フェラーリ初の4ドアスポーツ「プロサングエ」がデビュー

2022.09.14 自動車ニュース
フェラーリ・プロサングエ
フェラーリ・プロサングエ拡大

伊フェラーリは2022年9月13日(現地時間)、同ブランド初となる4ドアの量産モデル「プロサングエ」を発表した。

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薄型のヘッドランプが特徴的なフロントフェイス。対して、ラジエーターやブレーキを冷却するための大開口のエアインテークが設けられている。
薄型のヘッドランプが特徴的なフロントフェイス。対して、ラジエーターやブレーキを冷却するための大開口のエアインテークが設けられている。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4973×2028×1589mm。ホイールベースは3018mmとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4973×2028×1589mm。ホイールベースは3018mmとなっている。拡大
ドアはいわゆる「観音開き」。前後ドアの中間には高強度スチール製のBピラーが存在する。
ドアはいわゆる「観音開き」。前後ドアの中間には高強度スチール製のBピラーが存在する。拡大
「プロサングエ」が0-100km/h加速に要する時間は3.3秒。最高速は310km/h以上と公表される。
「プロサングエ」が0-100km/h加速に要する時間は3.3秒。最高速は310km/h以上と公表される。拡大

比類なき4ドアモデル

ついに、プロサングエがその姿をあらわにした。長らく公然とうわさされてきたフェラーリの“新しい形”。それは75年にわたるマラネッロの歴史において初めての“4ドアモデル”となった。

その名も事前のうわさどおり。「Purosangue(プロサングエ)」はイタリア語で純血=サラブレッドを意味する。たとえ世に言うSUVスタイルに見えたとしても、この名前に込められているのは、これまでのマラネッロ産の駿馬(しゅんめ)と同様、真に“スポーツカー”であるという宣言だ。「すでに存在しているスーパーSUVとは比較できない存在だ」と彼らは主張する。

その根拠は何か。ひとつめはV12エンジンを積んだことだ。マラネッロにとって、フロントに12気筒エンジンを積むことは創業以来の伝統である。プロサングエにもそれは踏襲され、「812」用と同じく「エンツォ・フェラーリ」用V12の流れをくむ、6.5リッターのF140系ユニットをベースに主要部品にほぼ新設計というべき改良を施して搭載する。実用領域でのトルク性能を大幅に引き上げつつ、725PSという最高出力と8250rpmというレブリミットを実現する自然吸気エンジンである(型式名はF140IA)。

次に、そのエンジンをフロントアクスルより後方、キャビン寄りの低い位置に押し込んだこと。つまり、既存の12気筒FRモデルと同様にフロントミドシップとしたことを挙げておこう。あわせて独創的な4WDシステムを「4RM-S Evo」へと大幅に進化させて組み合わせ、トランスアクスルレイアウトの軽量かつ低重心な改良型8段DCTを採用することで、49:51という驚異の前後重量配分を実現した。SUVスタイルのモデルで、完全なフロントミドシップでありながらフロントヘビーではないモデルなど、かつて存在しない。

ドライバー側と助手席側でほぼ対称なラインを描くインストゥルメントパネル。助手席側には液晶モニターが配置される。
ドライバー側と助手席側でほぼ対称なラインを描くインストゥルメントパネル。助手席側には液晶モニターが配置される。拡大
コックピット周辺は「SF90ストラダーレ」のものをヒントにデザインされている。
コックピット周辺は「SF90ストラダーレ」のものをヒントにデザインされている。拡大
「プロサングエ」の乗車定員は4人。その車内では「全員が並外れた快適性を味わえる」とうたわれる。
「プロサングエ」の乗車定員は4人。その車内では「全員が並外れた快適性を味わえる」とうたわれる。拡大
後ろヒンジで開くリアドア(写真)のオープン角度は最大79度。フロントドアは同63度となっている。
後ろヒンジで開くリアドア(写真)のオープン角度は最大79度。フロントドアは同63度となっている。拡大
バケットタイプのリアシートはヒーター付き。リクライニング可能で、背もたれを前方に倒せば荷室の容量を拡大できる。
バケットタイプのリアシートはヒーター付き。リクライニング可能で、背もたれを前方に倒せば荷室の容量を拡大できる。拡大

新開発サスがキーポイント

3つ目としてボディーサイズを挙げよう。そのディメンションは全高を除いて、2ドア4シーターの「GTC4ルッソ」とほとんど変わらない。乱暴に言えば、ルッソを4ドアにして全高を20cmほど上げればプロサングエになる。けれども話はそう単純ではなく、ルッソの体形を保ったまま4ドアにするためにはほかの苦労があった。それを解決したのは、マラネッロが“ウエルカムドア”と呼ぶ観音開きのドアスタイルだ。リアドアを後ろヒンジとしたことでホイールベースの延長を防ぐと同時に、乗降性や使い勝手がはるかに向上し、軽量化や高剛性化にも寄与している。ちなみにリアドアは、外からは小さなレバーで自動開閉でき、内側からはスイッチひとつで閉めることができる(内側から開ける場合のみ半自動)。

車高アップにはさらに大きな問題があった。ルッソの車高を上げただけでは、プロサングエをSUVスタイルにすることはできても、スポーツカーとして成立させることはできなかったのだ。車高を上げると運動性能は確実に落ちるからだ。

実を言うと4ドアフェラーリへの顧客からの期待や要望は決して新しいものではない。創業者のエンツォ自身を筆頭に4シーターフェラーリの需要は堅実に存在してきたし、なかにはもっと実用的なモデルの登場を望む声もあった(過去には「フェラーリ・ピニン」といった4ドアコンセプトもつくられている)。21世紀になってからは、ちまたでSUVブームが起こり、マラネッロ産のそれを望む声も少なくなかった。けれどもマラネッロはSUVを検討はしても企画はしなかった。他の跳ね馬と同様にスポーツカーのように走らせるためのテクノロジーが存在しなかったからだ。

今回、この実用的なスタイルを実現し、かつ、マラネッロ産駿馬として成立させるために最も寄与したテクノロジーが、全く新しいアクティブサスペンションシステムだった。カナダ・マルティマチック社製「トゥルー・アクティブ・スプール・バルブ(TASV)システム」を持つダンパーがその要諦(ようてい)だ。48Vで駆動する縦長の電気モーターがセンサー類とともに各輪に添えられており、他のアクティブサスよりも高速に制御することで、ボディーの姿勢やロールセンターを適切にコントロールする。それにより、ようやく背の高いモデルでもこれまでの12気筒FRフェラーリと変わらぬ走りを手に入れた、ということらしい。

ルーフはカーボンファイバー製。フロントにエンジンを搭載するものの、49:51という前後重量配分を実現している。
ルーフはカーボンファイバー製。フロントにエンジンを搭載するものの、49:51という前後重量配分を実現している。拡大
ボンネットは前ヒンジで開閉する。その下には自然吸気のV12エンジンが縦置きされる。
ボンネットは前ヒンジで開閉する。その下には自然吸気のV12エンジンが縦置きされる。拡大
6.5リッターV12エンジンの最高出力は725PS。2100rpmという低回転域から、最大トルク(716N・m)の80%を発生する。
6.5リッターV12エンジンの最高出力は725PS。2100rpmという低回転域から、最大トルク(716N・m)の80%を発生する。拡大
「プロサングエ」のデリバリー開始時期は、2023年の第2四半期になる見込み。欧州市場での価格は39万ユーロ(約5600万円)とされる。
「プロサングエ」のデリバリー開始時期は、2023年の第2四半期になる見込み。欧州市場での価格は39万ユーロ(約5600万円)とされる。拡大

“ドル箱量販モデル”にはならない

最後に内外装のデザインについて簡単に触れておく。ご覧のとおり、いかにもFRスポーツカーらしい筋肉質なエクステリアは、特にリアフェンダーの大きさとリアオーバーハングの短さが目立つ。前後バンパーと両サイド、前後フェンダーが一体となって見えるフローティング構造を採用し、空力的にも細心の注意が払われた。ちなみにロアボディーは標準がマットブラックもしくはグロスブラックで、カーボンファイバーはオプションとのこと。

ウエルカムドアを開ければ、「ローマ」で初めて採用された“デュアルコックピットコンセプト”の発展版を見ることができる。4座ともにバケットタイプのシートを置き、ファミリーや仲間と一緒にフェラーリを体感できることがそのコンセプトの基本だ。

マラネッロやロイヤルカスタマーにはもちろんのこと、われわれメディアやカーファンにとっても全く新しい経験となりそうなプロサングエ。高剛性スペースフレームボディー構造や新たなABSブレーキシステム、各種シャシー制御など語るべきポイントはまだまだ多く、筆者もまた多数の発見と気づきがあったが、それはまたあらためて報告したい。

最後に、この新型車が、例えば“ポルシェモデル”(SUVを大量生産してその利益でスポーツカーを開発する仕組み。ランボルギーニやアストンマーティンもそうだ)でつくられるこれまでの量産型スーパーSUVとは全く違う存在になることを告げて締めくくろう。

プロサングエは、“2階でアッセンブリ―される”。要するにマラネッロは、このプロサングエ用に新たな工場など必要としなかった。つまり、大量につくる気などサラサラないのであり、そのエクスクルーシブさは、これまでのフェラーリと同様に保たれる(年間の生産台数はブランド全体の2割程度、つまり2000台レベル)。それゆえの欧州価格=39万ユーロ(約5600万円)なのだ。

フェラーリ・プロサングエのデリバリー開始は、2023年の第2四半期が予定されている。

(文=西川 淳)

【フェラーリ・プロサングエのスペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4973×2028×1589mm
ホイールベース:3018mm
車重:2033kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:6.5リッターV12 DOHC 48バルブ
トランスミッション:8段AT(DCT)
最高出力:725PS(533kW)/7750rpm
最大トルク:716N・m(73.0kgf・m)/7000rpm
タイヤサイズ:(前)255/35R22/(後)315/30R23
ブレーキサイズ:(前)398×38mm/(後)380×34mm
燃料タンク容量:100リッター
トランク容量:473リッター
最高速度:310km/h以上
0-100km/hの加速時間:3.3秒
0-200km/hの加速時間:10.6秒
100-0km/hの制動距離:32.8m
200-0km/hの制動距離:129m
燃料およびCO2排出量:ホモロゲーション取得申請中

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