厚く支持される技巧派コンパクトミニバンがさらに進化
【徹底解説】新型トヨタ・シエンタ 2022.10.05 ニューモデルSHOWCASE 誕生以来、多くのファンに支持されてきたトヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジ。扱いやすいサイズ感はそのままに、多方面で大きな進化を遂げた。3代目となる新型の実力を、燃費や使い勝手、装備の充実度と、多角的な見地で徹底解剖する。根強い人気を誇る“二強”の一角
トヨタ・シエンタは、3列シートをもつミニバンとしては国産最小クラスである。同車格のライバルは現在「ホンダ・フリード」のみで、ともに全長は4.2m台後半、全幅は5ナンバー枠におさまる1.7m弱である。両側にスライドドアをもち、1.5リッターエンジンの純ガソリン車と1.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドをラインナップする点も共通する。似たようなサイズ(といっても全長が少し大きい)の3列シーターとしては、商用車ベースの「日産NV200バネット」のワゴンもあるが、直接的な競合車とはいいがたい。
初代シエンタが登場した2003年は、1990年代後半から拡大の一途をたどっていた国産ミニバンブームが、まさにピークを迎えた時期だった。当時は国産各社があらゆるサイズのミニバンを世に問うており、2003年時点ではフリードの前身たる「ホンダ・モビリオ」に「日産キューブキュービック」、そしてこれらより少し大きい「三菱ディオン」など、コンパクトクラスにもミニバンがひしめいていた。
その後、ミニバンブームが収束して、日産と三菱はコンパクトミニバンから撤退。当のトヨタも2008年にダイハツOEMの「パッソセッテ」(ダイハツ版は「ブーンルミナス」)を投入することで、いったんはシエンタの幕引きにかかる。しかし、絶妙なサイジングと使い勝手のいいスライドドアをもつシエンタへの支持は根強く、2010年8月に一度は販売終了となったものの、2011年5月には法規対応を主としたマイナーチェンジを受けて異例の復活を遂げた。逆にシエンタの後継機種と目されていたパッソセッテは、2012年春に3年強という短命で販売を終了した。
こうして確固たる地位を得たシエンタは、2015年に2代目にフルモデルチェンジ。同じくミニバン淘汰(とうた)の時代を生き残ったフリードとともに、メーカーにとって国内市場で欠かせない存在として定着した。この2022年8月に登場した新型は、その3代目のモデルにあたる。
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【ラインナップ】
グレードや駆動系にかかわらず5人乗りが選択可能に
新型シエンタに用意されるパワートレインは先代同様に、1.5リッターハイブリッドと1.5リッターの純ガソリンエンジンの2種類である。ただし、同車のハードウエアはパワートレインも含めていわゆる「TNGA」世代のものへと完全刷新されている。それもあって、先代では純エンジン車のみの設定だった4WDが、新型では逆にハイブリッド車のみの設定になった。
もうひとつの注目が、先代の途中で追加された2列シートの5人乗り仕様である。当初は「ファンベース」の名をもついくつかのグレード(それもFF車のみ)を用意するにとどまったが、新型コロナ感染症のまん延をきっかけに車中泊ユースが急増。事前の予想以上の人気バリエーションに成長した。それもあって新型では、2列シーターは特定の名を冠したグレードではなく、すべてのグレードで選択できる“仕様”というあつかいとなった。と同時に、先代では6人乗りと7人乗りが選べた3列シート仕様は、2列目ベンチシートの7人乗りに統一。これにより新型シエンタのシートバリエーションは、全グレード、全パワートレインに5人乗りと7人乗りが設定されるかたちとなった。
また、従来のシエンタでも好評だった福祉車両も、車いすを座ったままリアゲートから乗せられる「車いす仕様車」と、自分で運転する人向けに運転補助装置を取り付けられる「フレンドマチック取付車」がともに健在である。
とくに車いす仕様車では、狭い場所で、しかもリアゲートを開けるだけで車いすの乗降を可能としたショートスロープタイプの「タイプIII」を新たに追加。こうしたショートスロープが使えるのも、リアに車高が変わるエアサスを装備するシエンタ(の車いす仕様車)ならではのメリットだ。
【主要諸元】
グレード名 | X | X | G | G | Z | Z | ハイブリッドX | ハイブリッドX | ハイブリッドX E-Four |
ハイブリッドX E-Four |
ハイブリッドG | ハイブリッドG | ハイブリッドG E-Four |
ハイブリッドG E-Four |
ハイブリッドZ | ハイブリッドZ | ハイブリッドZ E-Four |
ハイブリッドZ E-Four |
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基本情報 | 新車価格 | 195万円 | 199万円 | 230万円 | 234万円 | 252万円 | 256万円 | 238万円 | 242万円 | 257万8000円 | 261万8000円 | 265万円 | 269万円 | 284万8000円 | 288万8000円 | 287万円 | 291万円 | 306万8000円 | 310万8000円 |
駆動方式 | FF | FF | FF | FF | FF | FF | FF | FF | 4WD | 4WD | FF | FF | 4WD | 4WD | FF | FF | 4WD | 4WD | |
動力分類 | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | エンジン | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | |
トランスミッション | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | CVT | |
乗車定員 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | 5名 | 7名 | |
WLTCモード燃費(km/リッター) | 18.4 | 18.3 | 18.4 | 18.3 | 18.4 | 18.3 | 28.8 | 28.5 | 25.3 | 25.3 | 28.4 | 28.2 | 25.3 | 25.3 | 28.4 | 28.2 | 25.3 | 25.3 | |
最小回転半径 | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | 5.0m | |
エンジン | 形式 | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列3気筒DOHC |
排気量 | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | 1490cc | |
最高出力 (kW[PS]/rpm) | 88[120]/6000 | 88[120]/6000 | 88[120]/6000 | 88[120]/6000 | 88[120]/6000 | 88[120]/6000 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | 67[91]/5500 | |
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) | 145[14.8]/4800-5200 | 145[14.8]/4800-5200 | 145[14.8]/4800-5200 | 145[14.8]/4800-5200 | 145[14.8]/4800-5200 | 145[14.8]/4800-5200 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | 120[12.2]/3800-4800 | |
過給機 | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | なし | |
燃料 | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | レギュラー | |
フロントモーター | 最高出力 (kW[PS]) | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | 59[80] | ||||||
最高トルク (N・m[kgf・m]) | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | 141[14.4] | |||||||
リアモーター | 最高出力 (kW[PS]) | 2.2[3.0] | 2.2[3.0] | 2.2[3.0] | 2.2[3.0] | 2.2[3.0] | 2.2[3.0] | ||||||||||||
最高トルク (N・m[kgf・m]) | 44[4.5] | 44[4.5] | 44[4.5] | 44[4.5] | 44[4.5] | 44[4.5] | |||||||||||||
寸法・重量 | 全長 | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm | 4260mm |
全幅 | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | |
全高 | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1695mm | 1715mm | 1715mm | 1695mm | 1695mm | 1715mm | 1715mm | 1695mm | 1695mm | 1715mm | 1715mm | |
ホイールベース | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | 2750mm | |
車両重量 | 1270kg | 1290kg | 1280kg | 1300kg | 1280kg | 1300kg | 1330kg | 1350kg | 1380kg | 1400kg | 1340kg | 1360kg | 1390kg | 1410kg | 1350kg | 1370kg | 1400kg | 1420kg | |
タイヤ | 前輪サイズ | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 |
後輪サイズ | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 | 185/65R15 |
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【パワートレイン/ドライブトレイン】
ハードウエアの刷新で燃費性能が大幅に向上
1.5リッターハイブリッドと純1.5リッターガソリンエンジン……というパワートレインの構成は、文字だけだと先代から変わりないように見えるが、先述のとおり、実際のハードウエアは別物だ。新型シエンタの心臓部は、先に発売された「ヤリス」「ヤリス クロス」、そして新型「アクア」といったトヨタの最新コンパクトカー群と同様に、「ダイナミックフォース」と呼ばれる新世代の3気筒エンジンをベースとする。純エンジンと組み合わせられる変速機も、発進ギアを備えた最新の「ダイレクトシフトCVT」だ。
新世代パワートレインゆえに、動力性能と燃費の両面で先代より明確に進化している。ハイブリッドは中心となるエンジンのパワーとトルクのアップ(74PS→91PS、111N・m→120N・m)もあって、システム出力も先代の100PSから116PSに向上。いっぽうで、燃費(WLTCモード、以下同)も7人乗り・FF同士の比較で先代の22.8km/リッターから28.2~28.5km/リッターへと、大幅に進化した。
こうした傾向は1.5リッターの純エンジン車も同じ。最高出力で11PS(109PS→120PS)、最大トルクで9N・m(136N・m→145N・m)とエンジン性能を着実にアップさせつつも、たとえば7人乗りFFの場合で、先代の17.0km/リッターに対して新型は18.3km/リッターと、燃費も改善している。
こと燃費性能については、競合車のホンダ・フリード(FFのハイブリッド車で20.9km/リッター、同1.5リッター純エンジン車で17.0km/リッター)より、明らかに優秀だ。
4WDシステムも、後輪をモーターで駆動する「E-Four」へと刷新された。そのE-Fourが用意されるのは、前記のようにハイブリッドのみである。ほかのGA-Bプラットフォーム車では4WD車のリアサスペンションは専用開発のダブルウイッシュボーンだが、新型シエンタのそれはFF同様のトーションビームとなっている。ミニバンならではの大荷重への対応と思われる。
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【ボディーサイズ/デザイン】
この寸法こそコンパクトミニバンの最適解
日本特有の5ナンバーサイズにおさまる新型シエンタの全長と全幅は、それぞれ4260mmと1695mm。これは先代のマイナーチェンジモデルとまったくの同寸だ。2750mmというホイールベースも不変なので錯覚しそうになるが、新型シエンタは基本骨格も先代とは別物である。でありながら、全高以外の寸法に手をつけなかったのは、トヨタがこれをコンパクトミニバンの最適解と考えているからだろう。
というわけで、基本ディメンションは新旧シエンタで大差ない。シルエットもよくも悪くも見慣れたシエンタそのものなのだが、エクステリアデザインのテイストは大きく路線変更している。先代のデザインテーマが当時流行していたスポーツギアのテイストを取り入れた「アクティブ&エモーション」だったのに対して、新型はより落ち着いて、日常生活で愛着がわくちょっとイイモノ……をコンセプトに「エモーティブライフツール」をうたう。
バンパーやルーフを“シカクマル”に削り込むことでサイズを大きく見せないように工夫し、各部にブラックのプロテクターをあしらうことで頑丈なツール感を演出しているという。車体色も、先代は(マイナーチェンジで多少路線変更したものの)「エアーイエロー」や「グリーンマイカメタリック」などの鮮やかなカラーを打ち出していたが、新型では最近流行のアースカラーを中心としている。
ところで、冒頭でも述べたとおり、国内におけるコンパクトミニバンセグメントは現在、このシエンタとホンダ・フリードの2車種による独占市場である。フリードも全幅は想像どおりシエンタと同じ5ナンバー枠いっぱいで、全長も5mmしか変わらない。これまでのシエンタは、フリードに対して全高が低めであることが特徴だったが、新型は全高も20mmアップして1695mmとなった。というわけで、両車の全高差は15mm(FF車同士での比較)まで縮小。少なくともサイズ的には、両車で選ぶところはほぼなくなった。
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【インテリア/荷室/装備】
好評だったユーティリティーがさらに進化
内装色はオーソドックスな「ブラック」のほか、温かみのある2トーンの「フロマージュ」とアウトドアツールっぽい「カーキ」を用意する。収納は充実しており、前席はもちろん、セカンドシートやサードシートでもドリンクとスマホだけは置き場に困らない。こうしたあたりは、いかにも今どきのクルマっぽい。また、コンパクトカーゆえにリアエアコンは用意されないが、キャビン後方に冷風を送る「天井サーキュレーター」が新たにメーカーオプションで用意された。
シートアレンジは好評だった初代と2代目を踏襲する。7人乗りでは、セカンドが6:4分割のロングスライド付きで、サードシートがダイブイン式となるのも、“シエンタ使い”にはすっかりおなじみだ。この方式では、折りたたんだサードシートはセカンドシート下にすっかり隠れてしまう。
セカンドシート収納はフロアの低さを活用できるタンブルアップ式で、27インチの大人用自転車も楽々と積めるという。さらに、うまくやればこれにプラスして20インチの子供用自転車を積むこともできるとか。
いっぽうで、新型で大いに存在感を増した2列5乗り仕様だが、そのセカンドシートは3列7人乗りとは異なる専用設計となる。可倒機構は、座面が沈み込んで座席背面がフロアとフラットになる“チルトダウン”式で、基本的には先代のファンベースから変わっていない。ただ、折りたたみ時の高さを60mm低めて、より低いフロアに対して、よりきれいにフラット化するように改良された。その5人乗り仕様のラゲッジには、バーやフックなどを取り付けられる穴(ユーティリティーナット)もいくつか用意されており、自分なりの工夫を施す余地をあえて残している。
車体サイズの外寸にはほとんど変化はないが、新プラットフォームや“シカクマル”デザインの恩恵もあり、1~2列目のタンデムディスタンスや室内高、ヘッドクリアランスは拡大している。2列目のスライドをうまく融通すれば、身長178cmの筆者が新型シエンタに6人乗ることも可能である。
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【バイヤーズガイド】
“クルマ好き”なら純ガソリン車も要チェック
新型シエンタでは2種類のパワートレインとシートアレンジ、装備グレードを、すべて自由に組み合わせることができる。4WDが選べるのはハイブリッドだけだが、4WDでもシートレイアウトとグレードのチョイスには制限はない。
装備グレードは上から「Z」「G」「X」という3種を用意。最上級のZは、外観では金属調塗装フロントグリルに「バイビームLEDヘッドランプ」や「LEDライン発光テールランプ」などが専用装備されるほか、内装では本革巻きステアリングホイールに7インチTFT液晶メーター、ファブリック巻きのインストゥルメントパネル、運転席アームレスト、後席サンシェードなどが標準装備となる。スライドドアのハンズフリー機能はZには標準だが、その下のXでもオプションで装着可能だ。
また、最近の必須アイテムであるドライブレコーダーが一部を除き標準装備化されたのも、新型シエンタのニュースだ。前方カメラはZとGに標準で備わり、オプションで後方カメラも追加できる。このドラレコは、もっとも安価なXでもオプションで用意されている。
一般的な売れ筋は中間のGグレードと思われるが、最上級のZはその22万円高で上記の装備が手に入る。装備内容を考慮すれば、予算があるならZの買い得感は高い。さらに小さな子どものいるファミリーなら、2万7500~2万9700円のメーカーオプションとなる天井サーキュレーターは要チェック。これは一度使うと手放せなくなるタイプの効果的な装備だ。
パワートレインは予算と好みで選べばいいと思うが、1.5リッター純ガソリンエンジン車の、“低重心・低慣性マス”というGA-Bプラットフォーム車の美点を色濃く反映した軽快で正確な走りは、ちょっとしたものだ。現在のトヨタは、商品セグメントごとに独立したカンパニー制を敷いており、GA-B各車は「コンパクトカーカンパニー」が一貫して開発している。新型シエンタの開発責任者はアクアに続く鈴木啓友氏だし、“匠”という肩書で性能開発を支えた大阪晃弘氏も、GA-Bには最初のヤリスからずっと携わってきた。大阪氏によると、新型シエンタは「GA-B四部作の最後にして集大成」だそうである。実際、シャシーやパワートレインの仕立てにはこれまでの知見が総動員されているという。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。