第248回:ステキだぜ!! 抽選販売
2022.12.26 カーマニア人間国宝への道おっさんカーマニアの超どストライク
「日産フェアレディZ」→売り切れ(たぶん)
「ホンダ・シビック タイプR」→売り切れ(同上)
あーもう買えないクルマはうんざりだ! 買えないんじゃ興味を持つだけムダ! 絶対落ちない女を口説くようなもんだ! そういうクルマのことは忘れよう!
「レクサスIS500」も同様だ。台数500台の限定車「IS500“Fスポーツ パフォーマンス ファーストエディション”」は抽選販売となり、競争率は10倍以上だったという。通常モデルもどうせ買えないに決まってる。そんなクルマは存在しないも同じ! 忘れよう!
そう思っていたのだが、「レクサスRX」の試乗イベント会場にねずみ色のIS500が置いてあり、あまりのカッコよさにクラクラした。それを見た瞬間からRXなどどうでもよくなり、IS500のことしか考えられなくなった。
聞けば、30分だけなら試乗できるという。うおおおお! 乗せて乗せて~! 乗せてくださ~い!
走りだした瞬間、体に電気が走った。
こ、これは……。これはスゲェ! おっさんカーマニアの超どストライク! ヤバイ! ヤバすぎる!
まずエンジンがすさまじくイイ。このさく裂はナニ? 「スポーツS+」モードでアクセル全開をかませば、それはまるでフェラーリ様。一番近いのは「F355」の3.5リッターV8だろうか。つまり、「ウルトラ速くはないけれど、サウンドだけで昇天」というパターンだ!
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タントじゃレクサス店へ行けないぜ!
IS500の5リッターV8エンジンは最高出力481PS。車両重量は1720kg。自然吸気ゆえ、最新のターボエンジンほどの加速力はないが、アクセルを床まで踏み込めば、車内は意識が遠のくような快音で満たされる。さすが「LFA」で培ったサウンド技術! LFAの美声はフェラーリをも超えていたが、IS500のサウンドにもそれに近い響きがある! しかもスピーカーからの人工音はナシ! いまどき珍しい本物の音なのだ!
乗り心地はしなやかな旦那スポーティー。ハンドリングも超絶イイ! 公道を軽く攻めるレベルの話ですが、V8を積んでいるとは思えないほどノーズは軽く、ハンドルを切ればバビッと向きが変わる。前後重量配分は57:43とフロントベビーなのだが、そのぶん常に前輪に荷重がかかってる! 荷重移動とかめんどくさいテクは必要ナシ! 切れば切っただけ即座に曲がる! なんてラクチンで気持ちいいんだ~~~~っ!
価格表を見て驚愕(きょうがく)した。たったの900万円! 1100万円はすると思ったのに! 「BMW M3」なんか1400万円するのに! 900万円は超バーゲンプライス! 安い! 安すぎる! 俺には「ランボルギーニ・カウンタック」を売った資金がある! キャッシュで買える! 欲しい! 猛烈に欲しいぜっ!
(よし、次の抽選に応募しよう!)
抽選販売なんざクソクラエ! と思っていたが、手のひら返しでそう心に決め、レクサス広報の方に聞いてみた。
広報氏:ファーストエディションは抽選でしたけれど、その後のスタンダードモデルは通常販売です。
オレ:ええっ? 抽選じゃなく、普通に買えるんですか?
広報氏:そのはずです。
マジで!? まだ買えるのかIS500よ! 何年待ちかは知らないが、待てば買えるのかねずみ色のIS500! ならば待たないテはない! よし、帰りに自宅近くのレクサス浜田山に寄って注文しよう!
と思ったのだが、その日はちょいワル特急こと「プジョー508」が車検中で、「ダイハツ・タントスローパー」で試乗会に出撃していた。タントでレクサス店に乗りつけるのは気が引ける……。無意味な見栄とはわかっていても、おっさんから見栄を取ったらぬれ落ち葉。それだけはできません!
日をあらためて、ちょいワル特急が戻ってから、レクサス店に出撃することにした。自転車でも行けるんだけど。
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到着5秒後に討ち死に
数日後。
ちょいワル特急が車検から戻ったので、朝、ガソリンスタンドで撥水(はっすい)コート洗車をかまし、そのまま開店とほぼ同時にレクサス浜田山に突入した。
営業マン:本日はどちらのモデルを。
オレ:欲しいクルマがあるんです。IS500なんですが!
営業マン:……残念ながら、受け付けを終了しておりまして、現在ご案内できるクルマがございません。
ええ~~~~っ! 本社様が「買える」とおっしゃったのにぃ~~~っ! 到着して5秒で討ち死にかっ!
考えてみりゃそうだよな。1回目が競争率10倍以上だったのに、そのままフツーに売ってたら、即座に数年分が売り切れているはず。本社様って意外と現場のことは知らないのね。
詳しく聞けば、ファーストエディションに続いて2回目の通常販売枠も抽選となり、すでに締め切っているという。
オレ:じゃ3回目の抽選には応募できるんですか!?
営業マン:はい。まだいつとは決まっておりませんが。
オレ:ぜひ応募させてください!
営業マン:では、簡単なアンケートにご回答いただけますか?
オレはアンケートに書き込みつつ、「買えるなら絶対買いますから、連絡してください!」と強くお願いしたが、レクサスの若いイケメン営業マンの熱量は低く、「承りました」と丁寧に応えるのみだった。
そりゃそうだよな。黙っていても取り合いになる貴重なハイパフォーマンスモデルを、一見のおっさんに売る義理はカケラもない。これがフェラーリの正規ディーラー様なら、「まずは一般販売モデルを数台お買いになり、実績を積んでください」と言われるところだ。
一見のおっさんカーマニアとしては、トヨタ様ならびにレクサス様の公平無私に期待するのみであります! 抽選に入れて入れて~! 抽選最高!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。