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BMW 218dアクティブツアラー エクスクルーシブ(FF/7AT)

スキが見えない 2023.01.18 試乗記 佐野 弘宗 BMWブランド初の前輪駆動車として登場し、スマッシュヒットを飛ばした「2シリーズ アクティブツアラー」。フルモデルチェンジしたディーゼルエンジン搭載の「218d」を郊外に連れ出し、進化したコンパクトハッチの仕上がりを確かめた。

成功したモデルの正常進化

いまのクルマ業界は猫も杓子(しゃくし)もSUVにクロスオーバーである。少し昔にヨーロッパでも隆盛を誇ったハイトワゴンも、その波にのまれて風前のともしびかと思いきや、BMWは2シリーズ アクティブツアラーを2代目へと刷新した。機能的にはSUVの「X1」や「X2」が代用になりそうだし、そっちのほうがよりBMWらしいと思いきや、そんなのはクルマオタクの勝手な思い込みだった。

2014年にデビューした初代アクティブツアラーは約8年のライフで世界累計約43万台を売り上げたという。年間だと平均5万台強。バカ売れとはいえないが、北米や中国といった巨大市場で販売しない商品としては悪くない数値である。しかも、その顧客の8割がBMWを初めて購入……という事実はそれ以上に大きい存在価値がある。いっぽうで、それを3列シート化したコンパクトミニバンの「グランツアラー」は初代かぎりで姿を消した。日本で販売されないのではなく、存在自体がない。コンパクトミニバンは世界的に縮小しつつあるジャンルらしい。

というわけで、新型アクティブツアラーは成功作だった初代の正常進化といえるもので、基本アーキテクチャーも初代のそれから進化した「FAAR」プラットフォームを使う。細かくいうと、初代アクティブツアラーで初めて世に出たのが「UKL2」プラットフォームで、FAARはそのUKL2をベースにPHEVなどの電動化に対応したタイプである。

UKL2/FAARはBMWとMINIが共有する横置きFFレイアウトのプラットフォーム。MINIでは「クロスオーバー」や「クラブマン」といったラージ系商品に使われており、BMWでは今回のアクティブツアラーを筆頭に、先述のX1とX2、さらには「1シリーズ」に「2シリーズ グランクーペ」と、つまりは現役FF系モデルすべての土台となっている。

2022年6月に導入が発表された新型「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」。今回は2リッター直4ディーゼルエンジン搭載の「218dアクティブツアラー エクスクルーシブ」に試乗した。車両本体価格は476万円。
2022年6月に導入が発表された新型「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」。今回は2リッター直4ディーゼルエンジン搭載の「218dアクティブツアラー エクスクルーシブ」に試乗した。車両本体価格は476万円。拡大
メーターパネルとセンターディスプレイが一体化された「BMWカーブドディスプレイ」が目を引くインテリア。ドアミラーの取り付け位置の変更により、三角窓後方のピラーが大幅に細くなったり死角が減ったりしたのも新型モデルの特徴だ。
メーターパネルとセンターディスプレイが一体化された「BMWカーブドディスプレイ」が目を引くインテリア。ドアミラーの取り付け位置の変更により、三角窓後方のピラーが大幅に細くなったり死角が減ったりしたのも新型モデルの特徴だ。拡大
ドアオープナーは従来型のバーグリップ式から、最新の「2シリーズ クーペ」などと同じドアパネル埋め込み式のフラッシュマウントタイプに変更された。空力特性の向上も新型「2シリーズ アクティブツアラー」のテーマで、Cd値(空気抵抗係数)は0.26を達成したという(本国仕様値)。
ドアオープナーは従来型のバーグリップ式から、最新の「2シリーズ クーペ」などと同じドアパネル埋め込み式のフラッシュマウントタイプに変更された。空力特性の向上も新型「2シリーズ アクティブツアラー」のテーマで、Cd値(空気抵抗係数)は0.26を達成したという(本国仕様値)。拡大
今回の試乗車がまとっていたボディーカラーは、8万円の有償色「ミネラルホワイト」で、これを含め新型「2シリーズ アクティブツアラー」には全9種類の外板色が設定される。
今回の試乗車がまとっていたボディーカラーは、8万円の有償色「ミネラルホワイト」で、これを含め新型「2シリーズ アクティブツアラー」には全9種類の外板色が設定される。拡大
BMW 2シリーズ アクティブツアラー の中古車

最新のBMWテイストでデザイン

新型アクティブツアラーのスリーサイズは先代比で30mm前後ずつ拡大しているが、2670mmというホイールベースだけは先代と同寸だ。というか、現行のULK2/FAARプラットフォーム車はX1もX2も1シリーズもグランクーペも、さらにクロスオーバーもクラブマンもすべて、ホイールベースが2670mmで統一されているのが面白い。

というわけで、前後シートの居住性、荷室の広さも実質的には先代とほぼ変わらない。つまり、視界も広さも車格感もすべてがちょうどいい使い勝手で、それもアクティブツアラーが売れた理由と思われる。

いっぽう、デザインは「iX」以降のBMWの最新モチーフにあふれている。縦方向に拡大した巨大キドニーグリルと、その上端に合わせて位置する細目のヘッドランプ、同じく細目のL字テールランプはiXに似る。ちなみに、新型アクティブツアラーのキドニーグリルで実際に開口しているのは全体の3分の1くらいで、上下はふさがっている。

インテリアに目を移しても、傾斜したダッシュボードや2枚のディスプレイが1枚板になった「カーブドディスプレイ」には既視感あり。横長のエアコン吹き出し口、ドアトリムにあしらわれたパンチングメタルのスピーカーカバーもiXや「7シリーズ」で見たディテールである。ステアリングスイッチも随分とシンプルになり、フローティングしたシフトセレクターパネルも、機能こそだいぶ省略されるが、これらの見た目もiXや7シリーズによく似る。

インテリア収納の新機軸「スマートフォントレイ」はちょっとほしくなった。車内のスマホ置き場にはいまだ決定版は出ていない気がするが、これは斜めに立てかけてバーで挟み込むように固定するから、たとえばスマホをそのままナビとして使っても見やすい。ワイヤレス充電機能も備わり、将来的には定番となる可能性も個人的には少し感じている。

5ドアハッチバックデザインのボディーサイズは全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm、ホイールベースは2670mm。先代モデルよりも35mm長く、25mm幅広くなり、車高も30mm引き上げられた。
5ドアハッチバックデザインのボディーサイズは全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm、ホイールベースは2670mm。先代モデルよりも35mm長く、25mm幅広くなり、車高も30mm引き上げられた。拡大
八角形をイメージしたという大型のキドニーグリルは、電動車「iX」の流れをくむBMWの最新モチーフ。グリル内において実際に開口しているのは全体の3分の1くらいで、上下はふさがっている。
八角形をイメージしたという大型のキドニーグリルは、電動車「iX」の流れをくむBMWの最新モチーフ。グリル内において実際に開口しているのは全体の3分の1くらいで、上下はふさがっている。拡大
BMWのコンパクトモデルでは初採用となる「BMWカーブドディスプレイ」。10.25インチの液晶式メーターパネルと10.7インチのセンターディスプレイが一体化されている。
BMWのコンパクトモデルでは初採用となる「BMWカーブドディスプレイ」。10.25インチの液晶式メーターパネルと10.7インチのセンターディスプレイが一体化されている。拡大
ステアリングスイッチはシンプルなデザインに変更された。右側にインフォテインメントシステムのコントロールスイッチを、左にACCのコントロールスイッチを配置する。
ステアリングスイッチはシンプルなデザインに変更された。右側にインフォテインメントシステムのコントロールスイッチを、左にACCのコントロールスイッチを配置する。拡大
「2シリーズ アクティブツアラー」のセンターコンソール。ワイヤレス充電機能が備わる「スマートフォントレイ」やUSBソケット(タイプC×2個)、カップホルダーが機能的に配置される。
「2シリーズ アクティブツアラー」のセンターコンソール。ワイヤレス充電機能が備わる「スマートフォントレイ」やUSBソケット(タイプC×2個)、カップホルダーが機能的に配置される。拡大

満タン時の予想航続距離は1200km

日本仕様はひとまず1.5リッター直3ガソリンと2リッター直4ディーゼルがあり、今回は上級パワートレインになるディーゼルのほうである。変速機は全車が7段DCTとなるが、試乗した「エクスクルーシブ」の場合は、シフトパドルは備わらない。

2リッターディーゼルで最高出力150PS、最大トルク360N・mという諸元は、MINIでいうと「クーパーSD」ではなく「クーパーD」相当の中間的なチューニングである。驚くようなパンチというほどでもないが、静粛性はちょっとした高級感を抱くことができるくらいには高い。これなら3気筒ガソリンより約30万円高い価格設定もまあ納得だろう。

このエンジンは加速して2000rpmを超えるあたりからディーゼルらしい音を耳に届けるが、それでも以前より明らかに静かになった。Dレンジで市街地や高速で流れに乗っているだけだと、DCTは2000rpm以下をキープしたまま、小気味よくトントンとシフトしてくれる。100km/hでもトップの7速ならエンジン回転は1500rpm以下だ。

そうやって「アシステッドドライブ」を起動させ高速道路を淡々と走っていると、平均25km/リッター以上の燃費がシレッと出ることにも感心する。満タンで借り出した時点での予想航続距離も1200kmと表示されていた。

アクティブツアラーでもBMWらしい走りをしたいマニア筋は「どうせ買うならパドルシフトが追加される『Mスポーツ』か」と思うかもしれないが、少なくともこのディーゼルなら、山坂道でもエクスクルーシブに用意されるLレンジに放り込んでおけば不満はほぼ感じない。都市高速やワインディングロードでも速度に応じてきっちりとダウンシフトしながら、このエンジンがもっとも元気な2000~3000rpmの領域を絶妙にキープしてくれるからだ。

新型「2シリーズ アクティブツアラー」のプラットフォームは「FAAR」と呼ばれるもので、初代モデルで初めて世に出た「UKL2」の改良進化版。FAARは「X1」や「X2」、「1シリーズ」などのFF系モデルに使用されている。
新型「2シリーズ アクティブツアラー」のプラットフォームは「FAAR」と呼ばれるもので、初代モデルで初めて世に出た「UKL2」の改良進化版。FAARは「X1」や「X2」、「1シリーズ」などのFF系モデルに使用されている。拡大
「218dアクティブツアラー」に搭載される最高出力150PS/4000rpm、最大トルク360N・m/1500-2500rpmの2リッター直4ディーゼルターボエンジン。7段DCTと組み合わされる。
「218dアクティブツアラー」に搭載される最高出力150PS/4000rpm、最大トルク360N・m/1500-2500rpmの2リッター直4ディーゼルターボエンジン。7段DCTと組み合わされる。拡大
今回の試乗車では32万1000円の有償オプション「ハイラインパッケージ」が選択されており、写真の「ヴァーネスカレザーシート(色:モカ)」が装備されていた。「エクスクルーシブ」グレードでは、「パーフォレーテッドセンサテックシート」が標準仕様となる。
今回の試乗車では32万1000円の有償オプション「ハイラインパッケージ」が選択されており、写真の「ヴァーネスカレザーシート(色:モカ)」が装備されていた。「エクスクルーシブ」グレードでは、「パーフォレーテッドセンサテックシート」が標準仕様となる。拡大
後席スペースは初代モデルとほとんど変わらない。シートには前後130mmのスライド機構と、荷室のスイッチを用いてワンタッチで背もたれが倒せる40:20:40の分割可倒機構が備わる。
後席スペースは初代モデルとほとんど変わらない。シートには前後130mmのスライド機構と、荷室のスイッチを用いてワンタッチで背もたれが倒せる40:20:40の分割可倒機構が備わる。拡大

改善されたウイークポイント

日本に用意されるアクティブツアラーは60偏平の17インチという穏当なタイヤを履いているのだが、走りは意外なほどホットハッチ的である。乗り心地がちょっとパリッとしているのは、試乗車のオドメーターがまだ2477kmしか刻んでいないせいもあるかもしれない。だが、いずれにしてもファミリーカーとしてはそれなりに引き締まり系だ。

ロールは小さく、ステアリングレスポンスは俊敏で、その走りは良くも悪くも躍動的。……というか、しいていえばゴーカート風味で、ほかのBMWとは趣が異なる。もっとも、同時に車体の剛性感も印象的なほど高いので、好事家なら不快感は抱かないであろうその味わいは、基本構造やディメンションが似たMINIクロスオーバーをほうふつさせるものがある。個人的には滑らかに荷重移動するほうがタイプだが、リアに根が生えたように安心感のある操縦性や、路面からの突き上げは強めでも目線があまり上下しないところには、クルマの基本能力の高さがうかがえる。

アクティブツアラーがMINIと大きくちがうところはパワーステアリングが軽いことだ。このクルマが他社からの乗り換えやビギナーを誘導する明確な役割をもたされているからだろうか、BMWのなかでも意識的に軽めの操舵力にしつけられているそうである。対してMINIはゴーカートフィールとズシリと重いパワステによる独特の乗り味で、一度つかんだファンをはなさないように意図する。

新型アクティブツアラーは、これまでFF系BMWの最大の弱点だった先進運転支援システムも一気にキャッチアップした。車線維持系アシストがほぼフルに備わるのはもちろん、直近50mの低速走行を再現しながらバックする「リバースアシスト」も全車標準という。

筆者もBMWといえば“後輪駆動”だの“ストレートシックス”だの“M”などを連想するクルマオタクのひとりだ。正直いうと、アクティブツアラーをちょっとナメていたが、いやいや、実際はなかなかスキが見えない良い商品である。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「エクスクルーシブ」グレードには、ダークグレーの「Vスポークスタイリング833バイカラー」と呼ばれる17インチアルミホイールが標準で装備される。今回の試乗車は205/60R17サイズの「ハンコック・ヴェンタス プライム3」タイヤを組み合わせていた。
「エクスクルーシブ」グレードには、ダークグレーの「Vスポークスタイリング833バイカラー」と呼ばれる17インチアルミホイールが標準で装備される。今回の試乗車は205/60R17サイズの「ハンコック・ヴェンタス プライム3」タイヤを組み合わせていた。拡大
空中に浮かんでいるような「アイランド型センターコンソール」に、スイッチ式のシフトセレクターやドライブモードセレクター、スタート/ストップスイッチなどが配置される。
空中に浮かんでいるような「アイランド型センターコンソール」に、スイッチ式のシフトセレクターやドライブモードセレクター、スタート/ストップスイッチなどが配置される。拡大
今回の試乗車に装備されていた電動パノラマガラスサンルーフは、17万1000円のオプションアイテム。全グレードで選択可能だ。
今回の試乗車に装備されていた電動パノラマガラスサンルーフは、17万1000円のオプションアイテム。全グレードで選択可能だ。拡大
荷室容量は470リッターで、後席の背もたれを前方に倒すと荷室容量を最大1455リッターに拡大できる。床下には深さのあるサブトランクも用意されている。
荷室容量は470リッターで、後席の背もたれを前方に倒すと荷室容量を最大1455リッターに拡大できる。床下には深さのあるサブトランクも用意されている。拡大
高精度カメラとレーダーを駆使した、最新のドライビングアシストシステムの搭載も新型「2シリーズ アクティブツアラー」のセリングポイント。直近50mの低速走行を再現しながらバックする「リバースアシスト」も全車に標準装備されている。
高精度カメラとレーダーを駆使した、最新のドライビングアシストシステムの搭載も新型「2シリーズ アクティブツアラー」のセリングポイント。直近50mの低速走行を再現しながらバックする「リバースアシスト」も全車に標準装備されている。拡大

テスト車のデータ

BMW 218dアクティブツアラー エクスクルーシブ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm
ホイールベース:2670mm
車重:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/4000rpm
最大トルク:360N・m(36.7kgf・m)/1500-2500rpm
タイヤ:(前)205/60R17 97W/(後)205/60R17 97W(ハンコック・ヴェンタス プライム3)
燃費:19.5km/リッター(WLTCモード)
価格:476万円/テスト車:574万2000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(8万円)/ハイラインパッケージ(32万1000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(17万1000円)/テクノロジーパッケージ(41万円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2477km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:332.1km
使用燃料:24.0リッター(軽油)
参考燃費:13.8km/リッター(満タン法)/17.7km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW 218dアクティブツアラー エクスクルーシブ
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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