人気の理由はクルマだけじゃない

現場のムードを知るべく、先日ボクは地元の日産ディーラーに行ってみた。ショールームの番頭たる営業部長のモランディーニさんも、ジュークの販売が極めて好調であるとホクホク顔だ。ショールームに置いてある白い1台も、近いうちに買い手がつくだろう。売れ筋はFFモデルという。

しかし彼の説明からは、欧州における、もうひとつの日産の状況も浮かびあがった。「日産キューブ」は前評判とは裏腹に販売が伸びず、残る分を売り終えた時点でカタログから消える。スズキ・インド工場で製造されている「アルト」の姉妹車「ピクソ」も、出足は予想を超えてスローだ。そして日産インド工場で造られる欧州仕様「ミクラ/マイクラ(日本名:マーチ)は、先日ようやくディーゼル仕様が追加されたばかりで、それはまだ店にやって来ない。ディーゼルがないと欧州市場では話にならないのだ。

そうしたなかでジュークは欧州の日産ディーラーにとって、いわば救世主だったに違いない。その昔、日本で「十九の春に」というフォークソングがあったが、まさに「ジュークの春」である。

帰り際、販売店オーナーの御曹司で営業所長のトゾーニ氏が外出先から帰ってきたので写真を撮らせてもらうことにした。ワンカット撮ったあと、トゾーニ氏が「もういちど撮って」と言う。聞けば「ショールーム接客時のセールスに課せられた社員バッジを忘れてしまった」というのだ。
この日本的マジメさ、大都市のフラッグシップストアならいざ知らず、ボクの住むような地方都市で、他ブランドのディーラーではまずみられない。日産をヨイショする気はないけど、こうしたクルマ以外のソフト部分の姿勢や対応も、ジュークの好評につながっているに違いない。

ちなみにトゾーニさんのディーラーは、イタリアの日産ディーラーにおける顧客満足度コンテストでナンバーワンを獲得している。そのおりに訪日し、ゴーン会長と握手した写真も誇らしげに飾られている。彼らにとっては、日本の男子が「AKB48」のメンバーと握手するのと同じくらい光栄なことだろう。
モランディーニさんとトゾーニさんには、ふたたびゴーン握手会? に参加できるよう、ジュークを売りまくり、かつ顧客サービスを向上していただこう。

(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

わが街の日産ディーラー。
わが街の日産ディーラー。 拡大
モランディーニさん(左)とトゾーニ所長(右)。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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