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厚く支持される技巧派コンパクトミニバンがさらに進化

【徹底解説】新型トヨタ・シエンタ 2022.10.05 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 誕生以来、多くのファンに支持されてきたトヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジ。扱いやすいサイズ感はそのままに、多方面で大きな進化を遂げた。3代目となる新型の実力を、燃費や使い勝手、装備の充実度と、多角的な見地で徹底解剖する。

根強い人気を誇る“二強”の一角

トヨタ・シエンタは、3列シートをもつミニバンとしては国産最小クラスである。同車格のライバルは現在「ホンダ・フリード」のみで、ともに全長は4.2m台後半、全幅は5ナンバー枠におさまる1.7m弱である。両側にスライドドアをもち、1.5リッターエンジンの純ガソリン車と1.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドをラインナップする点も共通する。似たようなサイズ(といっても全長が少し大きい)の3列シーターとしては、商用車ベースの「日産NV200バネット」のワゴンもあるが、直接的な競合車とはいいがたい。

初代シエンタが登場した2003年は、1990年代後半から拡大の一途をたどっていた国産ミニバンブームが、まさにピークを迎えた時期だった。当時は国産各社があらゆるサイズのミニバンを世に問うており、2003年時点ではフリードの前身たる「ホンダ・モビリオ」に「日産キューブキュービック」、そしてこれらより少し大きい「三菱ディオン」など、コンパクトクラスにもミニバンがひしめいていた。

その後、ミニバンブームが収束して、日産と三菱はコンパクトミニバンから撤退。当のトヨタも2008年にダイハツOEMの「パッソセッテ」(ダイハツ版は「ブーンルミナス」)を投入することで、いったんはシエンタの幕引きにかかる。しかし、絶妙なサイジングと使い勝手のいいスライドドアをもつシエンタへの支持は根強く、2010年8月に一度は販売終了となったものの、2011年5月には法規対応を主としたマイナーチェンジを受けて異例の復活を遂げた。逆にシエンタの後継機種と目されていたパッソセッテは、2012年春に3年強という短命で販売を終了した。

こうして確固たる地位を得たシエンタは、2015年に2代目にフルモデルチェンジ。同じくミニバン淘汰(とうた)の時代を生き残ったフリードとともに、メーカーにとって国内市場で欠かせない存在として定着した。この2022年8月に登場した新型は、その3代目のモデルにあたる。

全長×全幅×全高=4260×1695×1695mm(4WD車の全高は1715mm)というコンパクトなサイズが特徴の「トヨタ・シエンタ」。現行型は3代目のモデルにあたり、いまやトヨタで唯一の“5ナンバー枠におさまるミニバン”となっている。
全長×全幅×全高=4260×1695×1695mm(4WD車の全高は1715mm)というコンパクトなサイズが特徴の「トヨタ・シエンタ」。現行型は3代目のモデルにあたり、いまやトヨタで唯一の“5ナンバー枠におさまるミニバン”となっている。拡大
角の取れた内外装の意匠は「シカクマル」というデザインテーマに沿ったもの。豊富な収納に(とくにドリンクホルダーは、紙パックを含むさまざまな容器に対応)、各所に装備されたUSB電源と、今日のファミリーカーに求められる機能・装備はしっかり押さえている。
角の取れた内外装の意匠は「シカクマル」というデザインテーマに沿ったもの。豊富な収納に(とくにドリンクホルダーは、紙パックを含むさまざまな容器に対応)、各所に装備されたUSB電源と、今日のファミリーカーに求められる機能・装備はしっかり押さえている。拡大
コンパクトな車体でありながら、3列7人乗りの車内空間を実現。ショルダーライン(ドアガラス下端のライン)とダッシュボード上面が同じ高さとなっているのは、車両感覚をつかみやすくするための工夫だ。
コンパクトな車体でありながら、3列7人乗りの車内空間を実現。ショルダーライン(ドアガラス下端のライン)とダッシュボード上面が同じ高さとなっているのは、車両感覚をつかみやすくするための工夫だ。拡大
ロングセラーとなった初代「シエンタ」は、一度販売終了となるも、市場の要望から復活を遂げるという数奇なモデルライフを送った。3代目となる新型も、市場に支持されるクルマとなるか。
ロングセラーとなった初代「シエンタ」は、一度販売終了となるも、市場の要望から復活を遂げるという数奇なモデルライフを送った。3代目となる新型も、市場に支持されるクルマとなるか。拡大
トヨタ シエンタ の中古車

【ラインナップ】
グレードや駆動系にかかわらず5人乗りが選択可能に

新型シエンタに用意されるパワートレインは先代同様に、1.5リッターハイブリッドと1.5リッターの純ガソリンエンジンの2種類である。ただし、同車のハードウエアはパワートレインも含めていわゆる「TNGA」世代のものへと完全刷新されている。それもあって、先代では純エンジン車のみの設定だった4WDが、新型では逆にハイブリッド車のみの設定になった。

もうひとつの注目が、先代の途中で追加された2列シートの5人乗り仕様である。当初は「ファンベース」の名をもついくつかのグレード(それもFF車のみ)を用意するにとどまったが、新型コロナ感染症のまん延をきっかけに車中泊ユースが急増。事前の予想以上の人気バリエーションに成長した。それもあって新型では、2列シーターは特定の名を冠したグレードではなく、すべてのグレードで選択できる“仕様”というあつかいとなった。と同時に、先代では6人乗りと7人乗りが選べた3列シート仕様は、2列目ベンチシートの7人乗りに統一。これにより新型シエンタのシートバリエーションは、全グレード、全パワートレインに5人乗りと7人乗りが設定されるかたちとなった。

また、従来のシエンタでも好評だった福祉車両も、車いすを座ったままリアゲートから乗せられる「車いす仕様車」と、自分で運転する人向けに運転補助装置を取り付けられる「フレンドマチック取付車」がともに健在である。

とくに車いす仕様車では、狭い場所で、しかもリアゲートを開けるだけで車いすの乗降を可能としたショートスロープタイプの「タイプIII」を新たに追加。こうしたショートスロープが使えるのも、リアに車高が変わるエアサスを装備するシエンタ(の車いす仕様車)ならではのメリットだ。

【主要諸元】

グレード名   X X G G Z Z ハイブリッドX ハイブリッドX ハイブリッドX
E-Four
ハイブリッドX
E-Four
ハイブリッドG ハイブリッドG ハイブリッドG
E-Four
ハイブリッドG
E-Four
ハイブリッドZ ハイブリッドZ ハイブリッドZ
E-Four
ハイブリッドZ
E-Four
基本情報 新車価格 195万円 199万円 230万円 234万円 252万円 256万円 238万円 242万円 257万8000円 261万8000円 265万円 269万円 284万8000円 288万8000円 287万円 291万円 306万8000円 310万8000円
駆動方式 FF FF FF FF FF FF FF FF 4WD 4WD FF FF 4WD 4WD FF FF 4WD 4WD
動力分類 エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド
トランスミッション CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT
乗車定員 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名 5名 7名
WLTCモード燃費(km/リッター) 18.4 18.3 18.4 18.3 18.4 18.3 28.8 28.5 25.3 25.3 28.4 28.2 25.3 25.3 28.4 28.2 25.3 25.3
最小回転半径 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m 5.0m
エンジン 形式 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC 直列3気筒DOHC
排気量 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc 1490cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 88[120]/6000 88[120]/6000 88[120]/6000 88[120]/6000 88[120]/6000 88[120]/6000 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500 67[91]/5500
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 145[14.8]/4800-5200 145[14.8]/4800-5200 145[14.8]/4800-5200 145[14.8]/4800-5200 145[14.8]/4800-5200 145[14.8]/4800-5200 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800 120[12.2]/3800-4800
過給機 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー
フロントモーター 最高出力 (kW[PS])             59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80] 59[80]
最高トルク (N・m[kgf・m])             141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4] 141[14.4]
リアモーター 最高出力 (kW[PS])                 2.2[3.0] 2.2[3.0]     2.2[3.0] 2.2[3.0]     2.2[3.0] 2.2[3.0]
最高トルク (N・m[kgf・m])                 44[4.5] 44[4.5]     44[4.5] 44[4.5]     44[4.5] 44[4.5]
寸法・重量 全長 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm 4260mm
全幅 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm
全高 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1695mm 1715mm 1715mm 1695mm 1695mm 1715mm 1715mm 1695mm 1695mm 1715mm 1715mm
ホイールベース 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm 2750mm
車両重量 1270kg 1290kg 1280kg 1300kg 1280kg 1300kg 1330kg 1350kg 1380kg 1400kg 1340kg 1360kg 1390kg 1410kg 1350kg 1370kg 1400kg 1420kg
タイヤ 前輪サイズ 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15
後輪サイズ 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15 185/65R15
新型シエンタのグレードは、装備の充実度に応じて「X」「G」「Z」の3種類。写真は最上級グレードZのハイブリッド車。
新型シエンタのグレードは、装備の充実度に応じて「X」「G」「Z」の3種類。写真は最上級グレードZのハイブリッド車。拡大
外観では「バイビームLEDヘッドランプ」や金属調のグリル装飾、ライン発光のLEDテールランプ、ツートンカラーのホイールキャップなどが「Z」の特徴だ。
外観では「バイビームLEDヘッドランプ」や金属調のグリル装飾、ライン発光のLEDテールランプ、ツートンカラーのホイールキャップなどが「Z」の特徴だ。拡大
インテリアではファブリックの巻かれたダッシュボードや、7インチの液晶メーター、革巻きのステアリングホイールなどが特徴となる。
インテリアではファブリックの巻かれたダッシュボードや、7インチの液晶メーター、革巻きのステアリングホイールなどが特徴となる。拡大
「ブラック」と「カーキ」(外装色がモノトーンの場合に選択可能。0円オプションの「ファンツールパッケージ」として設定)に加え、「Z」では「フロマージュ」(写真)の内装色も選べる。
「ブラック」と「カーキ」(外装色がモノトーンの場合に選択可能。0円オプションの「ファンツールパッケージ」として設定)に加え、「Z」では「フロマージュ」(写真)の内装色も選べる。拡大
シートレイアウトは3列7人乗りと2列5人乗り(写真)の2種類。3列6人乗りは廃止された。
シートレイアウトは3列7人乗りと2列5人乗り(写真)の2種類。3列6人乗りは廃止された。拡大
「ファンツールパッケージ」を選択すると内装色が「カーキ」となるほか、Bピラーがブラックではなくボディー同色となる。写真は同オプションを選択した中間グレード「G」。
「ファンツールパッケージ」を選択すると内装色が「カーキ」となるほか、Bピラーがブラックではなくボディー同色となる。写真は同オプションを選択した中間グレード「G」。拡大
「G」のインストゥルメントパネルまわり。ドアアームレストにファブリックが巻かれており、オプションで革巻きのステアリングホイールも選択できる。
「G」のインストゥルメントパネルまわり。ドアアームレストにファブリックが巻かれており、オプションで革巻きのステアリングホイールも選択できる。拡大
エントリーグレードの「X」。もっとも装備が簡素なモデルだが、それでも助手席側パワースライドドアや2個のUSB Type-Cソケット(前席用)、LED式のヘッドランプ/テールランプなどが標準装備される。
エントリーグレードの「X」。もっとも装備が簡素なモデルだが、それでも助手席側パワースライドドアや2個のUSB Type-Cソケット(前席用)、LED式のヘッドランプ/テールランプなどが標準装備される。拡大
「X」では、他のグレードとは異なり、設定される内装色は「ブラック」のみとなる。
「X」では、他のグレードとは異なり、設定される内装色は「ブラック」のみとなる。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
ハードウエアの刷新で燃費性能が大幅に向上

1.5リッターハイブリッドと純1.5リッターガソリンエンジン……というパワートレインの構成は、文字だけだと先代から変わりないように見えるが、先述のとおり、実際のハードウエアは別物だ。新型シエンタの心臓部は、先に発売された「ヤリス」「ヤリス クロス」、そして新型「アクア」といったトヨタの最新コンパクトカー群と同様に、「ダイナミックフォース」と呼ばれる新世代の3気筒エンジンをベースとする。純エンジンと組み合わせられる変速機も、発進ギアを備えた最新の「ダイレクトシフトCVT」だ。

新世代パワートレインゆえに、動力性能と燃費の両面で先代より明確に進化している。ハイブリッドは中心となるエンジンのパワーとトルクのアップ(74PS→91PS、111N・m→120N・m)もあって、システム出力も先代の100PSから116PSに向上。いっぽうで、燃費(WLTCモード、以下同)も7人乗り・FF同士の比較で先代の22.8km/リッターから28.2~28.5km/リッターへと、大幅に進化した。

こうした傾向は1.5リッターの純エンジン車も同じ。最高出力で11PS(109PS→120PS)、最大トルクで9N・m(136N・m→145N・m)とエンジン性能を着実にアップさせつつも、たとえば7人乗りFFの場合で、先代の17.0km/リッターに対して新型は18.3km/リッターと、燃費も改善している。

こと燃費性能については、競合車のホンダ・フリード(FFのハイブリッド車で20.9km/リッター、同1.5リッター純エンジン車で17.0km/リッター)より、明らかに優秀だ。

4WDシステムも、後輪をモーターで駆動する「E-Four」へと刷新された。そのE-Fourが用意されるのは、前記のようにハイブリッドのみである。ほかのGA-Bプラットフォーム車では4WD車のリアサスペンションは専用開発のダブルウイッシュボーンだが、新型シエンタのそれはFF同様のトーションビームとなっている。ミニバンならではの大荷重への対応と思われる。

寸法的には先代とほとんど変わらない3代目「シエンタ」だが、その中身は全面刷新。車両骨格にはトヨタ最新のコンパクトカー用プラットフォーム「GA-B」が用いられた。また主要骨格を結合する構造用接着剤やルーフパネルに採用されるマスチックシーラーの一部を高減衰タイプとすることで、操縦安定性、乗り心地、静粛性の向上を図っている。
寸法的には先代とほとんど変わらない3代目「シエンタ」だが、その中身は全面刷新。車両骨格にはトヨタ最新のコンパクトカー用プラットフォーム「GA-B」が用いられた。また主要骨格を結合する構造用接着剤やルーフパネルに採用されるマスチックシーラーの一部を高減衰タイプとすることで、操縦安定性、乗り心地、静粛性の向上を図っている。拡大
ハイブリッド車のパワートレインは基本的に「アクア」「ヤリス」などと共通。バッテリーには、アクアで実用化されたバイポーラ式ではなくスタンダードなニッケル水素電池を採用。4WD車のリアモーターは、他のモデルよりややパワー/トルクが低いものとなっている。
ハイブリッド車のパワートレインは基本的に「アクア」「ヤリス」などと共通。バッテリーには、アクアで実用化されたバイポーラ式ではなくスタンダードなニッケル水素電池を採用。4WD車のリアモーターは、他のモデルよりややパワー/トルクが低いものとなっている。拡大
純ガソリン車に搭載される1.5リッター直3エンジン。ダイレクトシフトCVTとの組み合わせで、力強くダイレクトな走りと優れた燃費性能の両立を図った。
純ガソリン車に搭載される1.5リッター直3エンジン。ダイレクトシフトCVTとの組み合わせで、力強くダイレクトな走りと優れた燃費性能の両立を図った。拡大
サスペンションは前がマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式。高剛性のボディーに合わせてジオメトリーを最適化しており、接地感のあるフラットな走りを追求している。
サスペンションは前がマクファーソンストラット式、リアがトーションビーム式。高剛性のボディーに合わせてジオメトリーを最適化しており、接地感のあるフラットな走りを追求している。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
この寸法こそコンパクトミニバンの最適解

日本特有の5ナンバーサイズにおさまる新型シエンタの全長と全幅は、それぞれ4260mmと1695mm。これは先代のマイナーチェンジモデルとまったくの同寸だ。2750mmというホイールベースも不変なので錯覚しそうになるが、新型シエンタは基本骨格も先代とは別物である。でありながら、全高以外の寸法に手をつけなかったのは、トヨタがこれをコンパクトミニバンの最適解と考えているからだろう。

というわけで、基本ディメンションは新旧シエンタで大差ない。シルエットもよくも悪くも見慣れたシエンタそのものなのだが、エクステリアデザインのテイストは大きく路線変更している。先代のデザインテーマが当時流行していたスポーツギアのテイストを取り入れた「アクティブ&エモーション」だったのに対して、新型はより落ち着いて、日常生活で愛着がわくちょっとイイモノ……をコンセプトに「エモーティブライフツール」をうたう。

バンパーやルーフを“シカクマル”に削り込むことでサイズを大きく見せないように工夫し、各部にブラックのプロテクターをあしらうことで頑丈なツール感を演出しているという。車体色も、先代は(マイナーチェンジで多少路線変更したものの)「エアーイエロー」や「グリーンマイカメタリック」などの鮮やかなカラーを打ち出していたが、新型では最近流行のアースカラーを中心としている。

ところで、冒頭でも述べたとおり、国内におけるコンパクトミニバンセグメントは現在、このシエンタとホンダ・フリードの2車種による独占市場である。フリードも全幅は想像どおりシエンタと同じ5ナンバー枠いっぱいで、全長も5mmしか変わらない。これまでのシエンタは、フリードに対して全高が低めであることが特徴だったが、新型は全高も20mmアップして1695mmとなった。というわけで、両車の全高差は15mm(FF車同士での比較)まで縮小。少なくともサイズ的には、両車で選ぶところはほぼなくなった。

小柄なボディーによる取り回しのしやすさも新型「シエンタ」の魅力。最小回転半径は5mと、定評のあった先代よりさらに20cmもコンパクトになった。
小柄なボディーによる取り回しのしやすさも新型「シエンタ」の魅力。最小回転半径は5mと、定評のあった先代よりさらに20cmもコンパクトになった。拡大
ホイールハウスの前後やドアパネルの下部に備わる黒いモールは、傷がついたときに簡単に交換できるようになっている。(写真:荒川正幸)
ホイールハウスの前後やドアパネルの下部に備わる黒いモールは、傷がついたときに簡単に交換できるようになっている。(写真:荒川正幸)拡大
ボディーカラーは全9種類。ただし「X」では、「ホワイトパールクリスタルシャイン」「ブラック」「ベージュ」「アーバンカーキ」の4色しか選択できない。
ボディーカラーは全9種類。ただし「X」では、「ホワイトパールクリスタルシャイン」「ブラック」「ベージュ」「アーバンカーキ」の4色しか選択できない。拡大
ミニバンらしからぬスタイリングだった先代から一転。ウィンドウやピラーを立ち気味にして車内空間をかせぎ、ユーティリティー系のクルマらしい“箱感”を強調した意匠となった新型「シエンタ」。ライバルの「ホンダ・フリード」といい、この寸法とこのデザインが、日本におけるコンパクトミニバンの最適解なのかもしれない。(写真:荒川正幸)
ミニバンらしからぬスタイリングだった先代から一転。ウィンドウやピラーを立ち気味にして車内空間をかせぎ、ユーティリティー系のクルマらしい“箱感”を強調した意匠となった新型「シエンタ」。ライバルの「ホンダ・フリード」といい、この寸法とこのデザインが、日本におけるコンパクトミニバンの最適解なのかもしれない。(写真:荒川正幸)拡大

【インテリア/荷室/装備】
好評だったユーティリティーがさらに進化

内装色はオーソドックスな「ブラック」のほか、温かみのある2トーンの「フロマージュ」とアウトドアツールっぽい「カーキ」を用意する。収納は充実しており、前席はもちろん、セカンドシートやサードシートでもドリンクとスマホだけは置き場に困らない。こうしたあたりは、いかにも今どきのクルマっぽい。また、コンパクトカーゆえにリアエアコンは用意されないが、キャビン後方に冷風を送る「天井サーキュレーター」が新たにメーカーオプションで用意された。

シートアレンジは好評だった初代と2代目を踏襲する。7人乗りでは、セカンドが6:4分割のロングスライド付きで、サードシートがダイブイン式となるのも、“シエンタ使い”にはすっかりおなじみだ。この方式では、折りたたんだサードシートはセカンドシート下にすっかり隠れてしまう。

セカンドシート収納はフロアの低さを活用できるタンブルアップ式で、27インチの大人用自転車も楽々と積めるという。さらに、うまくやればこれにプラスして20インチの子供用自転車を積むこともできるとか。

いっぽうで、新型で大いに存在感を増した2列5乗り仕様だが、そのセカンドシートは3列7人乗りとは異なる専用設計となる。可倒機構は、座面が沈み込んで座席背面がフロアとフラットになる“チルトダウン”式で、基本的には先代のファンベースから変わっていない。ただ、折りたたみ時の高さを60mm低めて、より低いフロアに対して、よりきれいにフラット化するように改良された。その5人乗り仕様のラゲッジには、バーやフックなどを取り付けられる穴(ユーティリティーナット)もいくつか用意されており、自分なりの工夫を施す余地をあえて残している。

車体サイズの外寸にはほとんど変化はないが、新プラットフォームや“シカクマル”デザインの恩恵もあり、1~2列目のタンデムディスタンスや室内高、ヘッドクリアランスは拡大している。2列目のスライドをうまく融通すれば、身長178cmの筆者が新型シエンタに6人乗ることも可能である。

前席の空気を後席へと送風することにより、空気を効率的に循環。冷気や温気の偏りを解消する天井サーキュレーター。「G」と「Z」にオプションで用意される。
前席の空気を後席へと送風することにより、空気を効率的に循環。冷気や温気の偏りを解消する天井サーキュレーター。「G」と「Z」にオプションで用意される。拡大
7人乗り仕様の3列目シートは、使わないときは2列目シート下に格納が可能(写真左)。荷室空間を有効に使うことができる。いっぽう5人乗り仕様の荷室は、2列目を倒せば奥行き2045mm(!)の、広くてフラットな荷室空間が得られる(写真右)。
7人乗り仕様の3列目シートは、使わないときは2列目シート下に格納が可能(写真左)。荷室空間を有効に使うことができる。いっぽう5人乗り仕様の荷室は、2列目を倒せば奥行き2045mm(!)の、広くてフラットな荷室空間が得られる(写真右)。拡大
3列シーターでも2列目シートをタンブルアップすれば1525mmの荷室長が得られる。床面に折りたたまれた3列目シートや、展開時にシートを固定するフックなどが露出してしまうのが難点だが。
3列シーターでも2列目シートをタンブルアップすれば1525mmの荷室長が得られる。床面に折りたたまれた3列目シートや、展開時にシートを固定するフックなどが露出してしまうのが難点だが。拡大
5人乗り仕様は、荷室床面をやや“高床”とすることで、後席格納時の床面をフラット化。床下にはラゲッジアンダーボックスが、左右の側壁には棚やフック、バーなどを固定できるユーティリティーナットが設けられている。
5人乗り仕様は、荷室床面をやや“高床”とすることで、後席格納時の床面をフラット化。床下にはラゲッジアンダーボックスが、左右の側壁には棚やフック、バーなどを固定できるユーティリティーナットが設けられている。拡大
新型となって大幅に居住性が増した2列目シート。前席とのタンデムディスタンスは80mm拡大し、また室内高も20mm増して1300mmとなった。(写真:荒川正幸)
新型となって大幅に居住性が増した2列目シート。前席とのタンデムディスタンスは80mm拡大し、また室内高も20mm増して1300mmとなった。(写真:荒川正幸)拡大

【バイヤーズガイド】
“クルマ好き”なら純ガソリン車も要チェック

新型シエンタでは2種類のパワートレインとシートアレンジ、装備グレードを、すべて自由に組み合わせることができる。4WDが選べるのはハイブリッドだけだが、4WDでもシートレイアウトとグレードのチョイスには制限はない。

装備グレードは上から「Z」「G」「X」という3種を用意。最上級のZは、外観では金属調塗装フロントグリルに「バイビームLEDヘッドランプ」や「LEDライン発光テールランプ」などが専用装備されるほか、内装では本革巻きステアリングホイールに7インチTFT液晶メーター、ファブリック巻きのインストゥルメントパネル、運転席アームレスト、後席サンシェードなどが標準装備となる。スライドドアのハンズフリー機能はZには標準だが、その下のXでもオプションで装着可能だ。

また、最近の必須アイテムであるドライブレコーダーが一部を除き標準装備化されたのも、新型シエンタのニュースだ。前方カメラはZとGに標準で備わり、オプションで後方カメラも追加できる。このドラレコは、もっとも安価なXでもオプションで用意されている。

一般的な売れ筋は中間のGグレードと思われるが、最上級のZはその22万円高で上記の装備が手に入る。装備内容を考慮すれば、予算があるならZの買い得感は高い。さらに小さな子どものいるファミリーなら、2万7500~2万9700円のメーカーオプションとなる天井サーキュレーターは要チェック。これは一度使うと手放せなくなるタイプの効果的な装備だ。

パワートレインは予算と好みで選べばいいと思うが、1.5リッター純ガソリンエンジン車の、“低重心・低慣性マス”というGA-Bプラットフォーム車の美点を色濃く反映した軽快で正確な走りは、ちょっとしたものだ。現在のトヨタは、商品セグメントごとに独立したカンパニー制を敷いており、GA-B各車は「コンパクトカーカンパニー」が一貫して開発している。新型シエンタの開発責任者はアクアに続く鈴木啓友氏だし、“匠”という肩書で性能開発を支えた大阪晃弘氏も、GA-Bには最初のヤリスからずっと携わってきた。大阪氏によると、新型シエンタは「GA-B四部作の最後にして集大成」だそうである。実際、シャシーやパワートレインの仕立てにはこれまでの知見が総動員されているという。

(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)

快適性や利便性を重視するならお薦めはやはり「Z」。ハンズフリーオープン機能付きのデュアルパワースライドドアや、消臭・はっ水・はつ油機能付きシート表皮、運転席アームレスト、2列目サンシェードなどを標準装備している。
快適性や利便性を重視するならお薦めはやはり「Z」。ハンズフリーオープン機能付きのデュアルパワースライドドアや、消臭・はっ水・はつ油機能付きシート表皮、運転席アームレスト、2列目サンシェードなどを標準装備している。拡大
外観に上質感を求める向きにも「Z」はお薦め。機能装備とは違い、Zのランプ類やグリルモールなどは、他グレードではオプションでも選べないのだ。
外観に上質感を求める向きにも「Z」はお薦め。機能装備とは違い、Zのランプ類やグリルモールなどは、他グレードではオプションでも選べないのだ。拡大
予防安全・運転支援システムでは、停止保持機能付きのレーダークルーズコントロールが「Z」の専用装備。ハイブリッド車にはドライバー異常対応システムも備わるほか、オプションでアドバンストパーク機能や、床下透過表示機能付きのパノラミックビューモニター(写真)なども用意される。
予防安全・運転支援システムでは、停止保持機能付きのレーダークルーズコントロールが「Z」の専用装備。ハイブリッド車にはドライバー異常対応システムも備わるほか、オプションでアドバンストパーク機能や、床下透過表示機能付きのパノラミックビューモニター(写真)なども用意される。拡大
中間グレードの「G」にも、ハンズフリーオープン機能付きのデュアルパワースライドドアや、消臭・はっ水・はつ油機能付きシート表皮などはオプションで用意される。Gを選んで必要な装備はオプションで盛る……という選択もアリだ。USBソケットの数は「Z」もGも一緒で、運転席シートバックに2列目用のソケットが備わっている。
中間グレードの「G」にも、ハンズフリーオープン機能付きのデュアルパワースライドドアや、消臭・はっ水・はつ油機能付きシート表皮などはオプションで用意される。Gを選んで必要な装備はオプションで盛る……という選択もアリだ。USBソケットの数は「Z」もGも一緒で、運転席シートバックに2列目用のソケットが備わっている。拡大
ハイブリッド車の燃費やパワフルな走りは魅力だが、「GA-B」プラットフォームならではの軽快な走りを味わうなら、ガソリン車もあり。クルマ好きを自負する人は、試してみて損はない。
ハイブリッド車の燃費やパワフルな走りは魅力だが、「GA-B」プラットフォームならではの軽快な走りを味わうなら、ガソリン車もあり。クルマ好きを自負する人は、試してみて損はない。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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