利便性は「5ドア」、極めるなら「3ドア」 2つの「ジムニー」を比べてみる
2023.02.01 デイリーコラムジムニーのEVが登場する!?
先日、スズキの「2030年度に向けた成長戦略説明会」という記者会見を見ていて驚いた。
「2030年度までの製品計画」の紹介では「欧州においてバッテリーEV(電気自動車)を5モデル展開」と説明し、そのイメージイラストのなかに「これはどう見ても『ジムニー』でしょ?」というクルマも含まれていた。イラストというかシルエットでだけど。
でも、驚いたのは「ついにジムニーにまでEVが用意される!」ってことではない。そんなのは昨今のEVを取り巻く環境を考えればあり得る話だし、あくまで7年先までの計画にすぎないのだから「確約」ってわけでもない。でも、驚いたのはその前の説明「日本における2030年度までの製品計画」との違いだ。
「日本においてバッテリーEVを6モデル展開する」というのだが、なんとそのなかにはジムニー(らしきクルマ)の姿がないのだ(「ハスラー」っぽいのはあった)。ジムニー(らしきクルマ)のEVモデルが“欧州には計画があるのに日本にはない”なんて! 一体どうなっているのだスズキ?
まあ「ジムニーのEVが出たら日本で人気を博してたくさん売れるのか?」と問われれば「当然でしょ!」と即答する自信はあいにく筆者にはないけれど、あれですよアレ。「アッチにはあるのに、コッチにはどうしてないんだ?」という、ないものねだりです。本当にわがままですいません。やっぱり隣の芝生は青く見えるんです。
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便利すぎるジムニー5ドア
ところで、ジムニーに関してのないものねだりといえばあれですよ、EVじゃなくて「5ドア」。うわさのジムニー5ドアが(日本にはないのに)インドで発表されたこと。しかも聞くところによると日本は「ちょっと遅くなる」とかじゃなくて「未定」なのだとか。なんですかね、このさみしい感じ。
そんなわけで長い前置きになったけど、今回のコラムのテーマは「ジムニー5ドアって本当にいいの? 実は3ドアのほうがいいこともあるんじゃない?」でいきましょう。
確かにね、いいんですよ5ドア。日本で売っている3ドアに対して単にドアが2枚増えて後席の乗り降りがしやすくなっただけじゃなく、ホイールベースも延びているから後席のひざまわりが広くなって居住性も向上。正直なところ3ドアのジムニーを家族構成3人以上のファミリーが愛車にするのはキビしいけれど、5ドアなら楽勝だ。「日本でも欲しいよー」と思っているパパやママも多いんじゃないですかね。
あと、スキー&スノボーやキャンプなどアクティブにクルマを使う人にとっても5ドアは都合がいいと思う。だって室内スペースが広がったぶん、後席を倒した状態ではたくさん荷物を積めるようになったのだから(後席使用時の荷室は3ドアも5ドアも変わらないようだ)。
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極めるなら3ドア
でもね、3ドアのほうが有利な部分だってやっぱりある。
まずは車体が短いから駐車スペースが小さくて済むこと(まあ5ドアでも全長4m未満なので短いけど)。最小回転半径だって3ドアのほうが小さいから取り回しもしやすい。林道のような狭いところとか、道なき道に入っていくときなんか「5ドアでは入れないけど3ドアならOK」なんてシチュエーションもあるはず。
そのうえ、ジムニーにとって外せない悪路走破性だって3ドアが優位。アプローチアングルやデパーチャーアングルは5ドアでも3ドアでもたぶん同じだけど、山を乗り越えるときに大切なランプブレークオーバーアングルはホイールベースが短いぶんだけ3ドアが確実に有利だ。ほら、やっぱり3ドアのほうが性能的にジムニーらしいじゃないですか! オフローダーとして考えたら3ドアなんですってば!
というわけで、5ドアが姿を見せた今だからこそ言っておきたいのは「やっぱりジムニーを極めるならどう考えたって3ドアに限る」ってことですよ。
ボクが買うとしたらどうするか?
それはもちろん、5ドアに決まってるでしょ。やっぱり便利だし、ボクのカーライフではオフロードを極める必要なんてないので……あれ?
(文=工藤貴宏/写真=スズキ/編集=藤沢 勝)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。