ボルボXC40アルティメットB4 AWD(4WD/7AT)
いつ買うの!? 2022.10.24 試乗記 近い将来の電気自動車(BEV)専業化を宣言しているボルボは、既存のガソリンエンジン車はほったらかし……にするどころか、積極的な改良によって商品力強化に努めている。パワートレインが一新された「XC40」の仕上がりをリポートする。進化についていけるか!?
2017年のワールドプレミアから5年、ボルボの人気コンパクトSUVのXC40が初のマイナーチェンジを実施した。日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのがついこの前のように思えるし、お家芸の安全性能は言うまでもなく、デザインや走り、環境性能など、レベルの高い仕上がりは色あせていないだけに、月日のたつ早さには驚くばかりだ。
一方、クルマの心臓部ともいえるパワートレインは目まぐるしく変わり、すでに総入れ替えの状況である。その進化を推し進めているのが、ボルボが掲げるパワートレインの電動化だ。2030年にBEV専業メーカーになることを目指しているボルボは、すでにBEVを市場に投入する一方、ガソリンエンジンを搭載するモデルにはすべて電気モーターを組み合わせることで、純粋なガソリンエンジン仕様が新車のラインナップから姿を消している。
そのため、XC40導入当初の2018年は、2リッター直列4気筒ガソリンターボを積む「T4」(FF)と、「T4 AWD」「T5 AWD」というバリエーションだったが、2020年8月には48Vマイルドハイブリッドを搭載する「B4」「B4 AWD」「B5 AWD」に一新され、さらにプラグインハイブリッドの「リチャージ プラグインハイブリッド」が追加されている。
それが今回のフェイスリフトで、またもやパワートレインを一新。この変化の速さに皆さんはついていけるだろうか!?
エンジンもトランスミッションも新しい
今回のマイナーチェンジでは、チューンの異なる2つの2リッター直列4気筒ガソリンターボと電気モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様が設定されている。エンジン出力が163PSのほうが「B3」、197PSのほうが「B4」で、前者はFF、後者は4WDである。エンジンそのものは、ボア×ストローク=82.0×93.2mm、排気量1968ccの数字に変更はないが、最新のエンジンでは“ミラーサイクル”を採用し、これにともない圧縮比が10.5:1から12.0:1へと高められている。さらにVNT(バリアブルノズルタービン)ターボを搭載するなど、変更は細部に及ぶ。
組み合わされるトランスミッションが、トルクコンバータータイプの8段オートマチックから、湿式多板クラッチを用いた7段DCT(デュアルクラッチトランスミッション)に変更されているのも見逃せない。さらにこのDCTでは、ギアシフト機構に油圧ではなく電気モーター式を採用しているのも見どころのひとつだ。こうした改良により、新旧のXC40 B4 AWDどうしで燃費を比較した場合、マイナーチェンジ前の2021年モデルが12.5km/リッターだったのに対して、マイナーチェンジ後は14.2km/リッターへと向上している(いずれもWLTCモード)。
なお、プラグインハイブリッドは今回のマイナーチェンジを機にラインナップから姿を消した。BEVグレードの追加後だけに、BEV専業メーカーへの移行をこの40シリーズがけん引している印象を受ける。
BEVよりもカジュアル
さて、今回試乗したのは「XC40アルティメットB4 AWD」。前述のとおり、197PSのガソリンエンジンを搭載する仕様である。アルティメットは新しい装備レベルの名前で、これを筆頭に「プラスプロ」と「プラス」を設定、それぞれ従来の「インスクリプション」「モメンタム」「ベース」に相当するという。
このXC40アルティメットB4 AWDは48Vマイルドハイブリッドシステム搭載車のなかでは最上級グレードというだけに、本革シートやクリスタルシフトノブ、harman/kardonプレミアムサウンドオーディオシステムなど装備が充実。XC40の上質さを際立たせている。
早速走らせると、まずはその軽快な動きだしが印象的だ。というのも、この日はXC40&「C40」のBEVモデルととっかえひっかえ試乗を行い、重厚で力強いBEVたちとは対照的に、BEVに比べて車両重量が軽いXC40 B4 AWDは、いい意味で動きも乗り味も軽く、BEV以上にカジュアルなドライビングが楽しめるように思えたのだ。
ミラーサイクルを採用する最新の2リッターエンジンは、電気モーターのアシストもあり、低回転から実にレスポンスがよく、必要なときに期待どおりのトルクを発生してくれるのが実に頼もしい。
結局は最新が最善
新たに採用された7段DCTは、以前の8段ATと変わらぬスムーズな動きを見せる一方、ダイレクト感が増した印象だ。アクセルペダルを強く踏み込めば、力強い加速は6000rpm付近まで持続。このクルマを素早く走らせるには十分な性能を備えている。
XC40アルティメットB4 AWDには19インチホイールと235/50R19サイズのタイヤが装着されるが、乗り心地は十分に快適なレベルで、タイヤと路面とのコンタクトもスムーズ。ロードノイズも気にならないレベルだ。走行中のピッチングやロールもSUVとしてはよく抑えられており、軽快感のある動きのおかげで、ステアリングを握るのが実に楽しいクルマに仕上がっている。
マイナーチェンジと同時に、「Google」と共同開発したインフォテインメントシステムがこのXC40にも導入されているのも、このクルマの魅力を高めている。音声による目的地検索や、エアコンの温度設定、インフォテインメントの操作なども直感的に行うことができるのがうれしいところで、気がつけば最先端の“つながるクルマ”に成長していたのだ。
このように、最新が最善のXC40。進化の手を緩めないボルボだけに、次にどんな進化が訪れるかが気になるが、購入を検討しているなら先延ばしは無用。欲しいときが買いどきである。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボルボXC40アルティメットB4 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1875×1655mm
ホイールベース:2700mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/4750-5250rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1500-4500rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)235/50R19 103V/(後)235/50R19 103V(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:14.2km/リッター(WLTCモード)
価格:569万円/テスト車=611万9650円
オプション装備:プレミアムメタリックペイント<クリスタルホワイト>(13万円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(21万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット>(8万9650円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1862km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。