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BYD ATTO 3(FWD)/プジョー・リフター ロングGT(FWD/8AT)/マセラティ・レヴァンテGT(4WD/8AT)/アウディQ4 40 e-tron Sライン(RWD)

小さくて大きな違い 2023.03.09 JAIA輸入車試乗会2023 藤沢 勝 旬の輸入車にまとめて乗れるJAIA輸入車試乗会で、webCG藤沢は「BYD ATTO 3」「マセラティ・レヴァンテGT」「プジョー・リフター ロング」「アウディQ4 e-tron」をドライブ。脈絡のない人生を歩んできた男にふさわしい、脈絡のないチョイスである。

極めて高度なフツー
BYD ATTO 3

落語にはマクラが、漫才にはツカミがあるものだが、このほど日本で乗用車事業を本格展開したBYDには、そういう姿勢がなかったように思う。というのも、第1弾モデルとして上陸したATTO 3があまりにもフツーのクルマだったからだ。

ボディーサイズが全長×全幅×全高=4455×1875×1615mmというミドルサイズのSUVであり、日本ではまさに売れ筋のど真ん中。まずはBYDここにあり! をアピールするための見せ球的なスポーツカーなどから導入するのが賢いやり方ではないかと思うが、これがBYDの商品に対する自信の表れということだろう。カッコいいハイエンドセダン「SEAL」は遅れて2023年の下半期にやってくる。

ATTO 3は最高出力204PS、最大トルク310N・mの駆動用モーターをフロントに搭載する。アクセルを踏み込んでもこれみよがしなダッシュはせず、加速はあくまで漸進的。足まわりは少々ソフトだが、頼りないような感じは皆無だ。ブレーキの感触もフツーで、つまりATTO 3の乗り味はすべてがフツーかつ自然。個性がないといえばそのとおりだが、普段使いのクルマとして不満を抱くようなところはひとつもない。

スポーツジムをイメージしたという内装や竜のうろこがモチーフだというリアピラーなど、仕立ては凝っている。特に内装は明るいカラーチョイスが特徴的で、新しいものに乗っている感が強く感じられる。

ひとつ、既存の自動車と違うところがあるとすれば、ダッシュ中央にレイアウトされた12.8インチのタッチスクリーンだ。サイズだけならもっと大きい画面のクルマもあるし、ダッシュボード全体を画面で覆ったようなクルマもある。BYDの場合はエンジン=CPUが違う。正式発売に合わせてゼンリン製のナビゲーションも内蔵したというこのシステムは、とにかく反応が素早い。「Spotify」などのアプリは起動も選曲も待ち時間がない。車載用としては体験したことがないほどのレスポンスであり、「iPad」や「iPhone」と同じような感覚で操作できる。最初に所有した携帯電話がスマートフォンというような世代にとってはこちらのほうがフツーだろう。

このタッチスクリーンをはじめ、アダプティブクルーズコントロールなどの運転支援システムや人工皮革のシート表皮、シートの電動調整機構、パノラマガラスルーフ、電動テールゲート、ドライブレコーダーなどが全部標準装備でありながら、価格は440万円ぽっきり。初上陸にあたっての相当な戦略価格かと思いきや「きちんと利益が出る設定です」とのこと。BYDにとってのフツーがスタンダードになると困るメーカーが多いことだろう。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4455×1875×1615mm/ホイールベース:2720mm/車重:1750kg/駆動方式:FWD/モーター:交流同期電動機(最高出力:204PS、最大トルク:310N・m)/一充電走行距離:485km(WLTCモード)/交流電力量消費率:144Wh/km(WLTCモード)/価格:440万円

 
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音を忘れたカナリアは
マセラティ・レヴァンテGT

このページ内にグレーのレヴァンテGTが走っている写真があるが、どのような効果音をつけるだろうか。おそらく多くの人は「クオオオオオン」だと思うが、残念ながらそれは間違っており、「ブロロロロ」が正しい。レヴァンテGTの積む2リッター4気筒には音の演出がない。

このエンジンはマセラティが大きな声に屈してダウンサイジングを図ったのではなく、「俺たちが頑張れば2リッターでもこんなに楽しくできるんだぜ」という意思表示のように思う。それくらいよくできている。

48Vの電気システムが付いているが、駆動力のアシストというよりも、そのエネルギーのほとんどは「eBooster」と呼ばれる電動コンプレッサーで消費される。巡行時にアクセルを踏み増すと、まずはeBoosterが立ち上がり(専用のインジケーターがある)、その後にタコメーターの針が上がっていく。ノーマルの「GT」モードだとエンジンが1200rpmくらいのところからタコメーターが上がり始めるが、「スポーツ」モードの場合はそれが2000rpmになる。450N・mの最大トルクを2000-4000rpmで発生するエンジンなので、まるで自然吸気のような感覚を味わえる。

全長5020mm、全幅1985mmという割には室内はタイトで、ぶかぶかの背広は着ないというイタリア人ならではのこだわりを感じる。メーターやインフォテインメントシステムは最新の「グレカーレ」などと比べるとやや古くさいが、それが不便につながっているわけではない。大きなシフトパドルは操作しよう、手動変速で積極的にドライブしようという気持ちを喚起する。

レヴァンテGTは、音というマセラティがこだわり続けてきた演出を捨て、より本質的なところで勝負しようという意気込みを感じるクルマだ。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5020×1985×1680mm/ホイールベース:3005mm/車重:2280kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー(最高出力:330PS/5750rpm、最大トルク:450N・m/2250rpm)/モーター:交流同期電動機(最高出力:13.6PS/3000rpm、最大トルク:54N・m)/トランスミッション:8段AT/燃費:--km/リッター/価格:1318万円

 
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違いの分かる人に
プジョー・リフター ロング

名は体を表すという言葉がこれほどぴったりのクルマもないだろう。プジョーのリフター ロングはまさに「リフター」のロングバージョンであり、つまりは長いリフターである。

ボディーの全長は355mm長い4760mmに、ホイールベースは190mm長い2975mmにそれぞれ拡大。アンバランスな感じは皆無で、むしろこのロングボディーのほうがしっくりくるから不思議だ。ちょっと昔風のフロントマスクとも相まって端正な雰囲気を生み出している。

長くなったボディーの内部には3列目シートが搭載された。座面も背もたれも大きくて立派で、身長178cmの私が座ってもまるで窮屈ではない。1列目より2列目、2列目よりも3列目と、着座位置がどんどん高くなっていくので見晴らしもいい。3列目を使わないときにどのように収納するかという点では国産ミニバンにかなわないが、片づけることを考慮しなければこんなにも素晴らしい空間になるとは思わなかった。とはいえシート自体を取り外すことはできるので、家が広くて腕力に自信があるという人は自在なシートアレンジが可能だ。

1.5リッター4気筒のディーゼルターボエンジンは最高出力130PS/3750rpmと最大トルク300N・m/1750rpmを発生。スペック自体は標準ボディーに搭載されるユニットと同じだが、かつて乗ったときよりもノイズが抑えられているように感じられた。人に運転してもらい、自分だけが3列目に座るという変わった2人乗車を試してみたところ、普通の声量で会話ができることに驚いた。

標準ボディーと同様に姉妹車の「シトロエン・ベルランゴ ロング」のほうが圧倒的に人気だと思われるが、リフター ロングにはシトロエンにはない「グリップコントロール」(ブレーキをつまんで悪路走破性を高める機能)が付いているし、プジョーならではの「i-Cockpit」も見逃せない。「なんでプジョーにしたの?」という会話のとっかかりが生まれる可能性もあるし、「違いの分かる人」にお薦めだ。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1850×1900mm/ホイールベース:2975mm/車重:1700kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ(最高出力:130PS/3750rpm、最大トルク:300N・m/1750rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:18.1km/リッター(WLTCモード)/価格:455万円

 
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違いの分かる人に(パートII)
アウディQ4 40 e-tron Sライン

いろいろな巡り合わせで日本上陸直後のフォルクスワーゲン(VW)の「ID.4」で1000kmくらいドライブしたことがあり、仕上がりのよさに驚いた。それと同時に、これをさらに上質に仕立ててアウディ版に仕立てるのは大変だろうなという余計な感想を抱いた。それから約2カ月を経て感動の初対面である。

ボディーのスリーサイズは事実上同じで、ID.4はつるりとしたボディーパネルとアニメのキャラクターのようなフロントマスクで「ゴルフ」などとの違いを明確にしているのに対し、Q4 e-tronは八角形のフロントグリルなどアウディのSUVではおなじみの意匠を踏襲。既存のカスタマーが安心して乗り換えられるという点ではアウディに分がありそうだ。細身でつり目のヘッドランプはグラフィックを4種類から選べるところが新しい。

ドアを開けてみると上下のスポークがフラットになったステアリングホイールが目に入る。なるほど、ここでも八角形が繰り返されている。ID.4と共通のパーツはほとんどなく、液晶メーターやエアコンの操作パネル、スタート/ストップスイッチなどは既存のアウディ車でおなじみのユニットばかりなので、戸惑うことなく使える。ID.4はシフトセレクターがメーターパネルの右に生えているのに対し、Q4 e-tronはフローティング式のセンターコンソールに位置している。回生ブレーキの強弱を変えるステアリングパドルはQ4 e-tronのみに備わっているほか、インフォテインメントシステムにマップデータが備わっているのはQ4 e-tronだけだ。

運転感覚はID.4とまるで変わらない。なにしろどちらも車重が2.1tもある。それに対してモーターの最高出力が204PS、最大トルクが310N・mなので、ダッシュ力はソコソコとしか言いようがなく、どちらかといえばゆったりとしたドライブに向いている。高速道路への合流などでは瞬間的に床までアクセルを踏めるほどだ。キックダウンスイッチを踏むこともできるが、もちろん何も起こらない。ペダルユニットをエンジン車と共用しているために残っているらしい。

どちらも間違いのない選択肢だと思うが、あえて白黒つけるとしたらどちらか。……私はID.4を選択したい。それは前席から後席の頭上までを一枚ガラスで覆うパノラマガラスルーフの素晴らしさに心を動かされたからである。Q4 e-tronのガラスルーフはBピラーの後方くらいまでしかカバーしないが、その代わり開閉ができる。クルマの本筋ではないところで結論づけてしまって恐縮だが、それくらい本筋の部分はどちらもよくできている。

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4590×1865×1630mm/ホイールベース:2765mm/車重:2100kg/駆動方式:RWD/モーター:交流同期電動機(最高出力:204PS、最大トルク:310N・m)/一充電走行距離:576km(WLTCモード)/交流電力量消費率:150Wh/km(WLTCモード)/価格:710万円

(文=webCG藤沢/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=藤沢 勝)

 
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藤沢 勝

藤沢 勝

webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。

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