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第740回:10年でどれだけ進化した? 新旧「三菱アウトランダーPHEV」を乗り比べる

2023.03.10 エディターから一言 藤沢 勝

世界初のSUVタイプのPHEV

大河ドラマの舞台として盛り上がりをみせている愛知県岡崎市。わが家では『ポツンと一軒家』を見ていることが多いため今期の大河は一度も見ていないが、うわさによるとその主人公は、この先天下分け目のバトルを制すなどして260年も続く政権の礎を築くようだ。

市内にはその主人公が生まれたという岡崎城をはじめ、2024年1月8日までの期間限定でオープンした大河ドラマ館や数々の史跡があるが、自動車ファンとしては三菱自動車の岡崎製作所のほうがなじみ深いだろう。「デリカD:5」「アウトランダー」「エクリプス クロス」「RVR」などの生産拠点だ。

こちらで「アウトランダーPHEV」のデビュー10周年を記念した「PHEVオーナーズミーティング」が開催された同じ日に、新旧のアウトランダーPHEVを乗り比べることができた。現行型のデビューが1年半近く前なのでいまさら感はあるのだが、10年の区切りということでその印象をお伝えする。

世界初のSUVタイプのプラグインハイブリッド車としてアウトランダーPHEVが登場したのは2013年1月のこと。当初は容量12.0kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、当時の基準だったJC08モードによるEV走行換算距離は60.2km。駆動用モーターは前後とも最高出力82PSというスペックだった。その後に改良を積み重ね、最終的にはバッテリー容量が13.8kWhに、モーター出力は前が82PS、後ろが95PSに強化。主に発電を担当するエンジンは2リッターから2.4リッターに変更された。

三菱自動車の岡崎製作所で生産される「アウトランダー」。
三菱自動車の岡崎製作所で生産される「アウトランダー」。拡大
岡崎製作所のラインの様子。新型「アウトランダー」はほかのモデルとは違う「CMF-C/D」プラットフォームを使っているが、同じラインで生産される。
岡崎製作所のラインの様子。新型「アウトランダー」はほかのモデルとは違う「CMF-C/D」プラットフォームを使っているが、同じラインで生産される。拡大
筆者が試乗した旧型「アウトランダーPHEV」は2017年2月に改良を受けて登場したモデルだ。
筆者が試乗した旧型「アウトランダーPHEV」は2017年2月に改良を受けて登場したモデルだ。拡大
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すべてで上回る新型

2021年12月発売の新型は20.0kWhの駆動用バッテリーを搭載し、モーター出力は前が116PS、後ろが136PSに。エンジンは同じ2.4リッターながら128PSから133PSになった。パワフルになっただけでなく、前後モーターの駆動力配分の最適化やブレーキによるトルクベクタリングを組み合わせた4輪制御システム「S-AWC」が進化し、思いのままのハンドリングが可能になっている。

まずは旧型をドライブ。約8年にわたって販売されていただけあって細かな世代の違いがあるが、内外装のデザインから判断すると2017年2月発売バージョンのようだ。まだモーター出力は前後とも82PSのままで、エンジンは2リッター。最終型で採用された構造用接着剤によるボディー剛性の強化も実施されていない(最上級グレード「Sエディション」では実施)。

いざコースインしてもそれほど古さを感じさせず、十分に上質なドライブが味わえる。ツインモーターによる加速は鋭く、ステアリングの反応も機敏だ。アクセルを深く踏み込むとエンジンがうなりを上げるものの、車内で会話が不可能というレベルではないため、特に気になるほどでもない。ボディーは最新の基準からすると緩く感じられるかもしれないが、このパワートレインにはマッチしていてあわてず騒がずという気持ちにさせる。

旧型あっての新型のため、当たり前ながら最新モデルはすべての要素でこれを上回っている。特に停止から120km/h付近までの加速力は新型が圧倒的で、こちらを味わってしまうと旧型では高速道路の合流などで注意せねばという気持ちになる。ボディーは段差を越えてもみしりともせず、ブレーキによる制御を前後に拡大(旧型は前のみ)したというS-AWCのおかげもあって、連続するS字カーブを駆け抜けても2.1tの車重を意識させられることはない。駆動用バッテリーが大容量のためエンジンはめったにかからず、かかっても低いうなりがかすかに聞こえる程度だ。

高速周回路を行く新型「アウトランダー」。「パワー」「ターマック」など、パワフルに走るためのドライブモードも多彩。
高速周回路を行く新型「アウトランダー」。「パワー」「ターマック」など、パワフルに走るためのドライブモードも多彩。拡大
新型「アウトランダー」は容量20kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。かなりの高速域または高負荷域までエンジンはかからない。
新型「アウトランダー」は容量20kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。かなりの高速域または高負荷域までエンジンはかからない。拡大
最新の「S-AWC」ではブレーキによるベクタリング制御をリアにも拡大。右の前と左の後ろなど、斜めに組み合わせて弱制動するのがよく曲がる秘密だという。
最新の「S-AWC」ではブレーキによるベクタリング制御をリアにも拡大。右の前と左の後ろなど、斜めに組み合わせて弱制動するのがよく曲がる秘密だという。拡大

改築と新築のちがい

旧型にひとつ問題があるとすればユーザーインターフェイスだろう。2013年1月から幾多の改良を受けて生き永らえてきたため、室内のあちこちに増改築のアトが散見される。例えばセンターコンソールにはプラグインハイブリッドシステムの「セーブ」「チャージ」モードのスイッチや4WDモードの切り替えスイッチ、「EV」モードのスイッチなどが並んでいるが、「ECO」モードのスイッチはなぜかダッシュボードの中央にハザードスイッチと並んでいる。ステアリングにはホーンボタンを囲むようにびっしりとスイッチが並び、一部は持ち替えなしには押せなくなっている。ステアリングといえば、走行9万kmほどの個体ながらリムのレザーがテカテカになってしまっていることにも衝撃を受けた。

内装のクオリティーを新型と直接比較してしまうのはフェアでないかもしれない。旧型がデビューした当時は2代目「ディグニティ」(「日産シーマ」のOEM)が存在したが、いまやアウトランダーは三菱自動車のフラッグシップだ。三菱の役員車をも担う重要なモデルなのである。新型はそうした要請を満たすだけの質感があり、デザインもすっきりと整っている。センターコンソールのパネルは本物のアルミだ。カジュアル部門を賄ってくれる「エクリプス クロスPHEV」の存在も大きいはずだ。

先代のデビュー当初は「プリウスPHV」くらいしか競合がなかったPHEVの市場は、いまや多くの輸入車も交えた激戦区である。そのなかにあってアウトランダーとエクリプス クロスを合わせた三菱の国内販売のシェアは、実に59%(2022年通年)を保っているというから驚く。アウトランダーに注目してみれば、パワートレインやシャシー、内装が圧倒的な進化を遂げながら、先代モデルとそれほど変わらぬ価格帯で手に入ることに注目すべきだろう(もちろん高くはなった)。10年にして徳川幕府もびっくりの体制を築き上げた三菱自動車である。

(文=藤沢 勝/写真=webCG、三菱自動車/編集=藤沢 勝)

旧型「アウトランダー」のインテリア。広々として居心地はいいが、少し雑然としている感が否めない。
旧型「アウトランダー」のインテリア。広々として居心地はいいが、少し雑然としている感が否めない。拡大
センターコンソールに寄ってみる。走りに関するスイッチ類のほとんどが集約されているのに「ECO」スイッチははるか上方のハザードの隣。スペースはたくさんあるのだが……。
センターコンソールに寄ってみる。走りに関するスイッチ類のほとんどが集約されているのに「ECO」スイッチははるか上方のハザードの隣。スペースはたくさんあるのだが……。拡大
一気に現代的になった新型「アウトランダー」のインテリア。スイッチ類も分かりやすくまとめられている。
一気に現代的になった新型「アウトランダー」のインテリア。スイッチ類も分かりやすくまとめられている。拡大
藤沢 勝

藤沢 勝

webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。

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