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レクサスRX450h+“バージョンL”(4WD/CVT)/RX350“バージョンL”(FF/8AT)

スポーツではない価値 2022.12.30 試乗記 高平 高輝 新世代レクサスの特徴は多彩なパワートレインが用意されていることだ。それは新型「RX」でも同様で、どれもプレミアムブランドにふさわしい仕上がりになっている。プラグインハイブリッドの「RX450h+」と2.4リッターターボの「RX350」に試乗した。

割り切ったモデルラインナップ

5代目に生まれ変わった新型RXの車種構成は意外に割り切ったシンプルなものだ。パワーユニットは3種類で、2.4リッター4気筒ターボ+前後モーター搭載の「500h」は“Fスポーツ パフォーマンス”のみ。2.5リッター4気筒+前後モーターによるPHEVの「450h+」は対照的に“バージョンL”のみ。2.4リッターターボの「350」には“バージョンL”と“Fスポーツ”の両方が設定されるが、前者はFWD/AWDの駆動方式が選べるのに対して後者はAWDだけとなっている。

外部充電も可能な450h+はおよそ1年前に発売された「NX」で登場したレクサス初のPHEVであり、新型RXでもその成り立ちは変わりない。ロングストロークの2.5リッター4気筒ダイナミックフォースエンジンは185PS/6000rpmと228N・m/3600-3700rpmを生み出し、それに加えてフロントモーター(182PS/270N・m)とリアアクスルを駆動するリアモーター(54PS/121N・m)を搭載する「E-Four」(電気式4WD)である。

エンジンや前後モーターの出力/トルクは「NX450h+」とまったく同じ。309PSのシステム最高出力も同一。さらにはリチウムイオン電池の容量18.1kWhも同じだが、充電電力使用時走行距離のみ86km(NX450h+は88km)とほんのわずかな違いがある。外部充電はヨーロッパ車のように普通充電のみ可能で、CHAdeMO等の急速充電システムには対応していない。システム最高出力371PSの500hには及ばないものの、0-100km/h加速は6.5秒と重量級の割にはかなりの俊足(500hは6.2秒)。強力で瞬発力のある前後モーターのたまものである。

新型「RX」のなかで唯一の外部充電可能な電動パワートレインを持つ「450h+“バージョンL”」。車両本体価格は871万円。
新型「RX」のなかで唯一の外部充電可能な電動パワートレインを持つ「450h+“バージョンL”」。車両本体価格は871万円。拡大
ドアパネルをえぐってインパネを横に伸ばすことで開放感を演出。今回の試乗車のインテリアカラーは「ダークセピア」。
ドアパネルをえぐってインパネを横に伸ばすことで開放感を演出。今回の試乗車のインテリアカラーは「ダークセピア」。拡大
変速機は電気式CVT。セレクター後方のスイッチで「チャージ」「セーブ」「EV」など、パワートレインのモードを変更できる。
変速機は電気式CVT。セレクター後方のスイッチで「チャージ」「セーブ」「EV」など、パワートレインのモードを変更できる。拡大
2.5リッターエンジンと前後のモーターを合わせたシステム最高出力は309PS。0-100km/h加速のタイムは6.5秒。
2.5リッターエンジンと前後のモーターを合わせたシステム最高出力は309PS。0-100km/h加速のタイムは6.5秒。拡大
レクサス RX の中古車

重さを感じさせない洗練度

前述のようにプラグインハイブリッドのRX450h+はラグジュアリー志向の“バージョンL”のみとなるが、スタートダッシュはまさに脱兎(だっと)のごとく力強い(ただし高回転ではちょっとエンジン音が耳につく)。もちろん、通常走行ではできるだけモーター走行しようとするので、普段は極めて滑らかに動きだし、そのまま静かにスムーズに速度を上げていく。

新型RXはアルミ製のフロントフェンダーやBピラーに2ギガパスカル級(一般的な超高張力鋼板は980メガパスカル以上、ホットスタンプでも1500メガパスカル)のホットスタンプ材を採用するなどして従来型に比べて90kg軽量化したというが、それでもPHEVの450h+は2200kg(オプションなしだと2160kg)にも達する。これはもう電気自動車「bZ4X」の4WDモデルを上回るほどだ。それでいながらスルリと重さを感じさせずに動きだし、加速感にも鈍さをみせないのだから、さすがはレクサスのPHEVである。

インテリアの緻密な仕立てももちろんだが、ダイナミックなクオリティーの高さが印象的である。要するに走行中のノイズ、バイブレーションの制御に加え、乗り心地が洗練されているのだ。新型RXは「GA-K」プラットフォーム、すなわちトヨタの「RAV4」や「ハリアー」、レクサスではNXなどと共通するFWD車用車台に一新されているが、ボディー後部はマルチリンクのリアサスペンションも含めて新たに開発されたものだ。さらにレーザースクリューウェルディングや構造用接着剤などを多用して接合部を強化しているという。そのうえ「IS」やNXと同じくボルトによるハブ締結や、ツインフードロック機構(ボンネットのロッカー左右2点支持)など、細かい点だが剛性向上に効果がある手法も取り入れられている。

細部へのこだわりの積み重ねがプレミアムなクオリティーにつながることは分かってはいても、さまざまな理由から(ほとんどはコストアップにつながるから)採用できなかったものを、最近のレクサスは数多く取り入れている。レクサスであっても青天井とはいかないだろうが、こうした細部への配慮の積み重ねこそがプレミアムブランドの証しである。

駆動用バッテリーの容量は18.1kWhで、充電電力使用時走行距離は86km。急速充電に対応しないのは他のトヨタ系プラグインハイブリッドモデルと同様。
駆動用バッテリーの容量は18.1kWhで、充電電力使用時走行距離は86km。急速充電に対応しないのは他のトヨタ系プラグインハイブリッドモデルと同様。拡大
ステアリングホイールは本木目を芯に使ったぜいたくな仕立て。シフトパドルで回生ブレーキの強さを変えられる。
ステアリングホイールは本木目を芯に使ったぜいたくな仕立て。シフトパドルで回生ブレーキの強さを変えられる。拡大
シート表皮はセミアニリン本革。前席は10ウェイの電動調整機能とヒーター&ベンチレーションを完備。
シート表皮はセミアニリン本革。前席は10ウェイの電動調整機能とヒーター&ベンチレーションを完備。拡大
ボンネットは左右2カ所で支持される。ホイールのハブボルト固定など、細部への配慮の積み重ねが上質な乗り味に効いている。
ボンネットは左右2カ所で支持される。ホイールのハブボルト固定など、細部への配慮の積み重ねが上質な乗り味に効いている。拡大

最も軽快なRX350

450h+から乗り換えたRX350“バージョンL”(FWD)はびっくりするほど軽快だ。なにしろ、オプションのパノラマルーフとマークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステムを加えた状態(この2つで40kg増加する)でも、こちらの車重は1910kgと450h+に比べてほとんど300kgも軽いのである。強力なモーターのおかげで450h+もまったく鈍重な感じはしないと言ったが、ガソリンターボエンジンを積むRX350の軽やかさはまた別次元、このあたりは同じエンジンを積むNXと同様である。

RX350に搭載されるT24A-FTS型2.4リッター直4直噴ターボ(自然吸気2.5リッターとボアは同一でわずかにストロークが短い)は、NXに初搭載されたもので、ツインスクロールターボやセンター直噴システム、DCモーター制御による可変冷却システムなどを特徴とする高効率ユニットである。279PS/6000rpmと430N・m/1700-3600rpmを発生するが(NXと同一)、切れの良い8段ATと組み合わされることもあって、まさしく痛快に吹け上がって俊敏に走るし、ハンドリングも軽快だ。

惜しいのはRX500hと同じく、ノイズというか振動というか、ザラザラとした回転フィーリングが伝わってくることだ。フルスロットル時よりも穏やかに加速するような場合に気になるこのノイズは、高効率ユニットゆえの高速燃焼と希薄燃焼に起因するものらしいのでなかなか難しいとは思われるが(RX350にもアクティブノイズコントロールが装備されている)、今後の改良に期待したいところだ。

「RX350」のパワーユニットは最高出力279PSの2.4リッター直4ターボエンジン。“バージョンL”ではFWD(今回の試乗車)のほかに4WDも選べる。
「RX350」のパワーユニットは最高出力279PSの2.4リッター直4ターボエンジン。“バージョンL”ではFWD(今回の試乗車)のほかに4WDも選べる。拡大
試乗車のインテリアカラーは「ソリスホワイト」。センタースクリーンやその下のエアコンの操作パネルは大胆に運転席側に向けられている。
試乗車のインテリアカラーは「ソリスホワイト」。センタースクリーンやその下のエアコンの操作パネルは大胆に運転席側に向けられている。拡大
メーターはセンターの一眼を基本とした液晶表示式。ドライブモードを「スポーツ」にすると赤くなる。
メーターはセンターの一眼を基本とした液晶表示式。ドライブモードを「スポーツ」にすると赤くなる。拡大
ヘッドアップディスプレイの表示はステアリングスイッチと連動。前方から目を離さなくても細かな車両設定ができる。
ヘッドアップディスプレイの表示はステアリングスイッチと連動。前方から目を離さなくても細かな車両設定ができる。拡大

このクルマだけ乗り心地が違う

もうひとつ気になったのはRX350“バージョンL”のみ、乗り心地が場面によってもっと重い他のモデルほど洗練されていないことだ。もちろん、試乗会で短時間試しただけなので(しかも350のAWDには未試乗)、あまり断定的なことは言えないが、このRX350“バージョンL”のFWDモデルだけ巨大な21インチタイヤ(新型RXは全車21インチタイヤが標準)を持て余しているようなバタつきが、舗装の荒れた場所では感じられた。

その前に乗ったRX500hと450h+との明らかな違いは車重、そして350のFWDモデルだけなぜか電子制御可変ダンパーの「AVS」が備わらないことだ。比較すれば軽いとはいっても車重は1910kgもあり、シリーズのなかでは最も廉価なベーシックモデルとはいえ664万円である。レクサスのSUVは、力の入った“Fスポーツ”系よりもラグジュアリーな“バージョンL”のほうがより洗練されていて好ましいと考えている私にとってはなおさら惜しい。こういうところで差をつけずに全車標準装備とするか、せめてオプションで用意してほしいものである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

足まわりはフロントがストラット式でリアがマルチリンク式。全グレードのなかで「RX350“バージョンL”」のFWD車だけ可変ダンパー「AVS」が備わらない。
足まわりはフロントがストラット式でリアがマルチリンク式。全グレードのなかで「RX350“バージョンL”」のFWD車だけ可変ダンパー「AVS」が備わらない。拡大
最廉価グレードでも内装の仕立ては上質。セミアニリン本革のシート表皮や電動調整機能などは「450h+」と変わらない。
最廉価グレードでも内装の仕立ては上質。セミアニリン本革のシート表皮や電動調整機能などは「450h+」と変わらない。拡大
“バージョンL”用のアルミホイールは主張を抑えたダークプレミアムメタリック仕上げ。タイヤは全グレードで21インチがスタンダードで、ディーラーオプションでチェーンが用意されている。
“バージョンL”用のアルミホイールは主張を抑えたダークプレミアムメタリック仕上げ。タイヤは全グレードで21インチがスタンダードで、ディーラーオプションでチェーンが用意されている。拡大
レクサスRX450h+“バージョンL”
レクサスRX450h+“バージョンL”拡大
 
レクサスRX450h+“バージョンL”(4WD/CVT)/RX350“バージョンL”(FF/8AT)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

レクサスRX450h+“バージョンL”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2200kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:185PS(136kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:228N・m(23.2kgf・m)/3600-3700rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:309PS(227kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
ハイブリッド燃料消費率:18.8km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:83km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:86km(WLTCモード)
交流電力量消費率:178Wh/km(WLTCモード)
価格:871万円/テスト車=921万9300円
オプション装備:ルーフレール+パノラマルーフ<チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円)/寒冷地仕様(2万0900円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:862km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

レクサスRX350“バージョンL”
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レクサスRX450h+“バージョンL”(4WD/CVT)/RX350“バージョンL”(FF/8AT)【試乗記】の画像拡大

レクサスRX350“バージョンL”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:1910kg
駆動方式:FF
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:279PS(205kW)/6000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1700-3600rpm
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:11.8km/リッター(WLTCモード)
価格:664万円/テスト車=716万2500円
オプション装備:ルーフレール+パノラマルーフ<チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円)/寒冷地仕様(2万0900円)/おくだけ充電(1万3200円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1125km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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