前後独立リフター、4ウェイランバーサポート>+前席ベンチレーション(30万8000円)/特別塗装色<ディープオーシャンブルー×ミッドナイトブラック>(8万8000円)/プロパイロットリモートパーキング+ステアリングスイッチ<アドバンストドライブ設定、オーディオ、ハンズフリーフォン、プロパイロット2.0>+ヘッドアップディスプレイ<プロパイロット2.0情報表示機能、カラー表示>+アドバンストアンビエントライティング+ダブルシャークフィンアンテナ+パノラミックガラスルーフ<電動チルト&スライド、電動格納シェード、リモート機能>+プロパイロット2.0(57万5300円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水 12カ月<フロント+フロントドアガラス>(1万1935円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万7697円)/フロアカーペット<石庭調>(7万4800円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1059km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:306.6km
参考電力消費率:5.7km/kWh(車載電費計計測値)

日産アリアB6
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